「イメージしながら暗記して→言葉で書き出す」“使える記憶” をどんどん増やす記憶術をやってみた

「イメージ入力」と「言語アウトプット」の記憶トレーニング

勉強したことをなかなか覚えられないのは、左脳と右脳をバランスよく使っていないせいかもしれません。左右の脳をしっかりと活かす、「イメージ入力」と「言語アウトプット」の記憶術を紹介しましょう。

イメージ記憶は楽ちん?

子どもの脳の発達について東北大学と共同研究を行なう、株式会社コペル 代表取締役社長の大坪信之氏は、テキスト(文章)よりもイメージ(画像)の情報のほうが、ずっと楽に、大量に覚えられると説明しています。

たとえば<図1>の、「文字」だけで列記したスケジュール(向かって左)と、その隣の「カレンダー」に書き込んだ内容は同じですが、後者のカレンダーに書かれたスケジュールのほうが、イメージとして頭に残りやすいのではないでしょうか。

日付とスケジュールの羅列と、カレンダー形式の図

米ユタ大学のジェフリー・アンダーソン博士らによれば、脳の機能はたしかに左右で分かれており、言語はたいてい左脳(※1)で処理され、視空間処理(目で見たものの情報処理)は右脳で行なわれるとのこと。そのため左脳は “言語の脳”、右脳は “イメージ脳” とも呼ばれます。

大坪氏によると、イメージ記憶を得意とする右脳は、左脳の何倍もの情報処理能力をもっているのだとか。だから記憶力のいい人は、右脳を使って文字や言葉を瞬間的にイメージ変換して理解するそうです。

(※1:平山恵造氏らの「脳卒中の神経心理学」(2013年・医学書院)によれば、特に左利きの人に、“言語の脳” が左脳ではなく右脳の人、もしくは左右ともに “言語の脳” である人が少数存在する。しかし、左脳が “言語の脳” である人が圧倒的に多いため、左脳は “言語の脳”、右脳は “イメージ脳” と説明されることが多い。本文はそれに準ずる

右脳も左脳いずれも大切

とはいえ、右脳だけをたくさん使えばいいわけではありません。前出の大坪氏によれば、私たちが何かを見聞きして得た情報は、まず「“イメージ脳” である右脳に入り⇒それから “言語の脳” である左脳が情報それぞれにラベルをつけて整理・整頓を行ない、脳の引き出しにしまっておく」そうです。

つまり、より完璧な記憶とは、「右脳のイメージ力」と「左脳の言語力・論理的作業力」をバランスよく働かせることなのだそう。では、どうしたら右脳と左脳をバランスよく働かせられるのでしょう?

後ろ向きに座る少年の脳、右脳と左脳の概念

「イメージ入力」と「言語アウトプット」の記憶術

一般社団法人瞬読協会 代表理事の山中恵美子氏によれば、「右脳」でイメージしながら覚えたことを「左脳」で言語アウトプット――いわゆる書き出すことで、両方の脳がバランスよく働くそうです。

これは、インプットされた記憶を「使える記憶」にするための作業なのだとか。書くアウトプットまで行なってこそ、知識が深く定着するとのこと。手順は以下のとおりです。

  1. 瞬読で本を1冊読む
  2. 直後に30秒~1分間で思い出せるだけの内容を書き出す

1ステップめの「瞬読」とは、通常の何倍ものスピードで速読することです。

何よりも「書くこと」が大事なので、2ステップめでは箇条書きの羅列でも、印象に残った単語をいくつか書くだけでも、表紙や目次について書くだけでもいいとのこと。トレーニングを続けることで、思い出す量(書き出す量)は徐々に増えていくそうです。そうやって書き出せたものが「使える記憶」なのだとか。

筆者は瞬読の経験がないので自信はありませんが、「文章をモチーフに描いた『絵』を、パラパラとめくって閉じ、覚えていることを書くゲーム」と気楽に考え、挑戦してみることにします。

読んだ本の感想を書き出す笑顔の学生、ビジネスパーソン

「イメージ暗記」と「言語アウトプット」をやってみた

今回筆者が選んだ本は、左巻健男氏の著書『絶対に面白い化学入門 世界史は化学でできている』(ダイヤモンド社)です。

左巻健男著(2021),『絶対に面白い化学入門 世界史は化学でできている』,ダイヤモンド社.

山中氏によれば、瞬読をマスターする流れは、あとに説明する4つの段階を踏んでいくことなのだそう。この4段階の後半(STEP3と4)が、まさに先述の「使える記憶」をつくり出す作業であり、右脳と左脳をバランスよく働かせる「イメージ入力」と「言語アウトプット」の記憶術です。

順番に説明していきましょう。

STEP1. 変換力のトレーンング

変換力のトレーニングとは、バラバラになった文字を、既存の言葉に変換するトレーニングです。人間の脳は無秩序な状態を嫌うので、バラバラになった文字を見ると、本能的に整った状態にしようとするのだとか。

バラバラになった文字を、既存の言葉に変換するトレーニング

勉強仲間と協力してバラバラ文字を書き合い、一緒にトレーニングするといいかもしれません。

STEP2. イメージ力のトレーンング

次は、文字をイメージ変換するトレーニングです。これを繰り返すと右脳が刺激されるのだそう。たとえば下の例のように、向かって左にある文章を⇒ビジュアル(向かって右のイラスト)として連想します。

文字をイメージ変換(ビジュアルとして連想)するトレーニング例

すべての言葉を丁寧に細かく読み取る必要はなく、重要なキーワードだけを読み取ってイメージ化すればいいとのこと。上の例で言えば、「青緑」「幻想的な夜空」「黄色に輝く星」「ハシゴ」「手を伸ばすビジネスパーソン」といったところです。

小説などを楽しみながら、トレーニングしてみてはいかがでしょう。

STEP3. 右脳で本を「イメージ入力」

1と2のステップを終えたら、今度は本番の「イメージ入力=右脳読み(瞬読で本を1冊読む)」開始です。山中氏によれば、本の右脳読みとは「多くの文字をいっぺんに見る」ことなのだとか。

瞬読の経験がない筆者は、先述のとおり文章ではなく「絵」と考えて、ページをどんどんめくっていきました。最初は大変でも徐々に慣れてくるとのことです。

STEP4. 左脳で「言語アウトプット」

最後は、右脳でインプットした情報を、左脳を使って紙に書き出す「言語アウトプット」です。いくつかの単語を書き留めるだけでも十分とのこと。こちらも回数を重ねるうちに、書き出す文字数が増えてくるそうです。

ちなみに、手書きである理由は、パソコンなどに打ち込むよりも脳が刺激され、活発に働くから。下の画像は、実際に筆者が1回めの「イメージ入力」のあとに書き出した「言語アウトプット」です。

筆者が1回目の瞬読と、1回目の言語アウトプットを実際に行ったもの
「こ、これだけか……」と落胆しつつも、「少しは思い出せるんだなぁ」とも感じました。むしろ遅読の自分が、通常では考えられないほどの速さでページをめくっていたので。

そして、下の画像の右側のページが、2回めの「イメージ入力」のあとの「言語アウトプット」です。

筆者が実際に行った、1回目と2回目の瞬読と言語アウトプット

書き出す量が少し増えたと同時に、STEP1と2で「変換力のトレーニング」や「イメージ力のトレーニング」を行なった意味もわかりました。本をパラパラとめくるうち目に入った言葉が組み合わさり、想像力が働いて記憶の定着に貢献したからです。

たとえば「ダイナマイト」「戦争」「ノーベル賞」「遺言」「人類に貢献」というキーワードはスウェーデンの化学者であるアルフレッド・ノーベル氏の苦悩を想像させ、印象を残しました。何かを覚えるというより、脳を動かし遊んでいる感覚です。思いのほか楽しいので続けてみようと思います。

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「イメージ入力」と「言語アウトプット」の記憶術を紹介しました。気軽にお試しくださいね。

(参考)
公益社団法人 鳥取県医師会|脳の話
株式会社 瞬読|【右脳速読法】瞬読とは
こころの科学(公立はこだて未来大学)|身体的な発達心理学
ビジネス+IT|情報爆発の時代に「瞬読」スキルは有用すぎる 1ページ3秒以下で読む方法とは?
ダイヤモンド・オンライン|右脳でイメージして覚えたことを左脳で言語化する勉強法
幼児教室コペル|61 右脳のイメージ記憶を活用した記憶力の向上法とは
WIRED.jp|「右脳派」「左脳派」は都市伝説だった!人 に“利き脳”はない:研究結果
PLOS ONE|An Evaluation of the Left-Brain vs. Right-Brain Hypothesis with Resting State Functional Connectivity Magnetic Resonance Imaging

【ライタープロフィール】
STUDY HACKER 編集部
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