「内向的な性格だから、自分は成功から縁遠い……」
そう思っていませんか?
じつは、内向型でも世界的成功を収めている人は存在します。マイクロソフト共同創業者のビル・ゲイツ氏、世界的投資家のウォーレン・バフェット氏、Meta Platforms, Inc会長兼CEOのマーク・ザッカーバーグ氏――。彼らが示してきたように、自己主張は控えめな人でも仕事で活躍できるのです。
ただし、内向的な特性から生じる “失敗” を避けるコツは、ぜひとも知っておいたほうがよいでしょう。
今回の記事では、内向的な人が成功に近づくために “やってはいけないこと” を3つご紹介。ご自身の成長のヒントにしていただけたら幸いです。
【ライタープロフィール】
青野透子
大学では経営学を専攻。科学的に効果のあるメンタル管理方法への理解が深く、マインドセット・対人関係についての執筆が得意。科学(脳科学・心理学)に基づいた勉強法への関心も強く、執筆を通して得たノウハウをもとに、勉強の習慣化に成功している。
TIME|The Surprising Benefits of Being an Introvert
Psychology Today|Why You Dislike Multi-Tasking
リクナビNEXTジャーナル|生産性10倍に?!「シングルタスク」に切り替える方法
Truity|The Science That Explains Why Introverts Need Their Downtime
NG1「話す前に準備をしない」
ミーティングでは活発な意見交換をするのが望ましい――こう考える人は多いでしょう。
ですが、内向的な人にとって、スピーディな意見交換を求められるミーティングは居心地が悪いもの。というのも、内向的な人は思慮深さゆえ、早く結論を出すことに慣れていないからです。だからこそ、内向的な人は、ミーティングに参加するための “準備” を怠ってはいけません。
内向的な人は発言に時間がかかることについて、国際コーチング連盟ICF認定のプロフェッショナル・サーティファイド・コーチで、『The Introvert Entrepreneur』(著書名和訳:内向型起業家)著者のベス・ビューロー氏が、次のように解説しています。同氏によれば、内向的な人は「話すことより聞くことを好ましく感じる」のだそう。ゆえに、彼らが自ら意見を述べるときは「より慎重に言葉を選ぶ」のだとか。
“We only speak when we have something to say, so there is a higher chance that we will have an impact with our words,”
私たち(内向的な人)が話すのは、何か言いたいことがあるときのみ。だから、私たちの言葉は影響力がある可能性が高いのです
(上記参考および枠内引用元:TIME|The Surprising Benefits of Being an Introvert ※和訳は筆者が補った)
つまり、内向的な人は発言する前に深く考えているので、少ない発言でも十分に影響を与えられるのです。
そうはいっても、「この件についてどう考える?」と意見を求められたときに即座に反応できないと、どうしても自己嫌悪を抱いてしまうもの。
ただ、その対処法がないわけではありません。前出のビューロー氏は、「ミーティングに臨むときは話す準備をするべき」と述べます。(参考:同上)
たとえば、次のような準備ができるのではないでしょうか。
- 資料を入念に確認する
- 議題に対する疑問点や質問をまとめる
- 根拠のある意見を出せるよう、事前に調査する
多くの意見をスピーディに出すことにこだわらなくてもいいのです。話す準備をすれば、少ない発言でも影響を与える力が内向的な人にはあるのですから。
NG2「マルチタスクで取り組む」
多くのタスクを抱えると、圧倒されてしまう。そんな内向的な人は多いかもしれません。でも、そのときに焦って、マルチタスクで仕事をこなそうとするのは逆効果です。
コミュニケーション講師で、全米ベストセラー『内向型人間の時代 社会を変える静かな人の力』(講談社)著者のスーザン・ケイン氏は、「内向的な人はマルチタスクが得意でない」と語ります。
We're not as good at extroverts at multi-tasking, research suggests;(中略)On the other hand, introverts tend to be better than extroverts at focusing on single tasks.
研究によれば、私たち(内向的な人)は外向的な人ほどマルチタスクが得意ではありません。(中略)一方で、内向的な人は外向的な人よりシングルタスクを得意とする傾向があります。
(上記参考および枠内引用元:Psychology Today|Why You Dislike Multi-Tasking ※和訳は筆者が補った)
ケイン氏によれば、「内向的な人の脳は複数の情報を効率的に処理できない仕組み」になっているとのこと。内向的な人が、多くの人が集まる場で疲れやすいのもこのため。言葉・表情・声のトーン・ボディランゲージなど多くの情報を効率よく処理できないためだと考えられます。(参考:同上)
仕事に置き換えて考えてみると、パソコンで入力作業をしながら電話対応をし、デスクの上に資料を複数広げて同時にチェックしようとする……などのマルチタスクは、脳を混乱させるもと。このように複数のタスクを抱えている場合は、タスクを整理してひとつずつ処理するほうが賢明と言えるのです。
では、山ほどあるタスクを、どうすればシングルタスクとして処理できるのでしょうか。
100を超える企業のチームマネジメントを指導した経験をもつデボラ・ザック氏が、著書『SINGLE TASK 一点集中術』(ダイヤモンド社)のなかで、シングルタスクにするための方法を紹介しています。そのひとつが「類似タスクごとにグループ分け」すること。(カギカッコ内引用元:リクナビNEXTジャーナル|生産性10倍に?!「シングルタスク」に切り替える方法)
イメージとして、次の図をご覧ください。
左のようにリストアップしたタスクを、似たタスクでまとめて右のようにグループ分けしたら、ひとグループのタスクに集中して取り組むように意識するのです。
たくさんのタスクに圧倒されてしまう前に、タスクのグループ分けをしてマルチタスク状態を解消しましょう。シングルタスクに長けた内向的なあなたは、きっと上手に仕事を処理していけるはずです。
NG3「ひとりの時間を重視しない」
内向的なあなたは、きっと 外部からの情報に敏感なのではないでしょうか。オフィスで仕事をしているときに、同僚の言葉や行動が気になる――といったようなことです。そうした敏感さは内向的な人の長所のひとつですが、裏を返せば、多くの情報に触れ続けると消耗しやすいという弱点でもあります。ならば、刺激を少なくすることを忘れてはなりません。
臨床心理学者のスティーブン・メレンディ氏が監修した記事によれば、「内向的な人の脳は、快楽や報酬に関与する神経伝達物質のドーパミンに反応しやすい」ことが研究で明らかにされているのだとか。つまり、少しの刺激でも敏感に反応しやすく、多くの刺激で疲弊しやすい傾向があるのです。(参考:Truity|The Science That Explains Why Introverts Need Their Downtime)
たとえば、大事な取引先が関係する仕事に騒がしいオフィスで取り組むことは、非常に大きなストレスになりかねません。トラブルが発生でもすれば、急な予定変更や顧客の対応に追われることになり、ますます刺激が増えます。こうした多くの刺激に長時間さらされることは、内向的な人にとって精神的に困難なのです。
では、内向的な人はどのようにしたら仕事でよいパフォーマンスを発揮できるのでしょう?
メレンディ氏は、休息する時間「Downtime」を一日の終わりに設けることを推奨しています。休息と聞けば、ベッドに座って何もせずぼーっとすることを筆者は想像しますが、メレンディ氏いわく、「完全に空白の時間にしなくてもよい」とのこと。内向的な人にとってみれば、クリエイティブな過ごし方でも休息の時間になるそうです。(上記参考:同上)
たとえば、次のような過ごし方が考えられます。
- 自由に絵を描く
- ハンドメイドの作品に没頭する
- 新しいプロジェクトに関するアイデアメモを書く
刺激を避けてひとりで過ごす静かな時間は、内向的な人にとって大切な充電タイム。その余白からは創造性も育まれるのです。ぜひ、ひとりの時間を設けて休息してみてくださいね。
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「自分は内向的かも」と心当たりのある人は、今回の記事を参考にして働きやすい行動を実践してみてくださいね。少しの変化があなたの将来の活躍につながるはずです。