企業研修の質が上がる! 効果的な研修評価の方法「カークパトリックモデル」とは?

業績を上げようと尽力しているビジネスパーソン

企業研修を導入したはいいけれど、社員にとって本当にいい研修だったのだろうか——こんなふうに頭を悩ませている企業担当者の方は多いのではないでしょうか。自らに受講経験のない研修の場合は、特に悩みがちかもしれません。

本記事では、「企業研修の評価」を中心に、研修の目的、評価の役割、そして研修効果を測定するための枠組みである「カークパトリックモデル」について解説します。

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(参考)

中原淳・関根雅泰・島村公俊・林博之(2022),『研修開発入門 「研修評価」の教科書 「数字」と「物語」で経営・現場を変える』, ダイヤモンド社.
Kirkpatrick Partners|The Kirkpatrick Model

そもそも企業研修の目的とは?

企業が社員に研修を提供する理由はなんでしょうか? 立教大学経営学部の中原淳教授らによる著書で端的に表現されています。

研修とは、「仕事現場以外の教育環境で、組織の目標や戦略達成等のためにメンバーのスキルや知識、信念などに働きかけ、学んだことを実践できるよう転移させることで、経営・現場にインパクトをもたらす施策」と定義しています。

(引用元:中原淳・関根雅泰・島村公俊・林博之(2022),『研修開発入門 「研修評価」の教科書 「数字」と「物語」で経営・現場を変える』, ダイヤモンド社.)

この定義を読むことで、スッと腹落ちされた方も多いのではないでしょうか。

特に注目したいのが「経営・現場にインパクトをもたらす」という部分です。

たとえば、もし研修を実施しなかった場合、社員は新しいスキルや知識を得られず、結果的に業務の効率が低下し、企業全体の生産性が落ち込む可能性もありますよね。社員の能力が現代の市場要求に追いつかなくなれば、企業の競争力が弱まることにもつながりかねません。

同書は「研修評価」についても同様に「経営や現場にインパクトをもたらす」ものであるべきと主張しています。次の項では、その「研修評価」について詳しく見ていきましょう。

成績を伸ばしている会社員のイメージ

研修評価の3つの役割

同書によると、研修評価には「形成的評価機能」「総括的評価機能」「リマインド機能」の3つの役割があるそう。ひとつずつ簡単にご紹介しましょう。(以下、本項中カギカッコ内引用元:同上)

  1. 「形成的評価機能」
    研修を「より良く」する機能です。「形成的評価」は「研修の良し悪しを把握し、より良いものに改善する」ために行ないます。
    たとえば、受講者からのフィードバックを収集し、特定のトピックに対する理解度が低いことが判明した場合に追加の研修を設ける——など、研修を「より良く」していく工夫は、多くの企業で行なわれていることでしょう。

  2. 「総括的評価機能」
    研修効果を「見える化」する機能です。「研修評価を通じて研修効果を「見える化」して、他者に説明可能に」します。企業研修を担当している方にとって、この説明責任の重要性は導入から研修後までずっとついてまわるものでしょう。
    たとえば、英語研修であれば、TOEICやVERSANTのスコアのビフォー・アフターを、研修を受けた社員別に整理して可視化します。
    また、研修を受けた社員に「業務にどう活かせたか?」をヒアリングし、定量的なデータとともに提示するといいでしょう。

  3. 「リマインド機能」
    「研修で学んだことが実践されるように、研修受講者に積極的に働きかけていく」機能です。仕事の現場以外で行なわれた研修の学びは、「仕事現場に持ち込み、実践する」ことが大切です。しかし、みなさんにもきっと経験があるように、毎日忙しく働いている社員からすると研修の内容は忘れがち。
    そこで大切になるのが「リマインド機能」です。「研修を終えたあと、しばらくして」から「受講生に簡易なアンケート調査」をするだけでも、その質問項目がトリガーになって研修内容の実践を促進させていきます。
    たとえば、英語研修を行なったあとであれば、「英語学習を継続しているか」「研修で習得した英語スキルを業務で実際に使えているか」をリマインドするといいでしょう。

そもそも企業研修をなぜ行なうのか、そして、研修評価の3つの機能がわかったところで、次は、研修評価の最も有名なモデルである「カークパトリックモデル」について解説します。

仕事をしている会社員

カークパトリックの「4レベル評価モデル」

カークパトリックの「4レベル評価モデル」は、アメリカの経営学者ドナルド・カークパトリック氏によって提案された、研修の効果を評価するための4段階評価法。研修の効果を以下の4つのレベルで評価します。(以下参照:Kirkpatrick Partners|The Kirkpatrick Model

  1. レベル1:反応(Reaction)
    「受講生が研修に対してどの程度好意的で、自分の仕事に関連があると感じているか」評価します。研修終了時のアンケートなどが一般的な方法です。

  2. レベル2:学習 (Learning)
    研修に参加したことによって「受講者がどれだけ知識やスキルなどを身につけたか」評価します。テストやレポートの提出、ロールプレイなどが評価の方法として用いられます。

  3. レベル3:行動 (Behavior)
    「受講生が仕事に戻ったときに、研修で学んだことがどれだけ活かされているか」評価します。これは研修後の自己評価や上司による評価などを用いて行なわれます。

  4. レベル4:結果 (Results)
    「研修によって、どの程度の成果を得られたか」評価します。通常、売上や利益、顧客満足度などの定量的な指標を用いて測定されます。

利益が上がっている様子

カークパトリックモデルで研修の質が上がる

カークパトリックモデルのメリットは、研修の効果測定を明確にし、研修内容の見直しや改善に活かすことができる点です。そのため研修評価の分野で広く用いられており、その実用性と効果の高さから多くの研修担当者に認知されています。

たとえば、4段階の評価によって「研修終了時のテストでは知識が身についていたが、実際の業務には活かされていない」といったことが判明した場合、研修内容をより実践的なものに見直すことができます。また、「特定の研修が営業成績などに直接貢献した」ことがわかれば、その研修プログラムをさらに強化し、ほかの部門に展開することもできるでしょう。

このように、カークパトリックモデルを用いることで、研修の質を向上させることができます。研修受講者の満足度の評価、知識・スキルの評価、行動変容、組織全体の評価……とフレームワークとしてわかりやすいのが特徴です。

効果的な研修によってスキルが上がった会社員

カークパトリックモデルの注意点

お気づきの方も多いかもしれませんが、レベル3(行動)やレベル4(結果)は外部環境要因やそのほかの要素が絡み合うため、研修の効果を正確に測定することが難しいと考えられています。

たとえば、研修を受けた社員の成績が上がったとしても、それが研修の効果によるものなのか、個人的な努力によるものなのかを区別するのは難しいでしょう。同様に、研修が業績に与えた影響を正確に評価するのも、影響を与える要素があまりに多いため困難です。

しかし、注意点はあるものの、カークパトリックモデルは研修評価において非常に有用なツールです。特に、社内の研修評価制度がまだ確立されていない企業は「カークパトリックモデル」を参考に評価を組み立てるといいでしょう。

すでにカークパトリックモデルを導入している企業では、研修プログラムの設計や実施の段階で上記の注意点を考慮に入れ、継続的な評価と改善を行なうことが重要です。

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この記事では、「企業研修を行なう理由」という根本的な問い(WHY)から、研修の評価機能とカークパトリックモデルという評価フレームワークについて解説しました。研修の目的を設定し、その効果を評価する際には、「経営・現場にインパクトを与える」という視点を常に念頭に置きましょう。

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