「連想」を書き連ねて記憶力アップ。勉強に最適な「フィンランド式マインドマップ」を試してみた

フィンランド風のブルー系の色合いを背景に。筆者が「アヤトゥス・カルタ」で実際に勉強したノートの見開き

学び直しの大切さはよく理解しているが、正直言って勉強は嫌いだ。そんな自分でも取り入れられそうな、いい学習法はないだろうか?

――それなら、教育先進国フィンランドの、マインドマップによく似た「アヤトゥス・カルタ」なんていかがでしょう? いかにも勉強している感じではないのに、無理なく効率的に学べるはずです。勉強が苦手な筆者の実践を交えて、詳しく説明しましょう。

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STUDY HACKER 編集部
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「アヤトゥス・カルタ」とは?

人材育成教育を行なう「NPO法人フィンランド式人材育成研究所」の説明を参考にすると、アヤトゥス・カルタ(Ajatus Kartta・思考の地図)はフィンランドの教育現場で活用されている基本ツールです(発想、分析、問題解決などにも役立つ)。

そのやり方は、以下に示すとおりマインドマップによく似ていますが――

  • 中央のテーマから始める
  • 連想されることを書き連ねる
  • 放射線状に広げていく
  • 枝をつないでいくような感じ

アヤトゥス・カルタの場合は、思いつくまま自由に書いていくマインドマップとは違い、5W1H「When(いつ)・Where(どこで)・Who(だれが)・What(なにを)・Why(なぜ)・How(どのように)」に近いかたちで書き連ねるのだとか。

たとえば、メインテーマが「社会人の勉強」だとすれば、こうなります。

「社会人の勉強」をテーマにしたフィンランド式マインドマップの「アヤトゥス・カルタ」

【図1】「フィンランド式人材育成研究所」サイト内の写真を参考に筆者が作成したアヤトゥス・カルタ。メインテーマから5W1Hで書き広げている。

(参考:npo-finlandshiki|WORKSHOP 主体性と創造性トレーニング 思考の地図

自由自在に書くのではなく、「なぜ」「どのように」などの言葉に誘導されながら書くので、この手法に慣れていない人にとってはかなり書きやすいかもしれませんね。

記憶は関連づいている

また、こうした連想を書き連ねる手法は、記憶の強化にもつながるはず。なぜならば、私たちの記憶は関連づいているからです。

カリフォルニア大学デービス校、ボストン大学、ケンブリッジ大学の研究者らが2018年に発表した研究では、人が何かを思い出そうとするとき、特定の情報だけでなく、関連づけられた情報も強化されるとわかりました。

(参考:PNAS|Neural reactivation in parietal cortex enhances memory for episodically linked information

だとすれば、そもそも関連づけで成り立つアヤトゥス・カルタで勉強すると上記のような効果がさらに広範にわたる可能性があるわけです。これは、かなり期待できそうですね。さっそくチャレンジしてみましょう!

「アヤトゥス・カルタ」で勉強してみた

今回、アヤトゥス・カルタで勉強する際に使用したノートは、中心部が真っ平らに開いて使いやすいうえ、脳の活性化までしてくれるという「脳スッキリノート(A4判・5mm方眼)」です。凹凸感があってザラついた青い紙が脳に効くそうですよ。

(脳スッキリノートについては、こちらの記事で詳しく紹介しているので、よろしければご覧ください⇒『飽きっぽい私でも集中力が続いた! “青くて○○なノート” を使ったら思わず書く手が止まらなくなった話』)

また、「アヤトゥス・カルタの拡張によるユーザ視点に基づくMVP抽出手法の提案」という論文のなかに、先の【図1】よりも初心者向きに見えるアヤトゥス・カルタを見つけました。枝をつなぐような表現ではなく、丸と線を使った表現です【図2】。実践はこちらで行なってみましょう。

アヤトゥス・カルタの簡略版? 丸と線だけで書き連ねていく。

【図2】「アヤトゥス・カルタの拡張によるユーザ視点に基づくMVP抽出手法の提案」のなかにあるアヤトゥス・カルタ例を参考に筆者が作成。

同資料のアヤトゥス・カルタには、5W1Hとは違う「それからどうなった?」などの言葉があったので、筆者も5W1Hにとらわれすぎず、自分が書き連ねやすい言葉を取り入れていくことにしました(たとえば「でも?」「どうなる?」など)。

(参考:田中貴子,斎藤忍(2022),「アヤトゥス・カルタの拡張によるユーザ視点に基づくMVP抽出手法の提案」,第29回ソフトウェア工学の基礎ワークショップ,FOSE2022.

そうして勉強したノートはこちらです。

フィンランド式マインドマップ「アヤトゥス・カルタ」で筆者が実際に勉強したもの

手順は、

  1. 専門書の見出しのなかからテーマを決める
  2. 該当箇所を読んで自分なりに解釈する
  3. 質問(それはどんなもの? どうやって? どうなる? なぜ? でも?)に答えるかたちで、自分の言葉で書き連ねていく
  4. そうして関連する情報をつなげ、放射線状に広げていく

の4ステップ。

「アヤトゥス・カルタ」で勉強したノート、違うアングル

(ノートの中身参考:塚崎公義(2015),『なんだ、そうなのか!経済入門』, 日経BPマーケティング.)

今回やってみて特に感じたのは、驚くほど自然に情報が関連づけられることでした。

経済評論家(2015年当時は久留米大学商学部教授)の塚崎公義氏が著した経済入門を参考にしながら、国際貿易について30分間6ページほど簡単に学んだだけなのに、「国際貿易」について考えると、すぐに「スケールメリット」「規模の経済」「比較劣位産業」「サイレント・マジョリティ」などといったキーワードが芋づる式に浮かんでくるようになったからです(参考:前出の塚崎氏著書)。

「アヤトゥス・カルタ」で復習すれば、さらに情報が重なるように関連づいて、何かひとつを思い出すたびに、すべての記憶が強化されるかもしれません。

ものすごく楽しく勉強できた、というわけではありませんが、効率よく覚えられたわりには、勉強するときにありがちな負担感や苦手感をあまり抱くことなく勉強できたのは確かです。次回はもっと、「つまり?」「メリット・デメリットは何?」「ほかの視点では?」などと、独自に言葉をアレンジして、連想を促進してみようかと思います。

***
フィンランドの「アヤトゥス・カルタ」で勉強してみたら、次々と情報が関連づけられ、よく覚えられた気がします。ぜひお試しあれ。

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