「実績を挙げてはいるが、チームメンバーと打ち解けるのが難しい……」
「自分のほうが専門知識はあるのに、声をかけられるのはなぜかほかの同僚……」
能力に自信はあるものの、人間関係でつまずいて悩んではいませんか? 一方、周囲を見渡せば、特別なスキルがなくとも ”人あたりのよさ” で評価を得ている人がいるのも事実。彼らと自分とではいったい何が違うのか、知りたいですよね。
今回の記事では、好かれやすい人が日頃していることを3つお伝えいたします。有能なあなたが、周囲とよりよい関係を築きながら仕事をしていくために、ぜひ参考にしてみてください。
【ライタープロフィール】
青野透子
大学では経営学を専攻。科学的に効果のあるメンタル管理方法への理解が深く、マインドセット・対人関係についての執筆が得意。科学(脳科学・心理学)に基づいた勉強法への関心も強く、執筆を通して得たノウハウをもとに、勉強の習慣化に成功している。
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1. 好かれる人は「いつも機嫌がいい」
有能だけど近寄りがたい人、仕事の能力は普通でも職場の雰囲気をよくする人――両者の違いのひとつは、普段の “機嫌のよさ” です。私たちは、いつも笑顔で挨拶をしてくれる人に自然と好感を抱くもの。それは、相手の機嫌や雰囲気が私たちの脳に影響を与えているからなのです。
というのも、脳の神経細胞「ミラーニューロン」はその働きによって「人の感情を他者に伝染させる」と、ポジティブ心理学の第一人者ショーン・エイカー博士が述べています。(カギカッコ内引用元:DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー|他人がまき散らすストレスに“感染”しない4つの方法)
機嫌よく仕事をしている人を見ると、一緒に働いているこちらまで明るい気持ちになりますよね。それは、脳の仕組み上自然なことだというわけです。
ただし、この現象は悪いほうにも働くと話すエイカー博士。
ストレスを感じている他者、特に同僚や家族を目にすると、神経系に瞬時に影響を受ける場合がある。別の研究グループによれば、被験者の26%が、ストレスを感じている人を見ただけで自身のコルチゾール(ストレスホルモン)のレベルが高まったという
(引用元:同上 ※太字は編集部が施した)
たとえば、次のような態度をとってしまうことがある人は要注意です。
- 同僚からのあいさつに、真顔で答える
- 仕事を依頼されたら、シンプルに「はい」とだけ言う
仮に自分では不機嫌なつもりはなくても、にこりともせずそっけない態度をとっていては、「もしかして、〇〇さん怒っているのかな……?」「声をかけにくい人だ」と思われかねません。相手はきっと「機嫌よく仕事をしている△△さんのほうが頼みやすそうだ」と考えるでしょう。
とはいえ、「明るい性格にならなきゃ」などと性格を変えようとするのは難しいもの。しかし、言葉なら意識的に変えられるのではないでしょうか。
ペンシルバニア大学ポジティブ心理学リサーチャーで作家のミシェル・ギラン氏も、「会話をポジティブな言葉で始める」よう推奨しています。(カギカッコ内引用元:同上)
たとえば、次のようなイメージです。
<部下に注意する場合>
【NG】「〇〇さんの提出する報告書にミスが多くて困っています。改善してくれませんか?」
【OK】「〇〇さんは仕事が速くて非常に助かります。ただ、報告書を作成する場合、確認をよく行なってみてくれませんか?」
<仕事を依頼された場合>
【NG】「忙しくてそれどころじゃありません。ほかの人に依頼してください」
【OK】「機会を与えてくださり嬉しく思います。しかし、いまは緊急な案件を抱えているため、ほかの人に依頼してくださると助かります」
NG例はどちらも、とげとげしくて機嫌が悪そうな印象ですよね。同じように否定的な内容であっても、OK例のようにポジティブな言葉を先に入れば、相手には善意が伝わるのです。ぜひ “機嫌のよい” 言葉に変えて、イメージアップを図ってみましょう。
2. 好かれる人は「ほめて相手を立てる」
特別なスキルがないように見えて世渡り上手な人、あなたの周囲にいませんか? 彼らの多くが身につけている相手を立てる能力は、大切なビジネススキルなのです。
あなたが有能であるなら、上司のやり方に疑問を感じるときもあるでしょう。しかし、「新しく追加したマニュアルでは、かえって工程を増やすことになります」などと反論するのはNG。上司を敵に回すだけで、あなたの望みどおりに交渉するのが不可能になるからです。
部下相手でも同様です。「部下の要領が悪く、依頼した仕事が進まない……」と頭を抱える場面はよくあるものですが、そこで問い詰めてしまえば、きっと部下は萎縮して保身のためにミスを報告しなくなるでしょう。
そこで大事になるのが、“ほめて相手を立てる” こと。周囲から好かれる人は、これを自然とやっているものです。
「上司を勝たせる、部下に花を持たせる」――「社内交渉力」をアップさせるコツをこう語る、政治・教育ジャーナリストの清水克彦氏は、ほめることについて次のように解釈しています。
それは、ビジネス用語で言うエンパワーメントである。エンパワーメントは、しばしば、「権限を与える」などと誤用されるが、文字どおり「パワーを与える」ことにほかならない。
(カギカッコ内・枠内引用元:PHPオンライン衆知|官僚にも多い? 結局「褒め上手」が職場で上手くいく理由)
つまり、ほめるのは相手の意欲を高めるのと同義。特別なスキルがなくとも評価の高い人は、人を上手にほめて相手のモチベーションを高め、チームに貢献しているのです。
ほめ方にもさまざまありますが、なかでも効果的なのは「間接的にほめる」ことだそう(カギカッコ内引用元:同上)。あなたにも、「○○さんがこんなふうにほめていたよ」と第三者から聞かされて嬉しくなった経験があるでしょう。それを今度は、あなたがまわりの人に対して実践してみてください。
<上司を間接的にほめる>
上司と仲のいい先輩に対して:「マニュアルが変わってから、以前より業務がはかどるようになりました。あのタイミングでルールを変えた、課長の判断力がすばらしいと感じます」
<部下を間接的にほめる>
部下の同期社員に対して:「○○さんは対応力がある。ピンチのときでも柔軟に考えられるのは、彼の大きな強みだと思うな」
人をほめて損にはなりません。ほめ言葉はどんどん周囲に広めましょう。ほめ上手なあなたに対し、まわりは好感を抱くはずです。
3. 好かれる人は「弱さを見せる」
優秀な人は能力が高いゆえに、「非の打ちどころがない」「同じレベルの会話がしにくい」といった近寄りがたい印象を周囲に与えてしまうもの。一方で、好かれる人は相手に自分の ”弱さ” を見せて親近感を抱かせます。
弱さを見せることに抵抗がある人もいるかもしれません。実際、ハーバード・ビジネス・スクールのレスリー K. ジョン教授らによる、こんな研究結果があります。組織のリーダーらに今後一緒に働く人たちに対して自己紹介文を書かせたところ、その多くが「自分の強みにばかり言及」したのだそうです。「弱さをさらけ出すと、自分のイメージに悪影響が及ぶ」との恐れから、自分の弱みを隠そうとする心理が働くのではないかと、ジョン教授らは考察しています。(カギカッコ内引用元:DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー|リーダーが弱点を見せるべき理由)
ですが、弱さをさらけ出すのは必ずしもデメリットではないようです。
ジョン教授らは、次のふたつの条件下で、そのリーダーについてどのように感じるかを回答者にたずねました。
- リーダーが自分の弱点を「打ち明ける」
- リーダーが自分の弱点を「打ち明けない」
すると、「弱い部分を打ち明け」るリーダーに対して、「本当の自分を隠していない」という印象が強くなるという結果が出たのです。特筆すべきは、「仕事の能力」への評価が下がらなかった点。(カギカッコ内引用元:同上)
弱みを打ち明けるのはデメリットだという考えは、杞憂なのかもしれませんね。
ただし、注意したいのが、深く暗い打ち明け話をすべきではないということ。あまり親密ではない相手に重い身の上話を打ち明けても、相手を戸惑わせてしまいます。親近感を抱いてもらうのに効果的なのは、笑って話せるような軽い失敗談です。
たとえば、チームのメンバーたちに、
「このあいだ、重要な会議で作成したスライドがなかなか表示されなくて慌てました。パワーポイントの操作は少し苦手ですね」
というように、仕事でのちょっとしたミスを打ち明けてみましょう。メンバーたちは、あなたに人間らしい一面を感じるはず。彼らがあなたに対して抱いていた ”近寄りがたい人” というイメージはやわらぐかもしれません。チームメンバーと打ち解けるため、あなたの完璧さを少し崩してみてはいかがでしょうか。
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「距離を置かれているかも」と心配になるときは、ぜひ今回紹介した3点を活用してコミュニケーションをとってみてください。あなたの別の一面を見せれば、周囲に与える印象は変わるはずですよ。