考える力は「手書き習慣」で高まる。1枚の “なぐり書きメモ” が人気コンテンツを生み出した話

考えながら手書きするためのメモ帳

AIをはじめとしたテクノロジーの進化によって、ビジネスパーソンの働き方、あるいは求められる力もどんどん変化していると言われます。これからの時代のビジネスパーソンに必要な力とはどんな力で、どうすればその力を高められるのでしょうか。

その疑問に対して「書く習慣」がキーワードになると語るのは、手帳を活用した目標達成メソッドで自己実現のためのコーチングを手掛ける高田晃さんです。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人

【プロフィール】
高田晃(たかだ・ひかる)
1983年9月25日生まれ、東京都出身。一般社団法人日本手帳マネージメント協会代表理事。株式会社ラグランジュポイント代表取締役社長。手帳を活用した目標達成メソッドで自己実現のためのコーチングを手掛けるライフコーチ。「手帳で人生をデザインする」を標語として掲げ、キャリア形成・独立起業・習慣化・自己改革など、手帳によって人生を設計してきた約20年にわたる自らの経験をベースに、その方法論をコーチングやセミナー等を通じて発信している。また、法人向けのウェブコンサルティング会社も経営。自らもコンサルタントとして活動し、商工会議所など全国各地の各種団体で年間100回以上の登壇数を誇る人気セミナー講師でもある。自らの思想を詰め込んだ『夢をかなえるライフデザイン手帳』(明日香出版社)をプロデュースしたほか、著書に『手帳で夢をかなえる全技術』(明日香出版社)、『小さな会社 ネット集客の鉄則』(クロスメディア・パブリッシング)などがある。また、YouTubeチャンネル「手帳の強化書」で、手帳・メモ術関連の情報を発信中。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

「書く習慣」が、ビジネスパーソンに必要な思考力を高める

いま、ビジネスパーソンは大きな過渡期を迎えています。その理由はAIの登場です。みなさんも何度となく見聞きしたことがある話だと思いますが、これまでの仕事のなかからAIに代替されてしまうものも出てくるでしょう。いや、その流れはすでに進んでいます。

ですから、これから私たちがやるべきは、AIにはできないことです。そのAIにできなくて人間にできるのが、「思考」なのです。つまり、これからの時代にビジネスパーソンとして活躍しようと思えば、思考力を高めていくのが必須となります。

そして、思考力を高めるのに大きく寄与してくれるのが、「書く習慣」なのだと私は考えます。なぜなら、書く行為自体が、物事を深く考えることだからです。

もちろん、子どもの頃に学校でやっていたように板書を機械的に書き写すだけとか、備忘録としてのメモをするだけでは、深く考えることにはなりません。しかし、私が提唱している「書く習慣」を実践すれば、間違いなく思考力を高められます。

その「書く習慣」とは、基本的に2段階で進めます。最初の段階は、一般的なアイデアメモです。日常のなかでパッとなにかを思いついたり気になることがあったりしたときに書き留めておくためのものです。私も小さなメモ帳をアイデアメモとして使っています。

そうしてストックされたメモをベースにして、今度はノート(私の場合はシステム手帳)を使ってアイデアを整理していきます。そのプロセスで深く考えることになり、結果として思考力を高めていけるという流れです。

ノートを使ってアイデアを整理すると思考力を高めていけると語る高田晃さん

アイデアがかたちになったきっかけは、1枚の小さな紙切れ

この進め方については、具体例を挙げたほうがイメージしやすいかもしれません。これから紹介するのは、私が運営している「My手帳倶楽部」という会員制コミュニティーで公開している「MTCラジオ」という音声コンテンツについて考えたときの流れです。

私が日常的に持ち歩いているのは、アイデアメモとシステム手帳。システム手帳は先にお伝えしたようにアイデアを整理するときに使いますが、ほかにも私の人生におけるビジョンやそれを具体化した目標、スケジュールなどありとあらゆることをこの手帳に詰め込んでいるので、これくらい分厚くなります。

高田晃さんの分厚いシステム手帳

下の写真にあるのが、MTCラジオのアイデアを整理するとっかかりとなったメモです。日常のメモなので殴り書きですが、MTCラジオという名前はすでに思いついていたようです。

高田晃さんが書いた、MTCラジオのアイデアを整理するとっかかりとなったメモ

ただ、このときに使ったのはメモとノートだけではありませんでした。私は、メモと同じく、日常のなかで気になった新聞や雑誌の記事に出会うとスクラップするようにしています。

このときに使った記事は、YouTubeなど動画コンテンツ全盛の時代にあって、逆に新鮮だといった理由でラジオなど音声コンテンツも盛り上がっているといった内容でした。この頃の私は、「My手帳倶楽部向けになんらかの新しいコンテンツを追加したい」という課題意識を抱えていたために、この記事に目がとまったのだと思います。

そうして、メモとスクラップを眺めながらアイデアを膨らませたり整理したりしながら、下の写真のようなかたちでノートにまとめていきました。思いつきだったメモと比べると、内容がずいぶん具体的になっているかと思います。

高田晃さんが新聞記事をもとに書いたメモ

このMTCラジオについてのノートには2022年3月5日と日付がありますが、その後、実際に動き始め、現時点で40本ほどのコンテンツを公開しています。おかげさまで人気コンテンツとなり、MTCラジオが目的で私のコミュニティーに入会した人もいるほどです。1枚のメモという小さな紙切れから思考を深め、成果につながった例です。

このように、私が物事を考えるときには、必ず書く行為がともないます。つまり、「書く=考える」と言ってもよく、だからこそ書く習慣が思考力を高めることにつながるのです。

デジタルメモではなく手書きメモだからこそ、習慣的に考えられる

でも、「書くということなら、デジタルツールでもいいのではないか」と思う人もいるでしょう。ところが、このプロセスをデジタルツールで行なうのはなかなか難しいのです。

デジタルツールのメモが力を発揮するのは、自ら能動的に動く場合です。たとえば、「あのときの打ち合わせってどんな内容だったっけ?」と思ったときに、その内容をデジタルツールで残していれば大いに役立ってくれるでしょう。日付や相手の名前、打ち合わせのキーワードなどで検索できるからです。すぐにお目当てのものを見つけられるという利便性があります。

でも、そうできるのは「あのときの打ち合わせってどんな内容だっけ?」と思って能動的に動いたからこそなのです。デジタルツールでアイデアメモをしている人も多いと思いますが、メモしただけで、あとから見返していないケースも少なくないのではないでしょうか。それでは、せっかくのメモも無駄となってしまいます。

一方、手書きならどうでしょうか。私は、アイデアメモを書き終えたら、ちぎってシステム手帳の表紙裏に挟んでおくようにします。そして、それらを整理する「思考タイム」を設けています。思考タイムは毎朝とれるのが理想ですが、スケジュールの兼ね合いで難しい場合もあります。ただ、それでも週に2回ほどは設けています。

そして、思考タイムのスタートは、システム手帳に挟んでいたメモを取り出すことです。ちぎった何枚ものメモが挟まれているために「整理したい」という気持ちが自然に湧いてきて、自分がメモしたことすら忘れていても必然的にメモを目にすることになるのです。これは、デジタルツールではできないことだと思います。

「システム手帳に挟んでいたメモを取り出す」のも、「能動的に行なわなければならないこと」と言えるかもしれません。ですから、「メモを書き終えたらシステム手帳に挟む」「定期的に『思考タイム』を設けて、システム手帳に挟んでいたメモを取り出す」のをルーティン化するのがポイントとなります。

動画コンテンツ全盛のなかでの音声コンテンツではありませんが、デジタルツール全盛だからこその手書きメモのよさを、みなさんにもぜひ知ってほしいと思っています。

考える力は「手書き習慣」で高まることについて語ってくれた高田晃さん

【高田晃さん ほかのインタビュー記事はこちら】
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