京大教授が開発「アート思考のフレームワーク」 この5ステップで “ゼロイチ力” が抜群に上がる

アート思考のフレームワーク1

「仕事で独創的なアイデアを考えないといけないのに、やり方がわからない」
「もっとクリエイティブになってチームの生産性に貢献したいけれど、どうすればよいかわからない」

自分の常識や先入観からなかなか抜け出せず、ビジネスの場面で挫折してしまう。そんな状況を解決してくれるひとつの手法が、「アート思考」です。この記事では、「アート思考」とそれを実践するための「アートイノベーションフレームワーク」について詳しく解説します。

「アート思考」ならビジネスでも自由に発想できる

アート思考とは「アーティストの思考をビジネスに応用し新たなアイデアを生み出す手法」を指します。2020年6月に、京都大学総合生存学館教授の土佐尚子氏と凸版印刷株式会社との共同研究において思考ロジックが明確化され、アート思考の具体的な実践方法として「アートイノベーションフレームワーク」が開発されました。

「デザイン思考」という言葉は聞いたことがあるかもしれません。デザイン思考は、ユーザーが抱えている課題を解決するデザイナーやクリエイターの発想法をビジネスに応用し着想を得ようとするもの。「アート思考」は、この「デザイン思考」から波及的に生み出された手法です。

しかし、アート思考がデザイン思考と少し異なるのは、ゼロからイチを生み出すアーティストの完全自由な発想をビジネスに取り入れるところにあります。ビジネスの場面では、「なんのために」「誰のために」という前提や顧客のニーズにどうしても縛られてしまいがち。しかしアート思考では、アーティストが作品をつくるときのように、自分の価値観からアイデアをどんどん広げていくことができます。つまり、ビジネスの枠を超えた広い視野で、常識にとらわれず試行錯誤しながら新しい価値を生み出せるのです。

アート思考のフレームワーク2

「アートイノベーションフレームワーク」にならって、アート思考を実践してみよう

前出の土佐尚子氏は「アートイノベーションフレームワーク」について、アート思考を「発見」「調査」「開発」「創出」「意味づけ」という5つのステップに分け、ビジネスシーンに応用できる型へと発展させたものだと示しています。以下では、「アートイノベーションフレームワーク」のプロセスとその具体的な実践方法について、例を用いながら説明していきましょう。

アート思考のフレームワーク3

ステップ1:発見

まず、自分の主観や興味、感性に基づいて、「おもしろい」「美しい」「価値がある」と感じるものを見つけることから始めます。

NTTデータ金融事業推進部デジタル戦略推進部の横山智恵氏によれば、アート思考では自分がどう解釈したかを起点にすることが重要だそう。たとえば、自分の趣味が「釣り」で、「エサを変えるとそれにおびき寄せられる魚も変わる」部分におもしろみを感じていたとしましょう。

この時点では、ビジネスへつなげられそうかどうかを気にする必要はありません。仕事で「リモートワークになり、社員の業務に対する積極性が弱まって生産性が落ちてしまった」という問題をもし解決しなければならなかったとしても、アート思考では、「自分が感じる『釣り』のおもしろさを仕事にも活かせるのではないか?」と思うところから始めてかまわないのです。

ステップ2:調査

次は、最初のステップで特定した自分の価値観について、着眼点が独創的かどうかを検証していきます

土佐氏によれば、画期的なアイデアを実現するためには、類似のものがないかどうかを検証することが必要条件となるそう。もし類似のものが存在した場合は、二番煎じを考えるのではなく、あくまでも独自の視点からアイデアを発展させなければなりません。

先ほどの例で言えば、仕事の生産性向上に「釣り」の仕組みが応用されているようなケースがあるかどうかを検証します。調べたところ、釣りとビジネスの構造が似ているという考え方はあるようでしたが、具体的に釣りの要素をビジネスへ応用させているケースは見つけられませんでした。したがって、釣りの「エサを変えるとそれにおびき寄せられる魚も変わる」要素をビジネスに応用するという自分の着眼点が独創的なものだと判断できるのです。

アート思考のフレームワーク4

ステップ3:開発

そして、自分の着眼点をビジネスシーンへ応用していくにあたり、サービスや事業がオリジナルなものになるよう、さらに検討・検証を進めていきます

前出の横山氏によると、アート思考においては、従来の常識にとらわれず、まだ誰もみたことのないビジョンを描くことが求められているそう。すでに存在しているものではなく、クリエイティブで新規性を満たすものが求められるのです。

前のステップを参考に、自分のアイデアを具体的に展開させてみましょう。釣りの「エサを変えるとそれにおびき寄せられる魚も変わる」要素を、リモートワークでの生産性向上へ活かす具体的な手法に当てはめられるよう考えていきます。たとえば、釣りでは「どの時間帯に、どこでなんの魚がどのようなエサで釣れるのか」というデータを収集しなければなりません。こうしたデータ収集の手法は、生産性向上に応用できそうです。

ステップ4:創出

続いて、アイデアを実際のビジネスプランへアウトプットしていきます。これまで検討・検証してきたアイデアのイメージをもっともっと膨らませ、具体的な内容へ落とし込んでいく作業です。

先ほどの例で言えば、「リモートワークにおける時間帯別の仕事効率を数値化したデータ」と「時間帯別の仕事に対するやる気を点数化したデータ」を収集します。そして、それらを時間帯別に掛け合わせた「総合点」の高い時間帯から順に勤務時間として割り当てていく、という新たなシステムを考えてみました。

横山氏によれば、「アート思考」において「正しい答え」ではなく「自分なりの答え」を追求する必要があるそう。このシステムのオリジナルな部分として、「仕事効率の数値とやる気の数値を掛け合わせた総合点を判断基準にする」点が挙げられます。完璧なビジネスプランをいきなりつくらなければならないということではないため、まずはひとつの形にすることを目標にしましょう。

ステップ5:意味づけ

最後のステップでは、オリジナルのビジネスプランをほかの人が評価できるようにするため、意味を言語化します。これまでのステップでアウトプットしてきた内容や目的をわかりやすい言葉へ変換し、ほかの人からフィードバックをもらいましょう。

たとえば、今回の例を言語化すると、次のように表現できます。

「リモートワークという勤務形態でも生産性を落とさないようにするため、勤務時間に焦点を当てて仕事の効率化を図ります。具体的には、時間帯別のタスク進行度や達成率を中心とした仕事効率を数値化したデータ1と、時間帯別の仕事に対するやる気を点数化したデータ2を総合し、高い数値が得られた時間帯を中心に勤務時間へと割り当てることで、仕事効率を高めていくことができるはずです」

また、このプランに対して、「勤務時間よりも勤務内容を重要したほうがよいのではないか」「そもそもリモートワークのみにこだわらず、勤務形態をもっと工夫できないだろうか」といったフィードバックがもらえるかもしれません。

横山氏は、異なる視点をもつほかの人からフィードバックを受け、新たな気づきを得ることによって、自分の価値観を再定義できると伝えています。さまざまなフィードバックを参考にすれば、自分の考えたビジネスプランをどんどんアップデートしていけるでしょう。

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アート思考を仕事に取り入れることで、よりクリエイティブに貢献できる可能性が高まります。既存の思考法ではうまくいかないと悩んでいる方は、ぜひ「アートイノベーションフレームワーク」を実践してみてくださいね。

(参考)
日経XTREND|デザイン思考ならぬ「アート思考」とは? マイクロソフトも推進
京都大学|アート思考により人財育成を支援する新手法を開発 -アーティストの思考ロジックをフレームワーク化し、新たな価値創造で企業の人財育成・事業開発を支援-
DATA INSIGHT|アート思考~先行きが不透明な時代の思考法~
PRESIDENT ONLINE|仕事のデキる人が「アート思考」を学ぶべき理由

【ライタープロフィール】
YOTA
大学では法律学を専攻。塾講師として、中学~大学受験の6科目以上の指導経験をもつ。成功者の勉強法、効率的な学び方、モチベーション維持への関心が強い。広い執筆・リサーチ経験で得た豊富な知識を生かし、効率を追求しながら法律家を目指して日々勉強中。

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