「会議でいつも発言できない。『何も考えていない人だな』と思われていないか心配……」
「仕事のできる人と比べると、自分の意見は響いていない気がする」
このような悩みをもっていませんか?
じつは “この人は頭が切れる” と周囲に感じさせている人には、いくつかの特徴があります。彼らは、あることを “やらない” のです。あなたもひとつでも意識してみれば、自分の発言に “頭の切れのよさ” を加えられるかもしれません。では説明しましょう。
【ライタープロフィール】
髙橋瞳
大学では機械工学を専攻。現在は特許関係の難関資格取得のために勉強中。タスク管理術を追求して勉強にあてられる時間を生み出し、毎日3時間以上勉強に取り組む。資格取得に必要な長い学習時間を確保するべく、積極的に仕事・勉強の効率化に努めている。
頭が切れる人は「刺さらない長い話」をしない
「頭が悪そう」「頭の回転が遅い」と思われてしまう例として、以下のようなものが挙げられます。
- 話が長い
- 何が言いたいのかわからない
とりとめなく冗長な話をしている人に対して、「頭が切れる」という印象は抱きませんよね。実際、頭が切れる人は、相手の心や記憶に残る短い言葉で話すのです。企業研修や法人営業コンサルティングを展開するエマメイコーポレーション代表取締役の大塚寿氏も、「できる人は、短く刺さる言葉で強い印象を与える」と述べています。(カギカッコ内引用元:ダイヤモンド・オンライン|伝え方が分岐点、「できる人」と「できるけど評価されない人」の差)
では、言葉が “刺さる” とは、どのような状態なのでしょうか。同氏は、セミナーを行なったときの体験をもとに次のように語ります。
自己紹介をしているときは、みんな漠然と聞いている。しかし、「御社に2年くらい通ったあと、人事の○○さんからセミナーのチャンスをいただき……」など、相手の会社や社員のことを話し始めた瞬間、雰囲気が変わる。
(引用元:同上)
つまり、セミナー先の社名や個人名など固有名詞を出したことで、ぐっと相手の注意を引いたのですね。相手に刺さる話をするため、同氏は次の3つのポイントを挙げています。
- 「長い話は伝わらない」
- 「固有名詞を話に入れ」る
- 「相手を主語にする」
(カギカッコ内引用元:同上)
では、これらの「刺さる話し方のコツ」を使う場合と使わない場合とで、具体的にどんな違いが生まれるのでしょう。ソフトウェア開発工程の遅延について意見を述べる状況を例にして、考えてみます。
【刺さる話し方のコツを使わない例】
いま問題となっている作業工程の遅延について、改善策を考えてみました。
本人や家族の体調不良でお休みになる方が多いため、リモートワークを推奨することで仕事がしやすくなるかと思います。
「リモートワークができればもう少し気軽に仕事ができる」という意見もあるため、推奨してみてはどうでしょうか?
この例を読んであなたはどう感じましたか? 話の内容は理解できたけれど、どこか冗長で、印象に残らない……そんな感想をもった方は多いかもしれません。具体的な単語も使われていないため、記憶にも残りにくいでしょう。
次に、刺さる話し方のコツを使った例を見てみます。
【刺さる話し方のコツを使った例】
以前、〇〇さん(相手)がおっしゃっていた作業工程の遅延の改善策として、リモートワークを推奨してみてはどうでしょうか?(ポイント1・3を意識)
本人や家族の体調不良でお休みになる方が多いため、リモートワークをすすめることで仕事がしやすくなると思います。
△△さんも「リモートワークができれば、もう少し気軽に仕事ができる」とおっしゃっていました。(ポイント2を意識)
刺さるコツを使った例では、相手を主語にして伝えているので、相手にとって自分事にとらえやすいという効果があります。また別の固有名詞を出し、注意を引きやすくしているのもポイント。
同じ内容であっても、ちょっとしたコツを意識することで相手に刺さる意見に変わります。このような話し方を身につけることで、「あの人はいつも、強く印象に残る意見を言ってくれる。頭の切れる人だな」という評価に近づくことでしょう。
頭が切れる人は「座っているだけの会議」をしない
会議中に鋭い意見を述べ、ほかの参加者からの尊敬を集める “頭が切れる人”。そんな人には生まれもった才能があるかのように感じてしまいますよね。
しかし、彼らは特別な才能をもっているわけでも、なにか特殊なことをしているわけでもありません。入念な事前準備をしてから会議に参加しているのです。大事なのは、会議の最中よりも、会議が始まる前の準備だということ。
ハーバード大学ケネディ行政大学院において、コミュニケーションの技術講座を担当するソン・シャピラ氏も、「会議中にインスピレーションが湧くのを待ってはいけない。前もって準備しよう」と述べています。ともに仕事をしたシニア・エグゼクティブ(いわゆる執行役員)を例に挙げ、次のように語る同氏。
彼女はあらゆる会議で発言することをみずからに課し、前もってコメントや質問を準備した。彼女はいまや社内のロールモデルであり、また業界きっての第一級のスピーカーと目されている。
(カギカッコ内および枠内引用元:DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー|会議でインパクトある効果的な発言をする3つの方法)
私たちも会議が始まる前に、共有された資料を読み込み、気になる点を列挙してから会議に参加すれば、具体的な意見を言うことができて、“頭が切れる人” という評価を得られるかもしれません。
たとえば「新しいマーケティング戦略」に関する会議の前なら、「市場分析レポート 」や「過去のキャンペーンの成果」「顧客アンケート」などを読み込んでおけば、データに基づいて具体的な質問をしたり、意見を出したりできますよね。
「おかしな発言をしたら、評価が下がってしまうかも……」と、ただ座っているだけでは、いい評価は得られません。周囲から「あの人は何も言わない。あまり考えていない人なんだな」と思われてしまうだけです。
会議の前には、しっかりと準備をして、何を言おうか考えておく。こんな経験を重ねていけば、「いいこと言うな」という好印象をほかの参加者に与えるような、鋭い意見を言えるようになるはずです。
頭が切れる人は「議論」で勝とうとしない
話し合いや交渉などで相手をすんなりと納得させている人を見ると、「説得がうまい。さすが、頭が切れる人は違うな」と感じるものですよね。
相手の考えに意見を伝えたいとき、自分の提案に反対意見を述べる人がいるときなど、仕事では議論が必要な場面がよくあるもの。そんなとき、頭が切れる人は、強く意見を言って相手を無理やり納得させることはしません。
言葉を上手に使って相手を説得することに長けている人は、円滑に話を進められるよう、相手を打ち負かそうとは考えないのです。
元パルファン・イブ・サンローラン日本支社長であり、コミュニケーションスキルの専門家として年間300回以上のセミナーを実施する箱田忠昭氏は、「議論で勝とう」としてはいけないと語ります。なぜなら、議論に勝ったところで「相手は本心から納得してはくれ」ないため。(カギカッコ内引用元:リクナビNEXTジャーナル|相手の機嫌を損ねないように「反論」し、自分の主張を納得させる3つのステップ)
箱田氏は、対立を避けるために次のような言葉を使わないよう推奨しています。
×「しかしですね」
×「でも」
×「けれども」
(引用元:同上)
上記の言葉を使うと否定的なニュアンスが強くなり、説明や意見ではなく「反対」という印象を生んでしまうのです。
同氏は、代わりに次のような言葉で肯定的につなぐことを推奨しています。
○「その点について実は…」
○「そこで、その点について説明しますと…」
(引用元:同上 ※太字は筆者が施した)
このような肯定的な言葉を用いれば、議論が “勝負事” になってしまうことなく、気持ちよく意見をすり合わせることが可能です。
たとえば、SNSを使ったマーケティングの導入を会議で提案したとします。「自分たちの取り扱っている製品の利用者とSNS利用者層がかぶらないため、SNSを使っても有効ではないのではないか」という意見に対して反論することを想定した場合の、NG例とOK例がこちら。
【NG】
「たしかにおっしゃる通りです。しかし、いますぐには直接的な効果を示さなくとも、今後SNSを利用していた世代が顧客となることで、長期的に見て効果を発揮すると考えています」
【OK】
「たしかにおっしゃる通りです。その点について説明しますと、いますぐには直接的な効果を示さなくとも、今後SNSを利用していた世代が顧客となることで、長期的に見て効果を発揮すると考えています」
「しかし」を使わないだけで、ネガティブな印象を与えずに意見を伝えることができていますよね。反射的に否定をすることは簡単。ですが、一度思考をめぐらせ、相手を尊重した表現を考えるように習慣化してみてください。
相手と意見が違ってもうまく話をまとめていける “頭の切れる人” として、あなたの評価も上がっていくはずです。
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あなたは、上記の3つの行動をしてしまっていませんか? もし当てはまるなら、ぜひ今日から改善していきましょう。頭が切れる人だ――そんな好印象を与えられる人を目指してみてくださいね。
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