人間関係で心が疲れている人のためのコミュニケーション術。意思疎通のズレは “○○” で解消できる

人間関係がうまくいっている職場

「部下に指示をしても、解釈を間違えて勝手な行動をする……」
「わかりやすく説明したつもりなのに、相手が誤解して反論してきた……」

このような仕事のコミュニケーションでの “ズレ” を感じていませんか? 「人の価値観やとらえ方はそれぞれ」とはいっても、伝わらないストレスが重なれば、心は疲れるもの。どうすれば、自分とは違う考え方の相手と心を通わせることができるのでしょうか。

今回は、意思疎通がうまくいかない場合のアドバイスをふたつ紹介します。伝わらない悩みがある人はぜひ、ご一読ください。

【ライタープロフィール】
青野透子
大学では経営学を専攻。科学的に効果のあるメンタル管理方法への理解が深く、マインドセット・対人関係についての執筆が得意。科学(脳科学・心理学)に基づいた勉強法への関心も強く、執筆を通して得たノウハウをもとに、勉強の習慣化に成功している。

相手と解釈が違うのなら「質問でズレを可視化」する

「正しく質問できていますか?」――こう問いかけられたら、みなさんはどう答えるでしょうか。以前、筆者は質問に求められるスキルを「恐れずに質問すること」だととらえていましたが、あとになって「疑問点を整理して相手に具体的に聞く」スキルでもあると気づきました。「質問」という単語ひとつとっても、とらえ方はいろいろあるのだとわかったのです。

筆者が経験したように、同じ言葉でも、人によって “解釈の違い” があるもの。そのため、それこそ質問を通してズレを直していく必要があるのです。

ロングセラー『地頭力を鍛える』(東洋経済新報社)の著者で、ビジネスコンサルタントとしてさまざまな人とコミュニケーションをしてきた細谷功氏は、「伝わることを前提としたコミュニケーションは幻想」だと述べます。(カギカッコ内引用元:サイボウズ式|「オンラインだから伝わらない」ではなく、課題が明確になっただけ──『具体と抽象』細谷功さんに聞く、会話のコツ

たとえば、上司が部下に「取引先に提出する資料をまとめて」と伝えたのに、部下が別の業務を優先してなかなか資料をまとめない――という状況があったとします。上司は「なぜ、当たり前のことがわからないの?」といらいらしたり、部下に失望したりするかもしれません。ですが、「一度言ったのだからわかるはずだ」というのは上司側の思い込み。コミュニケーションのほとんどは、“伝わらない” のが原則なのです。

細谷氏によれば、うまく意思疎通できない原因の多くは「『部分と全体』がすれ違っている」こと。(カギカッコ内引用元:同上)

前述の例で言えば、指示通りにすぐ行動しない部下を見た上司が「この部下は理解していない」と感じたとしても、部下の立場からすれば、まとめるのに十分な情報がそろっていないという事情があったのかもしれません。このように、ある一面を見て自分の解釈したことが、全体像とは違っている場合もあります。これがすれ違いの原因です。

指示がすれ違っているビジネスパーソン

以上のことをふまえると、「簡単には伝わらないものだ」という心構えさえできれば 、意思疎通のすれ違いに対して必要以上にモヤモヤすることはないと言えますよね。

ここでヒントになると細谷氏が述べるのが、「無知の知」の考え方(カギカッコ内引用元:同上)。

つまり、「自分は相手の考えをよく知らないのでは?」と疑ってみるのです。

「伝わらないのは、相手に理解力がないからだ」と思うと、腹が立ったり心が疲れたりするもの。しかし相手は、こちら側では見えていない問題にフォーカスしている可能性もあるわけです。「自分がまだ知らない、相手にしか見えていないものがあるのかもしれない」と疑い、それがいったいなんなのかを把握すれば、解釈のズレを埋めやすくなります。

そこで大切となるのが、質問で確認してズレを可視化すること。

自分が見えているものや解釈を伝えて、具体的に可視化してみることですね。それぞれ何が見えていて、何が見えていないのか違いを見つけていく。

そうすると軸が見えてきます。

細谷氏が言う「軸」とは、「部分と全体」「具体と抽象」「過去と未来」などの対立になるものを指します。どこですれ違ったのか――そのポイントさえ見つかれば、相手の解釈をつかみやすいはず。(枠内およびカギカッコ内引用元:同上)

たとえば、仕事におけるフィードバックですれ違う場合を考えてみましょう。

相手:「プレゼン用の資料をもう少しシンプルにしてください」
自分:「シンプルにというと、色やレイアウトを変更するということでしょうか?」
相手:「いいえ。現段階だと情報量が多いので、内容を削ってくださいという意味です」

相手側の「シンプルに」という抽象的な指示に対し、自分の解釈を示しながら確認すると、相手にも認識のズレがわかりやすくなります。すれ違いでモヤモヤしている人は、「自分が見ているもの」と「相手が見ているもの」の違いを質問で確認してみてはいかがでしょうか。

質問しているイメージ

例え話が通じないなら「相手の身のまわりにあるもの」で例える

説明をわかりやすくするのが “例え話” ですが、「そういう状況にはなりませんから」と、文脈ではなく例え話そのものに反発された経験はないでしょうか。

「もし取引先の納期が遅れたら……」と言えば、「納期が遅れるなんてありえない」「長く付き合いのある取引先ですよ」と反発されるなど、「もしも」や 「たとえば」の話を飲み込めない人は一定数いるもの。

そのため、相手が理解できない例え話は、避けるのがベターです。

残念ながら、世のなかには「『仮定の話ができない人』がいる」――そう語るのは、『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)の著者で、コンサルタントの安達裕哉氏。(カギカッコ内引用元:Books&Apps|世の中には「仮定の話ができない人」がいて、コミュニケーションにおける問題が生じている。

安達氏は、オタゴ大学名誉教授ジェームズ・フリン博士の言葉を借り、「仮定の話ができない」のは「脳の機能」によるものだろうと考察しています。

実際、フリン教授は、

  • 仮定を真剣に受け止めること
  • 分類すること
  • 論理を使って抽象概念を扱うこと

の3つの分野に、IQの高さが顕著に現れるとしている。

(カギカッコ内および上記引用元:同上)

身もふたもない話ですが、仮定の話を受け止められるか否かは、知能の差によるようです。

たとえ話を用いて説明している様子

そうはいっても、もしもの話を受け止めてもらえずに、こちらの心が消耗してしまうことは防ぎたいですよね。それには、ある工夫が有効。相手にとって身近な物事に例えるのです。

教育コンテンツプロデューサーの犬塚壮志氏は、予備校講師の経験から「わかりにくい喩えというのは、かえって相手を混乱させてしまう」と述べています。(カギカッコ内引用元:プレジデントオンライン|「ドラゴンボールよりドラえもんのほうがいい」頭のいい人がやっている"たとえ話"の絶対条件

たとえば、企画開発から実行までのスピード感を「アジャイル開発のような速さで」と説明したとしても、聞いている相手は「アジャイル開発」の意味を知らないかもしれません。相手の知らない情報で例え話をしても「それってどういうこと……?」と混乱させるだけでしょう。

犬塚氏によれば、例え話は「相手が高確率で知っているもの」を使うのが、重要なポイントなのだそう。(カギカッコ内引用元:同上)

そもそも、例え話をするのは相手側に実感のあるイメージをしてもらうため。ならば、相手のバックグラウンドを考慮した例えを用いれば、伝わらないモヤモヤを減らせるはずです。

次のようなたとえを使ってみてはどうでしょう。

<野球好きな相手にフィードバックの必要性を説明する場合>

「Aさんはブルぺンではいい球を投げるエースですが、実際のマウンドでは弱い投手のようです。それは、ただ練習するだけで、自分の投げる球の癖を知らないからでしょう。ですから、こちら側から細かいフィードバックをして、学習してもらう必要があります」

<若い顧客に自社製品のメリットを説明する場合>

「たとえば、多機能のカメラアプリを使ってもすべての機能を使いこなすことはありませんよね。逆に、アプリ自体の容量が多くて動作が重くなることもありえます。当社の製品は、必要な機能だけなので動作が速く、コンパクトで持ち運びにも便利です」

相手が実感できる例えを使って説明すれば、“伝わる表現” になります。「どうして通じないのだろう?」とモヤモヤする場合は、例える題材を変えてみてはいかがでしょうか。

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「あの人にはわからない」と諦めるのもひとつの選択ですが、ぜひ一度伝え方を変えてみてください。相手に合わせて言葉を扱えるようになれば、人間関係の疲れはきっと減るはずです。

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