みなさんは、退勤直前の時間帯をどのように過ごしていますか?
「とにかく早く帰りたくてソワソワしている」
「ギリギリまで仕事に没頭し、終わったらすぐにパソコンを閉じる」
「上司の顔色をうかがっている」
さまざまな回答が予想されますが……じつは、成功している人の多くが、仕事を終える前のルーティーンをもっているよう。次の日に快適に仕事ができるよう、退勤直前にその準備をしているのです。今回は、デキる人たちが終業前にやっていることを紹介しましょう。
【1】机とデスクトップを片づける
仕事が終わったら、デスクから離れる前に机の上とパソコンのデスクトップを掃除しましょう。これは、次の日に朝イチからすっきりした環境で仕事を始めるためです。
集中力について20年以上研究を続けているプリンストン大学のサバイン・カストナー教授によると、散らかった空間は集中力を阻害し、さらには認知機能を低下させてしまうとのこと。
同氏が実施した動画を使った実験では、たとえば「この車を見ていてほしい」と被験者に伝えたうえで、車のまわりに余計なものを進入させると、車に対する集中力が弱まることが判明。視界に入る情報が多いほど、集中したいものから意識が引きはがされてしまうのです。カストナー氏は「脳は散らかった状態を気にしないことはできない」と結論づけています。
朝は脳がまだ疲れていない貴重な時間帯ですが、視界に入るものが多いがために脳を疲れさせてしまうのはもったいないもの。前日のうちに机の上とデスクトップをしっかり片づけておきましょう。
【2】「今日達成できたこと」を振り返る
ハーバード大学で経営学を教えるテリーザ・アマバイル教授は、238人を対象に、仕事終わりに「今日達成できたこと」をメールで報告してもらうという実験を4か月間行ないました。すると、本当に達成感を覚えて翌日の気分が向上することが判明。また、同時に記載してもらっていた「その日の気分」と「仕事の達成率」の関係も調べたところ、「気分がいい」と答えた日は76%の確率で仕事の進捗が好調だったとのこと。気分がいい日に進捗が芳しくなかったケースはたったの13%だったそうです。
つまり、「今日達成できたことを書く→翌日の気分がよくなる→仕事の進みがよくなる」という好循環が生まれたということ。そこで、その日に達成できたことを退勤直前に書き出す習慣をつくってみることをおすすめします。
「達成できたこと」と聞くと、「プロジェクトが完成した」「月間の売り上げ目標をクリアした」など、大きな出来事や区切りを迎えたときのことを思い浮かべる人が多いはず。しかし上記の実験では、日々の小さな進捗も認識することで達成感を感じられるということが示唆されています。どんなに些細なことでも「認識する」ことが大事なのです。
「資料作成が予定通り進んだ」「急に頼まれた案件に迅速に対応できた」など、小さなことでも可。自分が達成できたことに意識を向ければ、翌日のモチベーションやスムーズな作業につながるでしょう。
【3】先延ばししていることと向き合う
面倒なタスクや苦手なクライアントへの連絡、イライラしている上司とのコミュニケーションなど、後回しにしていることも退勤前に片づけてしまいましょう。
メンタリストのDaiGo氏は、物事を先延ばしすると、後回しにしたタスクが気がかりな状態が続いて脳に負担がかかり、集中力を低下させてしまうと指摘しています。また、ビショップ大学の心理学者フューシア・サイロワ教授いわく、先延ばし癖は健康被害のリスクも高めるとのこと。先延ばし癖がある人の脳では、ストレスホルモンと呼ばれるコルチゾールが分泌され続けます。結果、心臓への負担が高まったり、肝臓に脂肪をため込んだりしてしまうのだそう。
先延ばしをやめるには、以下の3ステップを実践しましょう。プロジェクト管理ツールを提供する会社の創業者ジャスティン・ロゼンタイン氏がすすめる方法です。
- 先延ばしにしていることを認識する
- 自分自身(もしくは同僚や友人)に、なぜそれをやりたくないか話す
- やるべきことを分解して、一歩目の行動を決める
まずは、先延ばしにしていることを自分で認識します。一般的なビジネスパーソンであれば、締め切りのあるものや、上司から指示された緊急のことなどは先延ばしにできないでしょう。しかし、自分の出世や個人的な目標のためのタスクは、つい後回しにしがち。「緊急ではないけれど大事なこと」を後回しにしていないか注意してみましょう。例として、「社内コンペに出すプロジェクト案を考えたいのに、なかなか時間をとれていない」というケースで考えてみます。
次に、なぜそれをやりたくないかを明確にしましょう。自分と向き合った結果、社内コンペのためのプロジェクト案が進んでいない理由として、「日々のやらなければならないタスクをこなすのに忙しい」ということと、「いい案を考えなければと思うほどやり始めるのが憂鬱になる」ことが挙がりました。自分自身との対話でわからなかった場合は、誰かに話してみることがおすすめ。話すことで考えを整理できたり、アドバイスをもらえたりするかもしれません。
最後に、そのタスクを達成するためにどのような一歩目を踏み出すか考えます。上記の例で言えば、まず、短い時間でもいいから、毎日コツコツと作業を進めることを決心。「昼休憩後の30分を社内コンペの準備のための時間とする」というルールを決めました。
いきなりすべて終わらせることは困難かもしれませんが、細かいステップに分解すれば気が軽くなりますよ。みなさんも、さっそく実行できそうなものがあれば、翌日のToDoに組み込んでしまいましょう。
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翌日の生産性やモチベーションのために、「1日の仕事の終え方」も工夫するようにしてみてください。
(参考)
Business Insider|成功している人が終業10分前に行う12のこと
Ambition & Balance|Here’s Why Everyone Should Have a Work Shutdown Ritual
Princeton Almni|Distractions in our visual environment can impede our brains’ ability to function
Harvard Business School Publishing|The Power of Small Wins
東洋経済Online|「すぐやる!」が習慣化する5つのアプローチ
Linkedin|Productivity Hacks: How to Overcome Procrastination by Facing Discomfort
【ライタープロフィール】
Yuko
ライター・翻訳家として活動中。科学的に効果のある仕事術・勉強法・メンタルヘルス管理術に関する執筆が得意。脳科学や心理学に関する論文を月に30本以上読み、脳を整え集中力を高める習慣、モチベーションを保つ習慣、時間管理術などを自身の生活に取り入れている。