「仕事は見て覚えろ」と上から言い続けるリーダーがやっぱりダメな理由

新人教育3つのコツ

まだ社会人経験のない新卒社員。まったくの異業種から未経験の状態で入社してきた中途社員。このように、自分の職場に “新しい人” が入ってくる機会はたくさんありますよね。そして、そういった新人の指導や教育を任せられることも、その会社で経験を積んできたビジネスパーソンの方ならば多いのではないでしょうか。

せっかく入社してきてくれた彼ら彼女らには、ぜひとも活躍できる人材になってほしいもの。しかし、指導の仕方をちょっと誤ると、モチベーションを大きく低下させてしまう恐れも……。「どれくらい丁寧に教えるべきなの?」「少し叱っただけなのにかなり落ち込まれた……」など、お悩みの方もいるのではないでしょうか。

そこで今回は、新人教育のコツを3つの視点からお教えします。

1. 放任主義はもう古い!? やっぱり今は “丁寧に教える” 時代へ

特に長い社会人キャリアをお持ちの方であれば、「自分が新入社員だった頃は教えてもらわなかった……」という経験から、「仕事は見て覚えるもの」という考えをどこかに持っている人も多いはず。しかしそれは、今の時代とは逆行しているかも。

その理由は、さまざまなデジタル機器の普及により、“できること” の領域が増え、覚えるべき事項の量も圧倒的に増えたから。たとえば、パソコンが当たり前になったことで、作業やコミュニケーションのスピードは格段に上がりました。便利になったのは確かですが、一方で、同じ時間でこなせるタスク量も増えたわけです。それに伴って、多くの広範な知識・スキルを習得する必要性も増しました

そんな状態で新人たちは入社してくるわけですから、そもそも仕事をさくさくこなす土俵に立ちづらいことは、火を見るよりも明らかですよね。

明治大学教授の齋藤隆氏が手がけた『たった1日でできる人が育つ! 「教え方」の技術』(PHP研究所)によると、最近の新人は「まずは仕事のやり方を丁寧に教えてほしい」と訴えることが多いのだそう。これは決して甘えているわけではありません。どんなに優れた素質を持っていたとしても、最低限の知識やスキルが備わっていなければ、戸惑ってしまうのも当然ですからね。

たとえば、最低限のマニュアルは用意していたとしても、「これを読んで、あとはやっておいて」と突き放すのは、今の時代にはそぐわないのかもしれません。お互いに読み合わせをしつつ、実際に作業をしてもらいながら「わからないところはない?」「迷っているところはない?」などと寄り添うのが良さそうですね。

放任せず、はじめから仕事のことを丁寧に教えてあげたほうが、新人はより早いスピードで知識やスキルを吸収していってくれることでしょう。

新人教育3つのコツ02

2.「得意なこと」「好きなこと」を把握してあげる

新人となると、やはり「自分から進んで動こうとしない」「いつも言われたことしかやらない」という傾向が強いもの。しかし、それも考えてみれば当然。まだ右も左もよくわからない状態なのですから、積極的に動こうにも動けないのです。

たいていは、経験や実績を積んでいけば、できる仕事の範囲も増えますから、より能動的に働いてくれるようになるでしょう。しかし、ある程度期間が経ったにもかかわらず姿勢に変化が見られない場合は、モチベーションが下がっている可能性が考えられます。どうすればいいのでしょうか?

目標実現の専門家・エグゼクティブコーチとして、多くの経営者やアスリートの指導体制をサポートした実績を持つ、大平信孝氏の著書『指示待ち部下が自ら考え動き出す!』には、新人に対する指導方法として「行動イノベーション・トーク」が載っています。

やり方を簡潔に説明すれば、新人の仕事の様子を見ながら「得意・不得意」を確認したうえで、新人が「やりたいこと」を聞き出し、それがチームの方針と合致するようであればやらせてあげるようにするというもの。

たとえば、人前でがんがん話すのがあまり得意でない一方、情報収集や資料作成など緻密な作業がとても得意な新人がいた場合。本人もそれを自覚しており、「裏方で活躍したい」という希望を持っていたとしましょう。

そこで、思い切ってチームの資料作成を一任してみたら、何が起こるでしょう。モチベーションが上がり、「どうすれば相手に刺さる資料をつくれるのか?」「どうすれば魅力的なプレゼンスライドに仕上げられるのか?」などを真剣に研究するようになってくれるかも。

「適材適所」を意識することもまた、新人教育においては大切なのです。

新人教育3つのコツ03

3.「上から目線」ではなく「横から目線」

2011年に開催された女子サッカーW杯において、なでしこジャパンを見事優勝に導いた佐々木則夫監督(※当時)のマネジメント方法も参考になるでしょう。

佐々木氏は「横から目線」でいることを心がけていました。練習時の指導はとても厳しかったものの、選手たちには普段、自身を「監督」ではなく「ノリちゃん」「ノリお」と呼ばせていたのだそう。

監督は選手たちの “兄貴分” あるいは “父親役” というのが、佐々木氏の持論でした。厳格さのもとできつく縛りつけるのではなく、そういった “親しみやすさ” もあったからこそ、選手たちは委縮せずに伸び伸びとプレイできたのではないでしょうか。

皆さんも、新人に対して親しみやすさを演出できていますか。いつも命令口調で高圧的に指示を出すなど、「上から目線」が度を越えてしまっては、新人は充分にパフォーマンスを発揮できないかも。

そうではなく、新人に対して自分から笑顔であいさつをしてみたり、積極的に雑談をふってみたりするなど、上下の関係だけに縛られない「横から目線」でも接するように心がけてみてください。

じつはそのほうが、新人が仕事をしやすくなるのはもちろん、上司であるあなたにとってもコミュニケーションが取りやすくなるのではないでしょうか。

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以上、3つのコツを実践して「指導上手」になりましょう!

(参考)
齋藤孝 (2015),『たった1日でできる人が育つ!「教え方」の技術』, PHP研究所.
Woman excite|教育係は入社2年目に!新人に仕事を教える時に必要な「心構え」
ダイヤモンド・オンライン|「新入社員が仕事しない」と嘆く前に上司がやるべきことは何か
大平信孝 (2018),『指示待ち部下が自ら考え動き出す!』, かんき出版.
AII About|なでしこ佐々木監督の3つのコミュニケーション術とは
日刊スポーツ|佐々木監督「横から目線」で成功/女王の挑戦18
講談社BOOK倶楽部|〝なでしこ力〟を引き出した佐々木監督の「人生訓」が格好よすぎる

【ライタープロフィール】
亀谷哲弘
大学卒業後、一般企業に就職するも執筆業に携わりたいという夢を捨てきれず、ライター養成所で学ぶ。養成所卒業後にライター活動を開始し、スポーツ、エンタメ、政治に関する書籍を刊行。今後は書籍執筆で学んだスキルをWEBで活用することを目標としている。

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