医師がおすすめ! 1日を振り返る “あの習慣” で得られる3つのメリットがすごい。

医師の長谷川嘉哉先生が語る「日記」の効果01

「日記」というと小学生の宿題の定番ですが、大人になってもそのまま日記を習慣にしている人は少数派でしょう。

でも、「大人こそ日記を書くべき」と語るのは、脳神経内科・認知症の専門医である長谷川嘉哉(はせがわ・よしや)先生。長谷川先生によると、日記を習慣化することは、心身の健康やビジネスなどさまざまな面で多くのメリットをもたらしてくれるのだそうです。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹

自分の生活パターンを知り、体調管理に生かす

日記を習慣にすることには、多くのメリットがあります。ここでは、私なりの日記の書き方とともに、そのメリットについて解説していきます。

まずは、書く項目を決めるのが大切。というのも、それがのちのち振り返ったときに、多くの気づきをもたらしてくれるからです。

私の場合、書く項目のひとつにしているのが天気です。よく、「今年の冬は本当に寒いね」「いままでで一番じゃない?」なんて会話を耳にしますよね。でも、冬というのはだいたい毎年寒いものです(笑)。天気や気温を日記に記しておけば、「なんだ、いつもと変わらないじゃないか」と気づけます。小さなことかもしれませんが、天気や気温を日記に書いておくだけでも、日々の中でためてしまうストレスを軽減することになるのです。

また、天気や季節の変化によって体調が変化するという人も多いはずです。私のクリニックの患者も、前年などほかの年とまったく同じ日に体調を崩して来院するということが珍しくありません。

私たちは、毎年、毎日、違う生活をしているようであって、どこかにパターンのようなものがあります。そうして、いつも決まったときに体調を崩すということもある。それをきちんと日記に書いて残しておけば、体調を崩さないように気をつけて、なにか策を打つこともできます

医師の長谷川嘉哉先生が語る「日記」の効果02

日記でビジネスにおける悩みを解消する

心身の健康のためといった側面のほか、ビジネスにおいても日記は大いに力を発揮してくれるでしょう。ひとつは、反省の材料になるということが挙げられます。

人間というのは、意外なほど物事を忘れてしまうものです。それほどドラスティックな生活を送っていない私からすれば、それこそ取材を受けるようなことは大きな出来事です。にもかかわらず、1日が終わってみれば、そんな大きな出来事すらもすっかり忘れてしまうこともある……(苦笑)。でも、日記を書く習慣があれば、それらの出来事をきちんと振り返ることができます。

日記を書こうとしたら、「そういえば、今日は何か大きな出来事があったな……」「ああ、そうだ! あの取材を受けたんだった」と思い出せます。そして、「ああいうふうに言っちゃったけど、こう言ったほうがよかったかな」なんてことも思う。そうして、「今度はこうしよう」というふうに、反省したり改善策を考えたりすることもできるわけです。

また、仕事をしていれば、多かれ少なかれ悩みを抱えるもの。その悩みの解消にも、日記は役立ちます

たとえば、日記を見返すと、去年のいま頃に上司と対立して嫌な思いをしたということが書かれていた。でも、いまはその上司とけっこう仲良くやっているとしたら、「たいしたことなかったな」と思えます。そこからさらに、「いまも仕事の悩みはあるけれど、1年経ってみたらたいしたことはないと思えるかもしれないな」と考え、前向きに仕事に取り組めるということもあるはずです。

あるいは、いまもその上司との対立が続いているようだったら、「同じことに1年も悩んでいたのか」と感じ、その状況の改善のために本腰を入れて動くということにもなる。そう考えると、ネガティブな感情も、自分に対して取り繕うことなどなく、そのまま素直に書いておくことが大切です。

いわゆる「5年日記」など、数年分の同じ日付の日記を同じページに書けるものは、このように長期スパンで物事を振り返ることができるという大きなメリットがあります。

医師の長谷川嘉哉先生が語る「日記」の効果03

夜に1日を振り返り、副交感神経優位の生活にする

それから、日記を書くタイミングについても、私の考えをお伝えしておきましょう。日記を書くのは、多くの人が夜になると思いますが、医師の立場からも夜に書くことがおすすめです。というのも、それが自律神経のリズムに合っているから。

人間は、目が覚めて活動的になっているときには、自律神経の交感神経が優位になっています。一方、寝るときにはリラックスして副交感神経が優位にならなければならない。

先に、日記にはネガティブなことも書くべきだと言いましたが、日記を書くことは、基本的には穏やかに1日を振り返ることです。つまり、日記を書く行為自体が心身をリラックスさせて副交感神経を優位にさせるのですから、やはり「これから仕事を頑張るぞ!」という朝にするべきことではないのです。

ちょっと話が脱線するかもしれませんが、みなさんにはもっと副交感神経優位の生活をするよう心がけてほしい。ひとりあたりの仕事量がかつてないほど増えていると言われ、誰もが忙しく働いているいま、多くの人が交感神経優位の生活を送っています。常に活動的で、ゆったりリラックスすることが減っている。こういう生活がさまざまな病気の元凶なのです。心筋梗塞や脳梗塞のほか、がんも交感神経優位の生活が招くものだと私は考えています。

仕事熱心な読者のみなさんには適切な言葉ではないかもしれませんが、営業などハードな仕事をしている人には、「営業成績で全国1位になんてなっちゃいけない」と私は言っています。というのも、外資系保険会社で営業成績1位になるような、バリバリと働いて交感神経優位の生活を送っている人の多くが早くに亡くなるという事実があるからです。

健康で長生きするためにも、副交感神経優位の生活を心がけてほしい。そして、そのためのツールとして、穏やかに1日を振り返る日記を習慣にしてほしいですね

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【プロフィール】
長谷川嘉哉(はせがわ・よしや)
1966年2月14日生まれ、愛知県出身。名古屋市立大学医学部卒業。医学博士、日本神経学会専門医、日本内科学会専門医、日本老年医学会専門医。毎月1000人の認知症患者を診療する日本有数の脳神経内科、認知症の専門医。祖父が認知症であった経験から、2000年に認知症専門外来及び在宅医療のためのクリニックを岐阜県土岐市に開業。これまでに20万人以上の認知症患者を診療した結果、認知症と歯、口腔環境の関連性にいち早く気づき、訪問診療の際に歯科医・歯科衛生士による口腔ケアを導入。さらに、自らのクリニックにも歯科衛生士を常勤させるなどし、認知症の改善、予防を行い、成果を挙げている。「医科歯科連携」の第一人者として各界から注目を集める。『認知症専門医が教える! 脳の老化を止めたければ歯を守りなさい!』(かんき出版)、『一生使える脳 専門医が教える40代からの新健康常識』(PHP研究所)、『親ゆびを刺激すると脳がたちまち若返りだす!』(サンマーク出版)、『公務員はなぜ認知症になりやすいのか』(幻冬舎)、『患者と家族を支える認知症の本 増補版』(学研メディカル秀潤社)、『介護にいくらかかるのか? いざという時、知っておきたい介護保険の知恵』(学研教育出版)など著書多数。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

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