「伝えたはずなのに、なぜか伝わらない…」
そんな経験、ありませんか? ビジネスの世界で、自分の意図を正確に相手に届けることは、想像以上に難しいものです。しかし、一部の人々は、まるで魔法のように、スムーズに意思疎通を図り、会議やプレゼンで聴衆を魅了します。
彼らの秘密は何なのでしょうか?実は、誰でも習得できる具体的なテクニックがあるのです。
本記事では、伝達力を劇的に向上させる3つの方法をご紹介します。これらを実践すれば、あなたのメッセージが相手の心に確実に届くはずです。
さあ、コミュニケーションの達人への第一歩を踏み出しましょう。あなたのキャリアを変える可能性を秘めた、伝達力向上の秘訣とは?
1. 「相手に伝わっているか?」を確認しながら話をする
「しっかり準備して臨んだプレゼン。伝えたいことを的確に話せたはずなのに、なんだか反応がよくない……」
仕事でこんな経験をすると、つい「自分のプレゼン内容がよくなかったのでは」と考えてしまいますよね。しかし実際は、「聞き手の立場に立って、相手が欲しい情報をわかりやすく伝えられていたか?」というコミュニケーションの部分に原因があったのかもしれません。
聞き手の立場に立つことと、相手が欲しい情報をわかりやすく伝えること。どちらもコミュニケーションの基本ですね。しかし、緊張度の高い会議やプレゼンの質疑応答などでは、「成功させなければ」という焦りから、この基本を忘れてしまうこともあるのではないでしょうか。
聞き手の立場に立ち、相手が欲しい情報をわかりやすく伝える具体的な方法として、伝える力【話す・書く】研究所所長の山口拓朗氏は以下の方法を挙げています。
何かを伝えている最中には、相手の表情や姿勢を観察しながら「本当に伝わっているかどうか」を確認する必要があります。もしも、あまり伝わっていない様子であれば、説明の仕方を変えたり、情報を補足したりすることが大切。*1
こちらが話したいことを、一方的に伝えるだけではだめなのです。「自分の話は、いま目の前にいる人たちに伝わっているのだろうか?」と確認しながら、臨機応変に伝え方を変えることが大切です。
たとえばミーティング中。自分が話をしていると、数名の表情が曇ったように見えた……。そんなときは、事前に決めていた流れのまま進行するのではなく、一度話をストップして「何かご不明点はございますか?」と聞きましょう。
質問が出てこなければ、表情が曇っていた数名に直接「○○さんは、ここまでの説明を聞いていかがでしたか?」と問いかけます。
もし「○○という部分がよくわからなくて……」と、具体的な答えを得られたら、そこを補足しながら丁寧に説明し直したり、聞き手に伝わりやすい例え話を入れたりするなど工夫しましょう。
準備したことをひととおり話し、最後に形だけ質疑応答をするというやり方では、なかなか伝わらないもの。話しながら、臨機応変にコミュニケーションをとることで、正確に話を伝えられるのです。
2. 事実と意見を両方伝える
「『その話の根拠は?』とよく聞かれる」「『データはわかったけれど、それを元にあなたは何を伝えたいの?』とよく聞かれる」
このふたつの悩みは、真逆のように見えますよね。しかし、正確に伝えるためには、事実と意見をどちらも伝えることが大切だという視点で見れば、どちらか一方が抜け落ちているという点で共通しています。
事実を伝えることと、意見を伝えること。コミュニケーション論では、どちらかにフォーカスして語られることが多いですが、伝達力を高めるためにはどちらも必要なのです。
グロービス経営大学院教授で思考領域の責任者を務める岡重文氏は、事実と意見が両方大切であることについて、以下のように語っています。
事実のみを伝えると「だから何なんだ?」と意見が求められ、意見のみを伝えると「大元の事実は何なんだ」と事実が求められることになります。したがって、事実と意見どちらか一方のみでよいということではなく、両方を揃えて、伝えるということを意識していくようにしましょう。*2
急に話を振られると、つい意見または事実だけを話してしまう……という方は、日頃から何かを話す前に、自分が言おうとしていることが意見なのか事実なのかを確認するクセをつけておくといいでしょう。
具体的に、仕事の場面を例に挙げて見てみましょう。たとえば、会議で「先月発売した新商品が、若い世代に受けている」という意見を出したいとします。伝わりやすくするためには、この意見のもとになる事実が必要です。ですので、以下のように事実をつけ加えます。
言いたいことも根拠も含まれていて、わかりやすいですね。とっさに意見を言うときも、根拠を入れるようにすると説得力が増し、相手に伝わりやすくなりますよ。
3. 言わないことを決めておく
「うっかり、未確定なことを話してしまった……」
つい口を滑らせてしまったことが、周りの誤解を招くことがあります。特に役職についていると、その発言には重みが加わるもの。
「課長が言ったのだから、この方向で進めていいのだろう」と、チームメンバーが誤解したまま業務を進めてしまった結果、あとから大幅な軌道修正をすることになり、周りから不信感を抱かれてしまう……ということになりかねません。
うっかり誤解を招く発言をしないためには、どのような方法をとればいいのでしょうか。元文化放送アナウンサーで、東京成徳大学経営学部客員教授である梶原しげる氏は、以下のルールを提案しています。
「言うべき範囲を十分に整理する」だ。言い換えれば、「言わないことを決める」。この手順を怠ると、余計なことをしゃべりすぎたり、逆に情報を封じ込めすぎたりしかねない。過不足のない発信は難しいからこそ、あらかじめ「ここまでは話す、この先は黙る」という線引きが重要になってくる。*3
この情報は伝えるが、この情報はまだ言わない。この取捨選択が、伝達力を上げるために重要なのですね。
仕事の場面に当てはめて見てみましょう。マネージャーから「A案はコストの面で、役員が渋っているらしいから、多分ボツになる」という話を共有されたとします。
そのA案に関わっている部下がチームにいるとして、その話をそのまま伝えるのはNG。なぜなら、裏が取れていない情報だからです。「あの人が言っていたから大丈夫」ではなく、その情報の信憑性を自分で確かめるようにしましょう。
確実な情報でなくても、業務上、話したほうがいいと判断したなら、伝える選択肢もありです。重要なのは、情報の正確度合いを把握したうえで、誰にどこまで伝えるべきか、自分で線引きすることなのですね。
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伝え方を工夫すれば、もっと自分の意見を多くの人に届けられるようになりますよ。本記事で紹介した方法を、参考にしてみてくださいね。
*1 リクナビNEXTジャーナル|「相手に伝わらない」をなくす!伝達力を上げる「5つの大原則」と「3つのテンプレート」【あてはめるだけ】
*2 東洋経済オンライン|「言いたいことが伝わらない人」と伝わる人の差
*3 NIKKEIリスキリング|誤解を避ける話し方のコツ 7つのルールでリスク回避
柴田香織
大学では心理学を専攻。常に独学で新しいことの学習にチャレンジしており、現在はIllustratorや中国語を勉強中。効率的な勉強法やノート術を日々実践しており、実際に高校3年分の日本史・世界史・地理の学び直しを1年間で完了した。自分で試して検証する実践報告記事が得意。