1分間に34秒。日本人は笑顔が少ない? 他者との会話を盛り上げる表情筋の鍛え方

笑顔でコミュニケーションをとっているイメージ

仕事、プライベートといったさまざまな場面で周囲と良好な関係を築くには、なにが必要でしょうか。コミュニケーション能力、共感力、礼儀、誠実さなど要素はたくさんありそうですが、よりよい自己表現を研究するパフォーマンス学の第一人者であるハリウッド大学院大学特任教授の佐藤綾子先生は、心理学的見地から「笑顔」を重視します。周囲に好印象を与えられる笑顔をつくるための、とっておきの方法を教えてもらいました。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人

【プロフィール】
佐藤綾子(さとう・あやこ)
1947年1月20日生まれ、長野県出身。1969年、信州大学教育学部卒業。ニューヨーク大学大学院パフォーマンス研究科卒業(MA)、上智大学文学研究科卒業(MA)、同博士課程修了。立正大学大学院心理学専攻、博士(パフォーマンス学・心理学)。日本大学芸術学部教授を経て、ハリウッド大学院大学特任教授、一般社団法人パフォーマンス教育協会理事長、株式会社国際パフォーマンス研究所代表。自己表現力養成セミナー「佐藤綾子のパフォーマンス学講座®」主宰。パフォーマンス学の第一人者として、累計4万人のビジネスリーダーや国会議員のスピーチ指導を行なう。『55歳から「実りの人生」』(サンマーク出版)、『できる人・好かれる人になる「見た目」と「話し方」のコツ34』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『人生がうまくいく笑顔の教科書』(ごきげんビジネス出版)、『1秒オーラ 好意はなぜ発生するのか』(集英社)、『10秒で好かれるひとこと 嫌われるひとこと』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『成功はPQで決まる』(学研プラス)など著書多数。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

「笑顔」が会話の盛り上がりを左右する

他者と話しているとき、会話が弾むこともあれば、話すのをやめたくなってしまうこともありますよね。そのように会話の盛り上がりを左右するものは、「レギュレーターズ(言語調整動作)」と呼ばれます。

レギュレーターズにもいろいろあり、たとえば「言葉」そのものもそのひとつです。相手の話を聞きながら「それでどうなったの?」と促せば相手は喜んで話を続けますし、「それよりさ」と話を遮れば相手は黙ってしまうでしょう。

そして、重要なレギュレーターズのひとつに、「表情」があります。わざわざ解説するまでもありませんが、会話を弾ませる表情は「笑顔」であり、周囲と良好な人間関係を築くための大切な要素のひとつでもあります。

しかし残念ながら、日本人は外国人と比べて笑顔が極端に少ない傾向にあります。これは、表情筋の動きを調べる研究により判明しました。表情筋とひとことで言っても、数多くの筋肉によって構成されています。そのうち、笑顔に大きく関わるのは、目のまわりの眼輪筋、口のまわりの口輪筋、口角をこめかみの方向に引き上げる役割をもつ大頬骨筋や小頬骨筋という筋肉です。笑顔をつくることから、それらを総称して「笑筋」とも言います。

そして、他者とごく普通の会話をしているときに笑筋が動いている時間を調べてみると、日本人の場合は1分間のうち平均34秒でした。ところが、たとえばイタリア人の場合はなんと56秒です。日本人は明らかに笑顔が少ないのです。

「笑顔」が会話の盛り上がりを左右すると語る佐藤綾子先生

表情筋を柔軟にし、豊かな表情を生み出す「かめあす体操」

そこで紹介したいのが、私が提唱している「かめあす体操」です。順に解説していきますが、「顔」「目」「あいうべるる」「スマイル」の頭文字をとってそう呼んでいます。この体操で表情筋が柔軟になり、周囲に好印象を与える笑顔をつくれるようになります。

まずは、「か」の「顔」からいきましょう。これは、表情筋全体のトレーニングです。顔全体を普段の顔の輪郭より外に広げるようなイメージで、目と口を大きく開きます。そこで1秒停止したら、今度は逆に顔の中心に向かって顔全体をギュッと縮めるイメージで強く目を閉じて口をすぼめ、また1秒停止します。これを5回以上繰り返しましょう。

続いては、「め」の「目」の体操です。目のまわりの眼輪筋と同時に、眼球自体を動かす筋肉も鍛えます。以下の1〜5を、それぞれ5回以上繰り返してください。

  1. 顔の前に水平に差し出した人差し指を見ます。顔を正面に向けたまま眼球だけを動かして見える最大範囲まで人差し指をゆっくりと上下に動かします
  2. 顔の前に立てた親指を見ます。顔を正面に向けたまま眼球だけを動かして見える最大範囲まで親指を素早く左右に動かします。左右両方の指を交互に使って行ないます
  3. 片方の人差し指であごを押さえ、顔の前に立てたもう片方の手の親指を見ます。顔を正面に向けたまま眼球だけを動かして見える最大範囲まで親指をゆっくり左右に動かします。左右両方の指を交互に使って行ないます
  4. 顔の前に立てた親指を見たまま、首を左右にゆっくりと振ります
  5. 顔を正面に向けたまま、目を右まわり、左まわりと交互に1回転させます

表情筋を柔軟にし、豊かな表情を生み出す「かめあす体操」について語る佐藤綾子先生

地道なトレーニングが、周囲に好印象を与える笑顔をつくる

続いては、「あいうべるる」です。なんのことだかわからないと思いますが、これは「あいうべるる」と声を出しながら口輪筋と舌の筋肉を鍛えるトレーニングです。

  1. 大きく口を開けて「あー」と言います。
  2. 口を横に思いきり引っ張りながら「いー」と言います。
  3. 大げさなほど口をとがらせながら「うー」と言います。
  4. 舌を前下方に突き出しながら「べー」と言います。
  5. 残りのふたつの「る」は、それぞれ「l」と「r」の発音です。最初の「る」は「l」。舌先を上あごの裏につける日本語の「る」の発音で「るー」と言います。次の「る」は日本語にはない「r」の発音です。舌先を上向きに巻くように曲げ、上あごの裏にはつけずに「るー」と言います。

1〜5を5回以上繰り返しましょう。

最後の体操は、「スマイル」です。その名のとおり、笑顔をつくることに直結するトレーニングです。

  1. 上下の唇の境界線であるリップラインを水平にします。
  2. リップラインを水平のまま右の口角を右に思いきり引っ張り、続いて左の口角を左に引っ張ります。
  3. 右の口角を右上方に引き上げ、続いて左の口角を左上方に引き上げます。
  4. 左右両方の口角を下げ、いわゆる「への字口」にします。
  5. 最後は思いきり口を開けて左右両方の口角を上げ、ビッグスマイルをつくります。

1〜5を5回以上繰り返しましょう。

普段から表情筋を使っていない人が、いきなり相手に笑顔をつくることはできません。でも、表情筋だって腕や脚の筋肉同様に自分の意思で動かせる随意筋ですから、使えば使うほど鍛えられて上手に使えるようになります。地道に「かめあす体操」に取り組めば、周囲と良好な関係を築くための笑顔を手に入れられるでしょう。

また、楽しい感情が先にあって、その感情に引っ張られるかたちで、表情筋が自然に動くのを「本物の笑顔」だと考えている人にしたら、セールスなどのつくり笑顔は「偽物の笑顔」という認識になってしまうかもしれません。

そこで、自分のものの見方、考え方を切り替えてみましょう。「楽しいことがないのに笑えるわけがないじゃないか」という気持ちを「クライアントと出会えて嬉しい」「なにかビジネスチャンスが生まれるかもしれない」と考えて、ポジティブな気持ちに切り替えるのです。

すると自然に笑顔が出てくるはず。これは心理学で認知行動療法と呼ばれています。考え方を切り替えて、すてきな笑顔を出していきましょう。

他者との会話を盛り上げる表情筋の鍛え方を教えてくださった佐藤綾子先生

【佐藤綾子先生 ほかのインタビュー記事はこちら】
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できる大人の「見た目」と「話し方」

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