"教養なんて役に立たない"は大間違い!  ビジネスリーダーが明かす成功の秘訣

図書館で本を手に取るジージャン姿の男性

「教養なんて、仕事には役立たないよ」 「今の仕事に必要な勉強は十分やっているから、これ以上の学びは必要ない」

こんな声を耳にしたことはありませんか?  しかし、本当にそうでしょうか?  実は、第一線で活躍するビジネスリーダーたちは、教養の重要性を強く主張しています。彼らによれば、教養とは単なる知識の集積ではなく、創造的な応用力を導く智力であり、社会で生きていくための基盤なのだそうです。

では、なぜ教養が仕事の現場でこれほど重要視されているのでしょうか?

本記事では、仕事をしていく上で必要不可欠な教養について、具体的な例を交えながら解説していきます。教養が持つ意外な力、そしてそれがビジネスにもたらす影響を知れば、あなたの仕事観が大きく変わるかもしれません。

教養を軽視できないワケ

「仕事ですぐに使える具体的な知識やスキルのほうが必要だ」
「教養は自己啓発に興味がある人が趣味の一環として学ぶものだ」

このように思っていませんか? しかし、第一線で活躍するエリートたちは、口をそろえて教養の必要性を説くようです。そのわけを、3つの視点から紹介していきます。

教養は“先を見据える力”を培うために必要

先を見据えて仕事をする重要性は、誰もが一度は痛感した経験があるでしょう。じつはこの“先を見据える力”は教養によって培われるそうなのです。

途上国向けにマイクロファイナンスを展開する五常・アンド・カンパニー株式会社の創業者で代表執行役の慎泰俊氏は以下のように話します。

教養がないと、日々の動きについていくことはできても、この先社会が進む方向についての骨太な議論はできない(中略)世の中の出来事には必ず基盤となるものが存在し、それを理解して初めて、先のことが読み通せる。そして、基盤の理解を助けるのが「教養」に他ならない。*1

たとえば、新しいサービスを展開するときに流行にばかり依存していては、流行が終わるたびに打撃を受けてしまいます。一方で、流行に左右されないサービスを展開できれば、長期的に利益を安定して得ることができます。
市場の動向や消費者の行動における教養があれば、長期的な利益を得るための正しい判断ができるはずです。

また、立命館アジア太平洋大学学長特命補佐の出口治明氏によれば「リーダーの役割は進むべき方向性をメンバーに示すことだが、日々の情報に右往左往せず、余裕を持って意思決定を行うためには、判断の根拠となる教養が不可欠」なのだそう。(カギカッコ内引用元:同上

私たちは日々あらゆる情報にアクセスできますが、それらの情報を正しく解釈し、未来を見据えた判断をする必要があります。そのための基盤となるのが教養なのです。

会議をしながら真剣に考えるビジネスパーソン

教養は“専門的なスキル”を活かすために必要

社会人は自分の専門分野に限らずさまざまな知識を求められることがあります。
“これさえ学んでおけばいい”というものはなく、あらゆる側面から学び続ける必要があるのです。それが“教養”の本質なのではないでしょうか。

『視点という教養』著者の野村高文氏は以下のように述べています。

多くの大学では、学生は文系・理系に分けられ、専門分野に特化した研究を行う。しかし実社会では、ほとんどのトピックが学問横断的な性格を持ち、一つのジャンルに特化した知識ばかり溜め込んでいても、使えるシーンが少なくなっている。*1

これは筆者にも経験があります。新卒で入社したIT企業であらゆる業界のシステム開発に関わるなかで、その業界に関する知識の必要性を感じたのです。
その業界に関する知識がなければ仕様書を正しく読み解けませんし、間違いにも気づけません。これまで学んできた専門知識はもちろん大切ですが、それを最大限に活かすためにも教養は必要不可欠なのです。

一台のノートパソコンを複数人で覗き込んでいる

教養は“信頼関係”を築いていくために必要

信頼関係を築くうえでも、教養は重要なのだそう。

「人間どうしの信頼関係というのは、その人のスキルやお互いの損得だけで成立するわけではなく、やはり教養という人間の軸が問われる部分が大きい」と話すのは、上智大学長の曄道佳明学長。*2

今後、さまざまな国の人と仕事をする機会も増えてくるでしょう。そうしたときに、それぞれの文化や歴史などを知らないままでは信頼関係を築けません。

たとえば、“こっちにおいで”の意味合いで手招きをしたのに、相手の国では“あっちに行け”と追い払うときにする仕草だったらどうでしょうか。些細なことかもしれませんが、相手の文化に対する教養があれば、こういったすれ違いを防ぐことができます。

それだけでなく、仕事の付き合いでお互いをよく知らないまま会話しなければいけない場面でも教養の必要性を感じるはずです。
歴史・文化・音楽・芸術などの教養があれば、コミュニケーションをするうえで役立つかもしれないからです。
たとえば、相手の出身地のご当地ネタや歴史など、あらゆる角度から会話の糸口を探し出せますよね。
曄道氏は、「教養とはけっして若い時期に座学として学ぶだけのものではなく、社会に出てからも様々な経験を通して継続的に深めていくべきもの」だと言います。*2

では、教養はどのように身につけていけばいいのでしょうか。筆者が3つの方法を提案いたしましょう。

本で教養を深める

教養を深めるといっても、なにから手をつければいいのか悩ましく思う人も多いでしょう。そのような場合にとっかかりとして筆者がおすすめしたいのが、こちらの本です。

1日1ページ、読むだけで身につく世界の教養365

デイヴィッド・S・キダー (著), ノア・D・オッペンハイム (著), 小林朋則 (翻訳),2018年,文響社

歴史・文学・視覚芸術・科学・音楽・哲学・宗教を1日1ページ読み、1週間で各分野の教養に触れられる構成になっています。1ページなのでわずかな時間で読めて手軽ですし、自分がどの分野に興味をもてるのかを知るきっかけにもなります。

筆者の場合、歴史・視覚芸術・科学の分野を面白いと感じ、それがきっかけで歴史の本を読んだり、歴史の展示会に足を運んだりして、知識が増えていくのを楽しんでいます。

教養を深める足がかりとして、上記のような本を活用してみるのはいかがでしょうか。

棚から本を取る人の手元

アートで教養を深める

教養を深めるためには、自分自身で“感じる”ことも大切です。
筆者自身も、写真で見るよりも実際に見たほうが臨場感からくる感動を得て、その感動が新たな知的欲求を刺激した経験があります。

キュレーターで金沢21世紀美術館第4代目館長の長谷川祐子氏は「気候変動や地球環境がテーマ」の展覧会で、「五感で体験していく中で、地球環境について"私の問題だ" と実感できた」という感想をもったそうです。これについて長谷川氏は、「ニュースなどで見聞きするのとは明らかに違う。これこそが、アートの"チカラ"だと思」うと話します。*3

五感で感じることによって腑に落ちたり、次なる学びにつながったりするのです。

美術館で展示品を眺める人

ちなみに筆者は先日、“巨大恐竜展”に行きました。日本では福井県で恐竜の遺跡が多く発見されていると知り、いつか旅行で福井県にも行ってみたいと興味が湧きました。

旅を通して教養を深める

学びを五感で体験する重要性を先に述べましたが、美術館などのほかにも“旅行”という方法もあります。

明治大学文学部教授の齋藤孝氏は、「興味を持った歴史上の人物や出来事があれば、旅行気分でその史跡に足を運んでみるとまた違った学びがある」と言います。*4

旅行会社によっては、歴史講師が同行してくれる史跡巡りツアーもあるようなので、ツアーを活用するのもいいかもしれません。

しかし、さまざまな事情から旅行するのが難しい人もいると思います。そういった場合は、オンラインツアーを活用してみるのはいかがでしょうか。

筆者がいま気になっているオンラインツアーがふたつあるので、ご紹介します。

教養を深めるためにはもちろん、旅の予習・復習に活用してもよさそうですね。

デスクに広げられた世界地図や方位磁石

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教養の重要性と、その深め方をご紹介しました。本記事があなたの教養を深めるきっかけになりましたら嬉しいです。

(参考)

*1 NewsPicks|「なぜリーダーには「教養」が必要なのか
*2 東洋経済オンライン|リーダーに「教養」を求める企業が急増する背景
デイヴィッド・S・キダー (著), ノア・D・オッペンハイム (著), 小林朋則 (翻訳),2018年,文響社| 『1日1ページ、読むだけで身につく世界の教養365』
*3 TOKYO UPDATES(トーキョー・アップデーツ)| 「アートを見る」とは、自分を見ること
*4 ダイヤモンド・オンライン|「頭のいい人」になれる意外なイチオシ本とは?教育学者・齋藤孝さんが伝授
ANAビジネスソリューション株式会社|ANA教養講座 
HIS|空飛ぶ予備校講師による旅を楽しむ教養・世界各国史シリーズ

【ライタープロフィール】
澤田みのり

大学では数学を専攻。卒業後はSEとしてIT企業に勤務した。仕事のパフォーマンスアップに不可欠な身体の整え方に関心が高く、働きながらピラティスの国際資格と国際中医師の資格を取得。日々勉強を継続しており、勉強効率を上げるため、脳科学や記憶術についても積極的に学習中。

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    「STUDY SMART」をコンセプトに、学びをもっと合理的でクールなものにできるよう活動する教育ベンチャー。当サイトをはじめ、英語のパーソナルトレーニング「ENGLISH COMPANY」や、英語の自習型コーチングサービス「STRAIL」を運営。
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