「勉強をしているのに、成果が出ない……」
「こんなに頑張っても覚えられないのは、そもそも頭が悪いせいなのかも」
努力に見合ったリターンがないと、自信がなくなったり、モチベーションが下がったりしてしまうもの。しかし、落ち込む必要はありません。勉強がうまくいかないときに無意識にしてしまっている“○○なフリ”が明確になれば、状況を改善していけます。
本記事では、勉強ができる人はしない3つの“フリ”とその対策を紹介していきます。ご自身にも当てはまらないか振り返りながら、参考にしてみてくださいね。
1. 理解したフリはNG
「参考書やテキストをひととおり読んで理解したと思っていたのに、問題が解けない」
「重要事項を暗記したはずなのに、思い出せない」
そのような人は、“理解したフリ”をしてしまっているのかもしれません。そんな“フリ”を防ぐにはどうすればいいのでしょうか。
勉強法の専門家である宇都出雅巳氏いわく、「自分自身が置かれている現実に向き合うことを恐れ」ずに「目指す結果と現在地を明確にする」のが大切なのだそう。*1
たとえば“資格試験合格”を目標にした場合には、まず「過去問」を解くことで「目指す結果」が明確になると同氏は話します。「試験本番当日に合格点を超える答案を出す」ことが「目指す結果」なわけです。(カギカッコ内引用元:同上)
過去問で合格点すら取れないのに、試験当日に結果を出せるとは考えづらいですものね。
このときに、過去問でどのくらい点数を取れるのか、現在の実力を明確にするのも大切です。どこまで理解できていてどこから理解できていないのか不明確なままでは、なにをどのように勉強していけばいいのか行き詰まってしまいます。
また、現在の実力は「『思い出す』『語る』ことで明確にな」るとも同氏は言います。(カギカッコ内引用元:同上)テキストに目を通してわかったような気がしても、あとになって振り返ると内容を思い出せなかった経験はありませんか? 勉強したことを思い出せなければ、理解できたとは言えません。一度解いた過去問の内容をどこまで思い出せて、どこから思い出せないのかーーそれを明確にすることであなたの現在地も明確になるのです。
ここまでは資格試験についての話をしましたが、勉強と言っても資格試験がすべてではありませんよね。資格試験以外の勉強をしている人も、ご自身の目標に合わせて目指す結果や現在地を明確にすることが大切です。
たとえば、目指す結果が“字幕なしで洋画を楽しめるリスニング力を身につける”ことだとしたら、字幕なしで一度洋画を観てみましょう。そして観終わったら、洋画の内容を思い出してみてください。内容をまったく思い出せないようなら初心者向けのリスニング教材から勉強を始めてリスニング力を上げなければいけないし、スラングがわからなかっただけであれば検索して意味を調べるのみでいいのです。
わかったつもりや覚えたつもりを防ぐためには、いま学んだ内容を思い出してみたり、人に説明してみたりすることが大切です。もし、思い出せなかったり言葉がうまく出てこなかったりしてもあまり落ち込まずに、「いまのうちに理解できていないところが明確になってよかった」と前向きな気持ちで学びを深めていけるといいですね。
2. 書いて覚えたフリはNG
「時間をかけてノートにまとめたのに、勉強した内容を思い出せない」
このようにお悩みの人は、書いただけで満足してしまい“覚えたフリ”になっているのかもしれません。「書く、読む、見るという作業はあくまで補助的な作業であって、中心的な作業ではな」く、「覚えるとは『自分で繰り返しテストすること』」だと話すのは、教育評論家で都留文科大学国際教育学科の特任教授を務めた石田勝紀氏。
同氏は、「書いて覚えるという手段にとらわれず、繰り返し自分でテストをして覚える」ようにすすめています。覚えようとノートまとめを頑張るよりも、「自分でテストをする過程で、インプットしていく」ことが大切なのです。*2
じつは筆者にも、書くことにばかりとらわれて結果が出なかった経験があります。理解して覚えるためにテキストの内容をノートにまとめることにしたのですが、結局はテキストを写しただけのようなノートになってしまいました。「こんなに書いたのだから、覚えているはず」と思いきや、演習問題をまったく解けなかったのです。
この経験から、ノートにまとめるよりも演習問題を繰り返し解くことを自分なりのテストとして重点的に行ない、ノートには間違えたところやわからない用語をまとめたりする程度にして勉強を進めました。その結果、模擬試験でいい成績を取ることができ、資格取得も達成。石田氏の言うように、繰り返しテストをしたことでしっかりと覚えられたのだと思います。
勉強と言っても、読書を通しての勉強などには演習問題がない場合もあるでしょう。そのようなときは、自分で問題をつくってみるのもいいかもしれないですよ。
3. 勉強しているフリはNG
「たくさんの時間を勉強に費やしているのに、結果がともなわない」とお悩みならば、以下を振り返ってみましょう。
- 解けない問題を前にして悩んでいるうちに、時間ばかりが過ぎていた
- わからないところを検索して調べていたはずなのに、勉強に関係ないサイトを見ていた
- 勉強の進捗よりも、経過した時間をみて安心してしまっている
もしひとつでも思い当たる節があるのなら、“勉強しているフリ”の可能性があります。長時間勉強しても結果が出ないのは、「本当の意味での勉強時間が少ないから」だと指摘するのは、現役東大生で教育事業などを手がける株式会社カルペ・ディエム代表の西岡壱誠氏。「机に向かっている時間」ではなく、「自分の本気になって努力した時間」が成果を上げるうえで大切だと主張しています。*3
そこでまずは、自分が集中して勉強している時間がどのくらいなのか計ってみるといいでしょう。状況を改善するには、現状を正しく把握する必要があるからです。同氏はストップウォッチを使った勉強をすすめています。やり方は以下のとおり。
▼ストップウォッチを進めるタイミング
- 机の前で勉強に集中しているとき
- 電車の中で勉強に集中しているとき
- 誰かを待っている間に勉強に集中しているとき
など
▼ストップウォッチを止めるタイミング
- SNSの通知を確認するなど、勉強に関係のないことをするとき
- 誰かに話しかけられたとき
- 休憩をするとき
- ほかのことを考えてしまって勉強が進まないとき
など *3
このようにして、集中して勉強している時間、つまり「本当の意味での勉強時間」を「可視化」するのです。*3
可視化できたら、その時間を少しでも伸ばせるように工夫してみましょう。工夫と言っても、“時間を増やす”より“無駄な時間を減らす”ようにしたほうが、無理なく取り組めるように思います。
- スマートフォンをいじる時間が長いのなら、スマートフォンは別の部屋に置く
- つい休憩が長引いてしまうなら、決めた時間内で休憩をとるようにタイマーを使う
- 考え事で勉強が進まないのなら、ジャーナリングなどを活用して気持ちを整理してから勉強に取り組む
このように工夫をすれば、限られた時間のなかで効率的に勉強する習慣も身につきそうですね。
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「努力に見合った成果が出ない」とお悩みならば、本記事で紹介した3つの“フリ”をしてしまっていないか、振り返ってみましょう。勉強の成果を挙げるために、ぜひ参考にしてみてくださいね。
※引用部分の太字は編集部が施した
*1 STUDY HACKER|勉強しても報われないのは○○しているせい。「報われる勉強」のために最も大切なこと
*2 東洋経済オンライン|「1日10時間勉強してもダメな子」の本質的理由
*3 プレジデントオンライン|バカほど「何時間勉強すれば東大に入れますか」と聞く…「勉強しても成績が上がらない」と悩む人の根本的誤解
澤田みのり
大学では数学を専攻。卒業後はSEとしてIT企業に勤務した。仕事のパフォーマンスアップに不可欠な身体の整え方に関心が高く、働きながらピラティスの国際資格と国際中医師の資格を取得。日々勉強を継続しており、勉強効率を上げるため、脳科学や記憶術についても積極的に学習中。