“効率” を大切にしているあなたが、仕事で成功するためにもっと楽しんでみるとよい2つのこと。

「無駄」や「寄り道」を楽しむ女性

多忙な毎日を過ごすなか、「いまの仕事で必要なスキルだけを効率よく身につけたい」「無駄のない勉強をしたい」……と思っていませんか? たしかに効率も大切。ですが、先行き不透明な時代において、効率化にこだわりすぎるのは危ういことかもしれません。

今回は、いいキャリアを築きたい人に向けて、「無駄」や「寄り道」のメリットと楽しみ方をご紹介します。

「無駄」や「寄り道」を排除するリスク

『キャリアをつくる独学力ープロフェッショナル人材として生き抜くための50のヒント』の著者である高橋俊介氏によれば、「『効率性』を求めるほど、結果的に、自分のキャリアは限定的で、狭い範囲のものになりがち」なのだそう。

効率重視の姿勢について、高橋氏はこう指摘します。

「無駄なく効率的に」という合理性は、物事がシナリオ通り進んだ場合のみ当てはまるのです。逆に、特定の状況に過剰適応した計画は、変化に最も脆弱とも言えます。

(カギカッコ内・枠内引用元:東洋経済オンライン|「無駄なこと」「寄り道する」人が仕事も成功する訳

変化の激しい現代では、特定の分野の需要が急激に高まる場合があります。近年AI技術が急速に進歩しているように、新たな技術が台頭すればそれに関連する知識やスキルが求められるようになるのは当然のこと。

また、職場が経営方針や事業戦略を変更した場合、業務内容が変化することもありますよね。たとえば、新たな市場への参入や、事業領域の再編成によって、これまで必要とされていたスキルや専門知識が求められなくなる……なんてこともありえます。

高橋氏いわく「人生やキャリアは(中略)『想定外の事態』の連続」。いま必要なことだけやっておこう、と目の前の効率ばかり重視していたら、いざ変化が生じたときに対応できなくなります。そこで高橋氏がすすめるのが、「『無駄なこと』『寄り道』をしながら、『普遍性が高く、主体的な学び』を続け」ること。(カギカッコ内引用元:同上)

自分のキャリアを狭めないためには、効率を重視して特定の分野の勉強しかしなかったり、いまの自分の仕事に関連する勉強以外は時間の無駄だからと切り捨てたり……というように学びから「無駄」や「寄り道」を排除してしまうことは、避けたほうがよいのです。

キャリアを積んでいる女性

講座に参加して「無駄」や「寄り道」を楽しもう

日常のなかに簡単に「無駄」や「寄り道」を組み込むことができ、「人との交流」による副産物も得られる方法が、興味・関心をもっている分野の講座に参加することです。

精神科医の小山文彦氏は「同じ趣味を持つコミュニティなどに参加」する利点として、

  • 「同じ興味や関心を持つ人たちとのコミュニケーションで楽しみが増え」るほか、「親密性と共感が生まれ」る
  • 「人とのつながりに支えられて、心のゆとりができ」る

という点を挙げています。(カギカッコ内引用元:リクナビNEXTジャーナル|レジリエンスってなに?レジリエンスを高める方法とは?

たしかに、同じ講座を選んだ同志たちとの出会いは励みになるでしょう。普段仕事で接点のない人々との交流を通じて、人脈を広げることもできますよね。さまざまなバックグラウンドの人と接することで、知識や視野も広がりそうです。心にゆとりができれば、仕事のモチベーションにもいい影響があるのではないでしょうか。

法人向け支出管理サービスなどを手がけるクラウドキャスト株式会社、代表取締役CEOの星川高志氏は、「寄り道」が転機になったと語る成功者のひとりです。マイクロソフトの社員だった頃に夜間MBAスクールに通った星川氏は、「今まで縁のなかった人たちとの議論や対話は、学びにあふれ」ていたと語ります。(カギカッコ内引用元:日刊ゲンダイDIGITAL|クラウドキャスト 星川高志社長<2>実りある“2度の寄り道”

「修士の過程で出会った起業家精神を持った方々に、たくさんの刺激を受け」た――そんな経験をふまえて、星川氏は独立したのだとか。(カギカッコ内引用元:スモビバ!|スマホ・ICアプリカード入力で先行する経費精算アプリ「Staple」にかける思い――クラウドキャスト株式会社代表取締役・星川高志さん

誰かと一緒に「無駄」や「寄り道」を楽しみ、実りのある人間関係を築くことができるという点が、講座に参加することの大きなメリット。同志との出会いによって仕事や勉強へのモチベーションが高まったり、キャリアが大きく変わったりする可能性もあるかもしれませんね。

興味のある講座に参加しているビジネスパーソン

アートに触れて「無駄」や「寄り道」を楽しもう

講座に参加するほどの時間の余裕はない……という方には、自宅でも手軽にできる美術鑑賞がおすすめです。いま、世界のエリートたちが、美術鑑賞法「ヴィジュアル・シンキング・ストラテジーズ(以下VTS)」を実践しているのをご存じですか? 

『なぜ、世界のエリートはどんなに忙しくても美術館に行くのか?』(SBクリエイティブ)の著者である岡崎大輔氏によると、VTSとは元・ニューヨーク近代美術館(MoMA)教育部部長のフィリップ・ヤノウィン氏らが開発した、対話型の美術鑑賞法

VTSの実践には「観察力、批判的思考力、言語能力」などの「複合的な能力」を伸ばす効果があると岡崎氏(カギカッコ内引用元:ZUU online|世界のエリートが実践している「美術鑑賞法」メソッドとは)。これらの力は職業の垣根を越えて必要とされるスキルですよね。VTSはまさしく、変化の激しい現代に必要な “普遍性の高い学び” だと言えるでしょう。

そんなVTSには、次のような特徴があります。

  • 「鑑賞中に、作品名や作者名、解説文という、いわゆるキャプションに載っている情報を用いない」
  • 「1つの作品あたりおおむね10分以上、純粋に作品を見ることだけに費や」す
(カギカッコ内引用元:同上)

「対話型」とありますが、誰かと実践するのに限らず、もうひとりの自分と対話するようなイメージでひとりで実践することも可能だそう。たとえば、以下のようなウェブサイトを利用すれば、自宅でひとりでもVTSを実践しやすいでしょう。

  • The Metropolitan Museum of Art.:メトロポリタン美術館(アメリカ)。40万点もの作品の高精細画像を無料でダウンロード可。
  • Google Arts & Culture:世界各国の美術館などの収蔵作品が閲覧可能なGoogleのサービス。

筆者は、メトロポリタン美術館のウェブサイトで絵画を1点選び、VTSを実践してみました。

10分間以上つぶさに絵画を観察していると、次第に絵の細部が大きく鮮明に見えてきます。筆者は、登場人物の男性のファッションが、女性たちよりも明るくおしゃれでかわいいことが気になりました。当時の流行なのか、作者の趣味なのか、男性を目立たせる効果を狙ったものなのか……? さまざまな考えが頭の中を駆け巡りました。ちなみに筆者が鑑賞していたのは、ジョルジュ・ド・ラ・トゥール作の「女占い師」という絵画でした。

アートなんて自分にとっては不要なものだ――などと思うのはもったいないかもしれません。あなたもアートに触れて、普遍性の高い学びを得てみませんか。

美術鑑賞を通じてアイデアが生まれている様子

「無駄」や「寄り道」で学んだことはアウトプットしよう

「無駄」や「寄り道」をするなかで新しくスキルを身につけた際には、ぜひアウトプットしてみましょう。

リーダー育成の専門家・岡島悦子氏は、「アウトプットなくして身に着くことなどない」と話します(カギカッコ内引用元:wisdom|経営のプロ岡島悦子の警笛。「運が悪い」とぼやく暇があるなら打席に立て )。いくら「寄り道」して多様なことを勉強しても、それがインプットばかりになっていて実践がともなわなければ、あまり意味がないのですね。

アウトプットの機会をつかむ方法として、岡島氏は「自分に#タグを付ける意識で情報発信していくこと」ことをすすめています(カギカッコ内引用元:同上)。“私はこんな分野を学んでいる”、“私の興味関心はこの分野にある” といったことを、小まめに周囲に伝えるのです。そうすることで、学んだことを実践できる場を自ら引き寄せることにつながるのだそう。

たとえば、中国語を学んでいるのであれば、周囲に積極的に「中国語を勉強している」「中国語検定○級を取得した」などと伝えてみましょう。社内での会話で話題にしたり、SNSに投稿したりと、やりやすい方法で情報発信してみてください。そうするうち、あなたには「中国語」というタグがつきます。そして「中国人ゲストの接待は、あの人に任せよう」と思ってもらえれば大成功。「寄り道」しながら学んだことを実践できる場を、積極的に引き寄せていきましょう。

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よかれと思って効率を重視したのに、結果的に自分を苦しめることになってしまった――そんな事態は避けたいもの。この機会に、忙しい毎日のなかでこれまでつい排除してしまっていた「無駄」や「寄り道」と向き合ってみませんか?

(参考)
東洋経済オンライン|「無駄なこと」「寄り道する」人が仕事も成功する訳
東洋経済オンライン|「効率ばかり言う人」が結局、成功しない3大理由
リクナビNEXTジャーナル|レジリエンスってなに?レジリエンスを高める方法とは?
日刊ゲンダイDIGITAL|クラウドキャスト 星川高志社長<2>実りある“2度の寄り道”
スモビバ!|スマホ・ICアプリカード入力で先行する経費精算アプリ「Staple」にかける思い――クラウドキャスト株式会社代表取締役・星川高志さん
岡崎大輔(2018),『なぜ、世界のエリートはどんなに忙しくても美術館に行くのか?』, SBクリエイティブ.
ZUU online|世界のエリートが実践している「美術鑑賞法」メソッドとは
The Metropolitan Museum of Art
Google Arts & Culture
ダ・ヴィンチWeb|MoMAで開発された対話型アート鑑賞法とは? 話題の芸術鑑賞でビジネススキルもアップ!
HRカンファレンス|「独学」のススメ~組織人にとっての主体的学びの意味と組織による支援のあり方~
wisdom|経営のプロ岡島悦子の警笛。「運が悪い」とぼやく暇があるなら打席に立て 

【ライタープロフィール】
上川万葉
法学部を卒業後、大学院でヨーロッパ近現代史を研究。ドイツ語・チェコ語の学習経験がある。司書と学芸員の資格をもち、大学図書館で10年以上勤務した。特にリサーチや書籍紹介を得意としており、勉強法や働き方にまつわる記事を多く執筆している。

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