「カフェ勉」vs「家勉」――効率がいいのは結局どっちなのか?

「カフェ勉」「家勉」効率がいいのはどっちか?01

「カフェ勉」という言葉があるように、カフェで勉強することはかなり一般的になりましたよね。一方で、子ども時代の習慣から「勉強は家で」という人も多いことでしょう。

「カフェ勉」「家勉」どちらが捗るかは個々人の特性によって違ってくるため、絶対的に「こっちのほうがいい!」と言うことはできないでしょう。しかし、研究などをとおして客観的に明らかにされた事実から、「こんな勉強をするときにはこっちのほうが捗る!」という考察するのは可能です。

勉強場所に迷った際は、この記事の内容をぜひ参考にしてみてください。

「カフェ勉」のメリット

まず、カフェ勉のメリットとして「“カフェに行く” ことをきっかけに勉強を始められる」ことが挙げられるでしょう。

東京大学の池谷裕二教授は、「やる気」と「行動」の関係について、一般的に考えられているのとは逆に「行動することで初めてやる気が生まれる」という順序であることを指摘しています。これは、モチベーションを司る脳の「淡蒼球」と呼ばれる部位のメカニズムによるものだそう。淡蒼球は、実際に体を動かすことで活発化します。そうして初めて、モチベーションを高める信号を送り出すとのこと。

つまり、「カフェに行く」という身体的な行動そのものが、勉強に対してのモチベーションを高める契機になるのです。

次に、カフェの環境も勉強においてメリットとなるでしょう。アメリカの心理学者ゴードン・オルポートが1920年代に提唱した「社会的促進」と呼ばれる現象があります。これは、ある課題に取り組むときに、自分ひとりよりも周囲に誰かがいる状況のほうが捗る現象のこと。たしかに、カフェだと変に気を抜けないため集中できると感じる方も多いのではないでしょうか。

また、イリノイ大学の研究者が「環境音が創造性に与える影響」を調べた研究では、ちょうど「にぎやかなカフェ」に相当する70デシベル程度の環境音において創造性が最も向上することもわかっています。食器の音や話し声などが適度に聞こえるカフェは、何かを考えるタイプの勉強に向いているのかもしれませんね。

「カフェ勉」「家勉」効率がいいのはどっちか?02

「家勉」のメリット

次は「家勉」に話題を転じましょう。家で勉強するメリットはまず、当然ですがお金がかからないことが挙げられます。使わなくても人生に大きな支障がない消費は「ラテマネー」と呼ばれており、貯蓄をしたいのであれば真っ先に改善しなければならない出費であるとのこと。

仮に、勉強のために毎日カフェに通って1日平均500円の出費をしていると考えてみると……1ヶ月で1万5,500円、1年で18万6,000円と、なかなかの出費になります。カフェ勉の代わりに家勉をしていたとしたら、その浮いたお金で、勉強を深めるために参考書を買い足したりスクールに通ったりといったことができていたかもしれません。

また、カフェ勉の項で「適度な騒音」がもたらすメリットを紹介しましたが、逆に静かな環境のほうが作業効率を向上させるという研究結果もあるようです。

スタンフォード大学の研究チームが、中国の旅行代理店のコールセンターで働く500名超の従業員を「在宅勤務」と「オフィス勤務」のふたつに分けてパフォーマンスを調査したところ、在宅勤務を行なった従業員に13%の成果向上が見られたとのこと。休憩の回数や病欠の日数が減ったため実働時間が増えたことも要因のひとつでしたが、単位時間当たりの生産性も高まっていたそう。つまり、自宅のような静かな環境のほうが作業効率を向上させることもあるのです。

「カフェ勉」「家勉」効率がいいのはどっちか?03

結局、おすすめはどちらなのか?

ここまで、「カフェ勉」と「家勉」のそれぞれのメリットを解説してきましたが、気になるのが、にぎやかな環境の場合でも静かな環境の場合でも、それぞれにパフォーマンスが向上したという研究結果があること。なぜ、このような違いが生まれるのでしょうか。

カーディフ・メトロポリタン大学のニック・ペルハム上級講師は、「無関連音効果」で説明できるとしています。これは、作業に関係のない環境音が作業効率を低下させてしまう現象のこと。目の前の作業を脳内で処理するうえで、耳から聞こえる音が邪魔になってしまう場合もあるのです。そのため、特に情報を順序立てて整理するような作業は静かな環境で行なったほうがいいとのこと。

加えて、周囲に誰かがいる状況でパフォーマンスが向上する「社会的促進」にも、じつは落とし穴が。周囲に誰かがいることでパフォーマンスが下がる「社会的抑制」という現象もあるそうです。理化学研究所客員研究員の請園正敏氏によれば、単純だったり慣れていたりする作業の場合は社会的促進が生じ、複雑で思考力が求められる作業の場合は社会的抑制が生じるそう。

以上を勉強に当てはめると、以下のようにまとめられるでしょう。

【「カフェ勉」に向いている勉強】
単調で飽きやすく「量」が求められる勉強(暗記など)

【「家勉」に向いている勉強】
情報を整理しながら把握していくといった「質」が求められる勉強(読書など)

***
「カフェ勉」と「家勉」には両者ともにメリット・デメリットがあります。それを把握したうえで、勉強の内容やタイプに合わせて適切な場所を選ぶことが大切です。

文 / 谷口亮祐

(参考)
新R25|「簡単にやる気を出す方法を教えてください!」→脳研究者「やる気なんて存在しない」
ベネッセ総合教育研究所|やる気は脳ではなく体や環境から生まれる
JBpress|その仕事をカフェでするのは間違っている!
The Atlantic|Study of the Day: Why Crowded Coffee Shops Fire Up Your Creativity
日経スタイル|カジュアル無駄遣いを減らす「ラテマネー」を探せ
ハーバード・ビジネス・レビュー|在宅勤務制度は必要か?
VICE|仕事中の音楽によって作業効率は上がるのか

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