今年も残すところあとわずか。「年明けから勉強を頑張るぞ!」「来年は○○試験に合格するぞ!」と意気込んでいるなら、学習環境を見直すことで、よりさわやかなスタートを切れるかも。
今回は、筆者が勉強に使っているデスクを実際に整えながら、勉強部屋から捨てるべきもの・用意すべきものを4つずつご紹介します!
勉強部屋を整えるべき理由
「勉強部屋が散らかっていても、別に気にならない」という方もいることでしょう。しかし、散らかった部屋は勉強に多くのデメリットをもたらすことをご存じでしょうか?
ボンド大学経営大学院助教授のリビー・サンダー氏によると、散らかった環境が目に入り続けるだけで、認知力や集中力が低下する危険性があるのだそう。
ほかにも、身の回りが散らかっていると
- 寝つきが悪くなる→睡眠不足につながる
- ストレスホルモンのコルチゾールが増える→落ち込みを感じやすくなる
- スナック類に手を伸ばしやすくなる→肥満につながる
ということが、数々の研究で明らかになっているとサンダー氏は言います。
つまり、勉強部屋や勉強机を散らかしたままにしておくと、勉強に集中できなくなるばかりか、睡眠障害やネガティブ感情といった、スムーズな勉強を妨げる事態を引き起こしてしまうのです。ついついお菓子を食べてしまうことだって、生産性を低下させかねません。
勉強を頑張ろうと考える人にとって、勉強部屋やデスクは多くの時間を過ごす場所。たとえ散らかった状態が気にならなくとも、集中力や心身の健康まで左右されるのであれば、片づけない理由がないですよね。
勉強部屋から捨てたもの4つ
勉強に適した環境をつくるには、まず何から片づけるべきなのでしょうか? 専門家たちの見解をふまえながら、実際に筆者が「勉強部屋・デスクから遠ざけたもの」を4つご紹介します。
勉強に関係のないもの
追ってビフォア写真でご紹介しますが、筆者はデスクの上に、勉強に関係ない本や趣味のものを多く置いてしまっていました。
前述のように、乱雑な光景は認知力を低下させ、集中力を損ないます。つまり、机の上は常にスッキリさせておくのが吉。
すぐに使わない教材や資料は見えない場所に置いておき、必要なときにつど取り出すのがいいでしょう。筆者もまず、勉強と関係のないものを片づけ、必要なものだけが目に入るように工夫してみました。
スマートフォン
次に片づけたのはスマートフォンです。筆者はこれまで、職場や友人と連絡をとるため、はたまた手早く調べ物をするため、常にスマートフォンを手元に置いていました。ですがこの習慣、集中力と学力をとんでもなく低下させてしまうようなのです。
北海道大学教授の河原純一郎氏が行なった研究によると、スマートフォンが近くにあるだけで注意を引かれてしまい、集中力が低下することがわかったそう。
さらに、東北大学加齢医学研究所教授の川島隆太氏による実験では、スマートフォンを使う時間が長いほど、成績が下がることが判明したのだとか。
つまり、スマートフォンが机にあるだけで勉強に集中できなくなり、使えば使うほどせっかく学習したことが無駄になってしまう、ということ。川島氏の実験は中学生を対象としたものですが、大人の勉強にも同様の悪影響があると見てよいはず。
さっそく、勉強時はスマートフォンを少し離れた場所に置くことに決めました。
甘いお菓子
勉強のおともに、チョコレートやクッキーなどをつまむのが楽しみでしたが、こちらの習慣も見直すことに。
子ども向け学習塾「三島塾」学長の三島学氏は、糖質をとりすぎると学力が低下すると警鐘を鳴らしています。三島氏の塾において、子どもたちに糖質制限と学習をセットで行なわせたところ、居眠りの減少、多動の改善、偏差値の向上、体調改善など、さまざまな効果が確認されたとのこと。
精神科医の奥平智之氏は、糖質を控えると血糖値が安定するため、集中力の低下や眠気を避けることができると言います。
筆者はまさに昼食やおやつのあとに眠くなるタイプ。これを機に、甘いおやつをデスクや勉強部屋に置かないようにしました。
やり残した家事
形のあるもの以外にも、遠ざけるべきものがあります。それは「やり残したこと」。「まだメール返せてない……」「あの要件が終わってないな」といった考えが頭にあると、勉強に集中できないからです。
専業主婦から東大大学院に合格した漫画家のただっち氏は、大学院受験に向けて勉強するなかで、まさにそれを実感したひとり。家事と勉強を両立させるため、受験勉強中は午前中にすべての家事を済ませるようスケジューリングしていたそうです。
筆者も、勉強中に掃除や洗濯を思い出して集中が途切れることがよくあったので、最低限の家事は勉強前に終わらせることにしました。
勉強部屋に用意したもの4つ
さて、不要なものを片づけたあとは、勉強の助けになってくれるアイテムを4つ取り入れました。
タイマー
ブレインコーチのジム・クウィック氏によると、人は10分〜40分たつと自然に集中力が弱まることが研究でわかっているそう。
そこで役に立つのがタイマーです。「25分の作業時間と5分の休憩」を繰り返すことで疲労を軽減し生産性を高める、「ポモドーロ・テクニック」というメソッドを実践するために使います。
筆者自身、集中力が安定せず、途切れやすいことを自覚していたので、こちらのテクニックを取り入れることにしました。用意したのはパソコンで使うタイマーアプリ。自動的に25分・5分を繰り返しカウントしてくれたので、設定に煩わされることなくスムーズに使うことができましたよ。
耳栓/イヤホン
次に用意したのは、耳栓。外部の音を遮断することで、余分な情報が入ってこなくなり、学習内容に集中できるのです。
元東大院生で、難関大学院入試情報を発信する著述家のくろまあくと氏によると、東大生は耳栓をつけて勉強することが多いそう。同氏は、五感のひとつである聴覚への刺激を減らすことが、集中力につながるのではと言います。
また、『深い集中を取り戻せ』の著者で集中について研究する井上一鷹氏は、「音環境」が集中力に大きな影響を与えると指摘。完全に音を遮断したい人は耳栓を使い、静かすぎると集中できない人は環境音やホワイトノイズなど「集中できる音」を流すといいとのことですよ。
植物
次に取り入れたのは、観葉植物です。井上氏によると、植物を置くと副交感神経が優位になり、リラックスしながら長時間集中力を保つことができるのだとか。
エクセター大学による実験では、オフィスに観葉植物を置くことで、従業員の生産性が15%上昇することが判明したそう。また、愛媛大学農学部の研究により、緑色の植物を見ることで目の疲れが緩和されるとわかっています。
そこで筆者は、別の部屋に置いていた観葉植物を、勉強中にも視界に入るデスクの上に移動させることに。
ハーブティ
シニア野菜ソムリエの丸田みわ子氏は、ミント系のハーブティは勉強にぴったりだと言います。ミント類に含まれる「メントール」が、緊張感を緩和させながらも意識をはっきりさせてくれるのだとか。
ハーブティーといえばカモミールやラベンダーも人気ですが、これらはリラックス効果が高いため、勉強後や休憩タイムに向いているそうですよ。
実際に勉強部屋を片づけてみた
それでは、筆者の勉強机のビフォアアフターをお見せします。まずは “ビフォア” から。
勉強と無関係な、本や文房具、機器類などが多く置いてありました。雑然とした印象ですね。そんな机を片づけた、“アフター” 写真がこちらです。
関係のない本や道具などはしまい、文房具もよく使うペンだけを並べました。
これだけで、視界がかなりスッキリしましたよね。観葉植物の緑が穏やかな雰囲気をつくってくれています。
勉強部屋を整えて何が変わった?
勉強前に机を片づけることで「勉強に対する姿勢」が整いました。きれいな机を見ると「よし、やるぞ」という気持ちになるので、片づけは勉強前のルーティンとしても有効なのではないでしょうか。
遠ざけたもののうち、最も効果を感じたのはスマートフォン。集中力が途切れることがグッと減り、いままで頻繁に手を伸ばしては時間を無駄にしていたことを実感しました。
そして、取り入れたもののなかで特に効果を発揮してくれたのは、タイマーと耳栓。耳栓をしながらポモドーロ・テクニックを実践すると、「いまは集中」「いまは休憩」というオンオフがはっきりします。結果、頑張りすぎたり、休みすぎたりすることが減りました。
作業環境を整えただけで、気持ちが整い、集中力が持続するようになったのは大きな変化ですよね。
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勉強部屋を整えることは、心身の健康をも整えるビッグプロジェクトでした。充実した1年を過ごせるよう、ぜひ最高の勉強環境づくりに取りかかってみてはいかがでしょう?
(参考)
ニューズウィーク日本語版|「こんまり」人気の深層──片づけは不眠や不安や肥満さえ癒す
デジタルMy vision|【毎週土曜更新 集中ワザ】勉強に集中できる&はかどる机の作り方!短時間でできる、簡単な整理方法3つ
Ito Motohiro and Jun-Ichiro Kawahara(2016), “Effect of the Presence of a Mobile Phone during a Spatial Visual Search. ”Japanese Psychological Research, Vol.59, No.2
PRESIDENT Online|"スマホが学力を破壊する"これだけの根拠
東洋経済オンライン|子どもの糖質制限は何が良くて何が危ないか
ダ・ヴィンチニュース|大人になると意外と勉強に集中できない! それはなぜ? /普通の主婦が東大大学院に合格して自分の人生を見つけた超勉強法⑦
東洋経済オンライン|勉強がデキる人は知っている「25分の法則」
ESCAPE Log|【ディストラクション効果】なぜ東大生は勉強中に耳栓を付けるのか?
リクナビNEXTジャーナル|仕事の“集中力”を高めたい!聴覚・視覚・嗅覚を活用し、「スイッチ切り替え」するコツとは?
ダイヤモンド・オンライン|集中の超プロが「今すぐ部屋に観葉植物を置こう」とすすめるワケ
The Guardian|Plants in offices increase happiness and productivity
愛媛大学農学部 グリーンアメニティ学科|植物には目を癒す効果があるの?
東洋経済オンライン|集中力が変わる!ミントの効力生かす具体策 ハーブを賢く使い分けるための基礎知識
【ライタープロフィール】
平野ももこ
大学ではフランス文学を専攻し、物語のなかの人の心を中心に研究。出版社を経営していた祖母の影響もあり、純文学、心理学、ビジネス書など幅広く読む大の読書家である。現在は、メンタルケアやカウンセリングを勉強中。バレットジャーナルの実践を通じ、生活改善に成功し続けている。