「覚えたはずなのに思い出せない!」という悩みが、“勉強場所” を変えれば解決できるワケ。

勉強場所を変えて学習してみた01

「頑張って勉強しているが、なかなか覚えられない」
「問題を解いているとき、覚えたはずの知識を思い出せないことが多々ある」

これらに思い当たる人は、脳に情報が保存されているにもかかわらず、それを検索する脳機能があまり働いていない可能性があります。

脳のスペシャリストたちによれば、脳の検索機能の向上には、勉強場所を変えるのが効果的とのこと。その理由と、筆者が場所を変えて勉強して実感できた効果もご紹介しましょう。

記憶には「保存」と「検索」の力が必要

『脳が認める勉強法』著者でサイエンスレポーターのベネディクト・キャリー氏によると、記憶は保存検索のふたつの力によって成り立っているそう。

「保存」とは、情報を覚える力のこと。キャリー氏いわく、脳内に保存された情報は、「役に立つ」「関心がある」と脳が判断するかぎり、ずっと保存され続けるのだとか。

一方で「検索」は、脳内にある情報を思い出す力を指します。いかに楽に思い出せるかが、この力のバロメーター。保存する力に比べて不安定で、強化し続けないと衰えてしまうそうです。

勉強で「覚えられない」と悩んでいる人の多くは、脳に情報を保存できていないのが原因だと考えがちではないでしょうか。しかし実際は、覚えている、つまり脳内に情報はある状態なのに、検索する力が不十分で壁にぶつかってしまっている可能性があると、キャリー氏は述べています。

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勉強場所を変えるのが効果的な理由

では、検索する力を鍛えるにはどうすればいいのでしょう?

キャリー氏によると、それには場所を変えながら勉強するのが効果的だそうです。理由は、いろいろな場所で学習すると「思い出す手がかり」を得る機会が増えるから。脳は、太陽の光や周囲の音などを手がかりにして、脳内に保存された情報を見つけ出すとのこと。複数の場所で勉強すると、情報にひもづけられる手がかりが増えるので、それだけ思い出しやすくなるのです。

ミシガン大学で行なわれた実験で、勉強場所を変えることによる影響が確認されています。その実験では、学生を同じ場所で勉強するグループA勉強場所を変えるグループBに分け、40の英単語を見せ、10分の学習時間を2回与えて覚えさせたそうです。そして単語を思い出せるかぎり書かせた結果、グループAの平均が16個だったのに対し、グループBの平均は24個と著しい差が現れました。

実際に、場所を変えながら勉強し成果を出した人もいます。行政書士など90以上の資格をもつ高島徹治氏は、勉強部屋で問題集を解き、浴室でラジオ講座を聴き、玄関では暗記した単語の復習をしたそう。また、働きながら1日1時間の勉強で東大に合格した松下佳樹氏は、受験生時代、普段は自宅で勉強しつつ、英熟語はオフィスのランチ場所で覚えていたそうですよ。

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実際に勉強場所を変えて学習してみた

筆者は学習目的に応じて、次の5つの勉強場所で学習してみました。

テキストの通読:カフェのテラス席・公園のベンチ
メモリーツリーでアウトプット:リビングの食卓
演習問題と復習:自習室・自宅キッチンのカウンター

使用したのは放送大学教材の『著作権法』です。以前にも、仕事に必要な知識のブラッシュアップをしようと手に取り、作業部屋のデスクで勉強したことがあるのですが、漢字の並ぶ専門用語が次々と出てきて挫折……。そこで今回は、勉強場所を変えて再チャレンジしてみました。

各ステップの詳細は次のとおり。

「カフェ・公園のベンチ」で、テキストを通読する

トレスペクト教育研究所代表の宇都出雅巳氏いわく、脳はいきなり細かい情報を覚えることはできないので、まずは大ざっぱに覚えるとよいとのこと。そこで、最初はテキストの通読を、カフェのテラス席や公園のベンチといった屋外でやることにしました。

医学博士・心療内科医師の吉田たかよし氏によると、屋外は、光や音、風、においなど五感への刺激が多い場所。そうした思い出す手がかりを得られることで、脳内のネットワークが強化され、記憶力や思考力が高まるとのこと。一度挫折したという苦手意識が強かった筆者にとって、刺激を受けやすい屋外は最適だと考えたのです。

「リビング」で、メモリーツリーを用いてアウトプットする

次に、通読して学んだ内容のアウトプットを、リビングへ場所を変えて行ないました。食卓が大きいので教材を広げやすいのに加え、近くには大きな窓があり、五感への刺激を得られるからです。

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実際に食卓で勉強している様子を撮影したもの

アウトプット方法には、図解で覚えるメモリーツリーを選択。中央に木の幹に見立てた大項目を書き、そこから枝が生えるように中項目や小項目を記述する方法です。メモリーツリーをすすめる前出の高島氏いわく、言葉の意味を覚える際は左脳の言語中枢を酷使しがちなので、図を用いて右脳もバランスよく働かせると学習の効率が高まるそうですよ。

下の画像は、実際に作成したメモリーツリー。中央の「著作権制度の仕組み」が大項目で、「無方式主義とは?」のように丸で囲んだものが中項目、そこからさらに分岐したものが小項目となっています。

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「自習室・キッチンカウンター」で、演習問題を解く

そして問題演習と間違えた問題の復習は、街なかの自習室で行ないました。外出できない場合には、自宅のキッチンカウンターで。

また、間違えたところの復習にも、メモリーツリーを実践。世界記憶力グランドマスターの青木健氏によると、メモリーツリーは、何度も書くほうが記憶の定着に効果的なのだそうです。

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勉強場所を変えて学習したら、ストレスなく覚えられるようになった!

勉強場所を変えて学習した感想や、提案したいことをまとめます。

難しい単語でもスムーズに思い出せるようになった

勉強場所を変えてまず感じたのは、学習した内容を、スムーズに思い出せるようになったこと。

「著作者人格権を勉強しているときは、ゲリラ豪雨が降っていた」「同一性保持権を学んだときのカフェは暑かった気がするな」などと、思い出す手がかりが頭に浮かぶことが増えました。知識と五感で受けた刺激がひもづいているからこそ、スムーズに思い出せたのだと考えられます。

勉強場所を変えるとストレスが解消されるメリットも

勉強場所を変えた結果、副次的効果として、閉塞感によるストレスからも解放されました

作業部屋のデスクでずっと勉強していたときは、テキストの内容がわからず行き詰まりを感じ、モチベーションを落とすこともしばしば。しかし場所を変えて、いろいろな景色を見ながら勉強してみると、閉塞感がなくなって心にゆとりができたと実感。以前よりもテキストの内容が頭に入ってくるようになったと感じました。

自宅で勉強場所を変えるだけでも効果がある

じつは筆者自身、これまでにも複数のカフェやコワーキングスペースでの学習を試みたことがあるのですが、騒がしい場所や仕切りに囲まれた閉鎖的な場所が好きになれず、勉強がはかどらなかったという苦い経験があります。

先述のミシガン大学での研究を実施したスティーヴン・スミス氏によると、刺激を受けるうえでとりわけ重要なのは「視覚の情報が変わること」。部屋を変えるだけでも視覚情報は変わるので、極端な話、自宅内で勉強場所を変えるだけでも効果が得られると考えられます。

複数の勉強場所を選ぶ際に大事なのは、家の外に出るかどうかというより、自然にもたらされる刺激を受けられるか、具体的には近くに窓があるかどうかだと感じました。窓があれば、光や風、景色の移ろいといった刺激が受けられるからです。自宅で複数の勉強場所が用意できれば、無理にカフェや自習室に行く必要はないでしょう。

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自室にこもって勉強している人は、ぜひ勉強場所を変えて学習してみましょう。閉鎖感がなくなるだけでなく、知識をスムーズに引き出せる脳になりますよ。

(参考)
ベネディクト・キャリー (2015),『脳が認める勉強法――「学習の科学」が明かす驚きの真実! 』, ダイヤモンド社.
松下佳樹 (2021), 『30代サラリーマンが1日1時間で東大に合格した 「超」効率勉強法』, 彩図社.
高島徹治 (2014), 『3ヵ月で結果が出る! 資格が取れる! 「超効率」勉強法』, 講談社.
作花文雄 (2018),『著作権法 (放送大学教材)』, 放送大学教育振興会.
宇都出雅巳 (2012),『「1分スピード記憶」勉強法』, 三笠書房.
大学受験パスナビ|《吉田たかよし先生が解説!》記憶と思考の脳科学的メカニズム
青木健 (2020), 『記憶力日本チャンピオンの 超効率 すごい記憶術』, 総合法令出版.

【ライタープロフィール】
かのえ かな
大学では西洋史を専攻。社会人の資格勉強に関心があり、自身も一般用医薬品に関わる登録販売者試験に合格した。教養を高めるための学び直しにも意欲があり、ビジネス書、歴史書など毎月20冊以上読む。豊富な執筆経験を通じて得た読書法の知識を原動力に、多読習慣を続けている。

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