資格を取りたい、語学を身につけたい、仕事に役立つ知識をもっと蓄えたいなど、学生時代より社会に出てからのほうが勉強に対する意欲が高まる人も少なくありません。しかし、いつ勉強をすればいいのかわからない、うまく習慣化できないというビジネスパーソンは多いことでしょう。
よく聞くのは、早起きして勉強する、いわゆる「朝活」。でも、早起きが苦手な人にはなかなかハードルが高いですよね。そこでおすすめしたいのが「夜の勉強」です。1日 “たった30分” の勉強を習慣化させるだけで、なんと平均的な人の6倍も勉強することができますよ。さらに、就寝1時間前から勉強することは、脳にも良い影響を与えます。就寝1時間前から30分勉強することさえ守れば、それまではテレビを観るなり自由に過ごせるのもメリットです。
今回は、たった30分の夜時間で効率的に勉強するコツをご紹介します。
1日30分の勉強時間が、100日後に2,500分の差を生む
1日30分の勉強というと、「たったそれだけ?」というイメージを持つかもしれません。しかし、『30代で人生を逆転させる1日30分勉強法』の著者・石川和男氏によると、30~50代の1日平均の勉強時間はたったの5分しかないのだそう。これはアンケート回答者のみの数字であるため、実際はより平均値が少なくなると石川氏は推測しています。つまり、1日30分であっても、ライバルたちの6倍勉強をしているということになるのです。
さらに石川氏は、著書で「1日30分の勉強が、1年で1ヵ月もの勉強時間になる」とし、継続することの大切さを訴えています。
5分だと仮定すると、30分で平均より6倍も勉強をすることができます。しかも100日で2,500分の差がつき、1,000日で25,000分(417時間)差です。継続すればするだけ差が開いていきます。
(引用元:リクナビNEXTジャーナル|時間をムダにしない人は「30分の使い方」が違う)
夜の過ごし方を振り返ってみると、スマートフォンでゲームをしたり、ネットサーフィンに興じたりなど、なんとなく消費してしまっている時間が非常に多いのではないでしょうか。こうした時間をなくせば、1日30分の勉強時間を抽出することも決して難しくありません。
夜勉強のタイミングは “就寝1時間前から” にしよう
東京大学大学院薬学系研究科准教授の池谷裕二氏によると、寝る1時間前は勉強のゴールデンアワーなのだそう。語学のテストによる実験では、勉強直後のテストよりも、勉強後に睡眠をとってから実施したテストのほうが成績が高かったという結果が報告されたそうです。睡眠には脳の記憶を整理して定着させる働きがあるとされており、池谷氏は次のように述べています。
実は睡眠には、脳に蓄えた知識を整理整頓して使える状態にする役割があることがわかっています。知識の量が変わるのではなく、知識の質が変わるわけです。
(引用元:プレジデントオンライン|「寝る前1時間」は勉強のゴールデンアワー)
池谷氏によると、夜の勉強は特に記憶力を要するものが向いているとのこと。英単語を覚えるなど暗記系の勉強をするのがいいですね。就寝1時間前までは自由にくつろいでよいので、「帰宅したらすぐに勉強しなくては」という負担がないのも習慣化しやすいポイントです。
そして、就寝30分前には勉強を終わらせ、脳をクールダウンさせましょう。勉強コンサルタントの高島徹治氏によると、寝る直前まで知識の深追いをしてしまうと、脳が混乱して記憶の定着がうまく行なわれない可能性があるのだそうです。どうしても気になることは、翌朝から昼間のあいだに調べましょう。
「なぜ」「どうして」と思うような勉強や調べものは、30分前に済ませること。できたら夜ではなく、朝や昼間の落ち着ける時間に行ったほうがよいでしょう。
(引用元:ダイヤモンド・オンライン|寝る前にどんな勉強をすればいいのか)
“2つ以上の動作” で、30分でも効率的に記憶に定着させる
いざ本格的に勉強するとなったら、30分間は短いと感じるかもしれません。その限られた時間の中でどうすれば効率よく知識を蓄えられるかを意識すれば、勉強の質がより高まります。先述の石川氏は、30分という限られた時間を有効活用するために、2つ以上の動作を掛け合わせて記憶を定着させることをすすめています。
口に出しながら書いたり、時には聞きながら部屋の中を歩いたりと動作を”掛け合わせる”ことで、記憶は定着しやすくなります。限られた時間内で次から次へと見る・口に出す・聞く・書く・線を引くを組み合わせて繰り出すことで30分という時間を有効に利用することができます。
(引用元:リクナビNEXTジャーナル|時間をムダにしない人は「30分の使い方」が違う ※太字は編集部が施した)
テキストをただ読むのではなく、音読したり、ちょっとした予備知識を書き込んだりなど、30分間の勉強でもできることはたくさんあります。学んだことをアウトプットするのもひとつの手です。ライフネット生命保険株式会社・取締役会長の岩瀬大輔氏は、ビジネスパーソンの勉強はインプットするだけで終わらせてはいけないとしています。
ビジネス書を読むときも、単なる「読書」に終わらせずに、自分だったら…自社だったら…と、自身の「考えるための素材」にしてほしいのです。
(引用元:ダイヤモンド・オンライン|社会人の「勉強」はアウトプットがゴール)
勉強で蓄えた知識をビジネスでどのように活用するかメモをしておき、実践する……これを続けることで、のちのち大きな力を身につけることができますよ。
資格勉強は、1年以内の取得を目指して計画を立てる
資格取得を目的に勉強する場合は、1年以内に試験を受けるように時間を逆算して計画を立てましょう。弁護士であり事業化でもある鬼頭政人氏によると、試験までの期間をあまりに長く設定してしまうと集中力の維持が難しくなり、「ゆっくり頑張ればいい」と楽なほうに流されてしまうのだそうです。
どんなに難しい資格試験でも、遅くても「1年後の合格」を目指して計画を立てるべきです。その心づもりで勉強に取り組めば、緊張感が生まれて、日々の計画をクリアしていけるでしょう。
(引用元:THE21オンライン|社会人のための「資格試験勉強」の計画の立て方)
鬼頭氏は、資格試験は仕事と同じと捉えると良いとしています。つまり、仕事に納期があるように、資格勉強にもデッドラインがあると常に意識しておくのです。そうすれば必然的に、試験日までに身につけておくべき知識はどれくらいか、半年前までにはどのくらい勉強を進めておくべきか、1か月前はどうか……というように計画を立てることができます。
そのうえで、30分単位でできることまで落とし込んで考えられるようになると、より計画的に勉強ができますよ。
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仕事を終え、自宅で夕食を食べて、くつろいだあとに就寝1時間前から30分間勉強する……。これなら、平日の夜でも比較的簡単に続けられるのではないでしょうか。勉強は必ずしも朝やらなければいけないというものではありません。続けることが何より大事なので、早起きが苦手で朝勉強に挫折した人は、ぜひ夜勉強に挑戦してみましょう。
なお、「社会人の勉強におすすめなのはコレだ! 勉強方法&勉強場所まとめ」では、社会人がどう勉強すればよいのか具体的な情報をまとめています。こちらもご参照ください。
文 / かのえかな
(参考)
石川和男 (2012),『30代で人生を逆転させる1日30分勉強法』, 阪急コミュニケーションズ.
リクナビNEXTジャーナル|時間をムダにしない人は「30分の使い方」が違う
プレジデントオンライン|「寝る前1時間」は勉強のゴールデンアワー
ダイヤモンド・オンライン|寝る前にどんな勉強をすればいいのか
ダイヤモンド・オンライン|社会人の「勉強」はアウトプットがゴール
THE21オンライン|社会人のための「資格試験勉強」の計画の立て方