仕事や勉強において、覚えなければいけないことってたくさんありますよね。そうした情報を忘れず記憶しておこうと思っても、十分な時間が取れずに忘れてしまうことも多いのではないでしょうか。そうした情報を無駄にしないためにも、短時間で新しいことを記憶しやすくするための方法をご紹介します。
記憶直後の40秒間の復習が記憶保持
英サセックス大学の実験によると、『何かを記憶した直後に40秒間の復習』をしただけで、2週間後に記憶できている情報が飛躍的に多くなるということが明らかになっています。
実験は以下のようなものでした。
①動画を見た後、内容を思い描くか声に出して説明する ②何もせずただ動画を見る
この2つのパターンに分けて、参加者に26本の動画を見せました。2週間後に覚えているか確認テストを実施したところ、②のパターンで見た動画はほとんど何も思い出せず、①のパターンで見た動画はほとんどの詳細を思い出すことができたという結果になりました。
さらに、実験の際に同時に行ったMRI検査の結果を見てみると、40秒の復習を行った際は脳の後帯状皮質が活性化しているのがわかりました。後帯状皮質は、私たちが休んでいる間でも活動している『デフォルト・モード・ネットワーク (DMN)』と呼ばれる領域に属しており、その中で中心的な役割を果たしていると考えられています。
この実験によって、長期記憶として保存されない限りすぐに忘れられてしまう新しい記憶も、ほんの少しの時間復習をしただけで、1~2週間記憶可能になるということがわかったのです。つまり、講演やプレゼンを聞いたり、本を読んだりした後に、40秒間だけ内容を反芻する時間を持つことで、その情報を通常より長く覚えておくことができるんです。
自分に対してわかりやすい説明をすることで理解を深める
40秒の復習を済ませたあとに、さらにきちんと記憶に定着させたい時におすすめなのが、池上彰さんの著書『相手に「伝わる」話し方』で紹介されている、わかりやすい説明の方法です。
①むずかしい言葉をわかりやすくかみ砕く ②身近なたとえに置き換える ③抽象的な概念を図式化する ④「分ける」ことは「分かる」こと ⑤バラバラの知識をつなぎ合わせる
(引用元:池上彰 (2002),『相手に「伝わる」話し方』, 講談社.)
この内容は「説明」のためのものですが、自分に対して説明することは、物事を理解するうえで非常に重要です。池上さんは、「わかる」とはどういうことかを次のように説明します。
わかりやすく伝えるためには、伝える内容をきちんと分けてみることです。「分ける」ことは「分かる」ことに通じるのです。
(引用元:同上)
雑多な情報の中から必要な要素を取り出し、その要素を的確に分け、適切な順番に並べて伝えることが、「分かる」ことになります。必要な要素を分けて再構成して見せることで、視聴者の頭の中が整理でき、理解しやすくなるのです。
(引用元:同上)
この5つの手順に従って情報を整理してみると、ちんぷんかんぷんだった内容も、理解することができるのではないでしょうか。
たとえば名古屋市にある名古屋市科学館では、元素周期表にのっている元素それぞれが身近なもので展示されています。例えばリンだったらマッチというように。私にとってはぼんやりしたものでしかなかった「元素」というものが、その展示によって形を持ったように感じられました。どんなものでも、自分の身近なものに置き換えて理解することは可能です。古文を読み解く時に現代語に訳すのも、英語を日本語に訳すのも、言ってしまえばどちらも後者の方がより身近でわかりやすいからです。
ぜひ、40秒間の復習で忘却期限の延びた記憶を、今後も有効なストックにするためにも、この5つの手順で自分が理解できるよう自分に説明してみる時間を持ってみてはいかがでしょうか。
*** 記憶できる量、記憶できる期間は、少しの工夫でいくらでも増やしていくことが可能です。せっかく得た有意義な情報を無駄にしないためにも、活用してみてくださいね。
(参考) デフォルトモードネットワークの機能的異質性 Functional heterogeneity of the Default Mode Network 日経サイエンス|浮かび上がる脳の陰の活動 JNeurosci|Consolidation of Complex Events via Reinstatement in Posterior Cingulate Cortex Buzz Plus News|【朗報】40秒だけ頑張れ! 物覚えが悪くてもたった「40秒の復習」で記憶力は激しく改善する事が判明! 池上彰 (2002),『相手に「伝わる」話し方』, 講談社.