みなさんは、周りの目を気にして好きなことができなかった経験はありますか?
人と違うのってなんだか不安になりますよね。特に日本人の私たちだとなおさら。 でも、いつも人と同じじゃつまらないし、多数派が正しいとも限りません。
そこで、このような心理に対処する力をつける方法について考えましょう。
集団心理の罠
まずはある集団心理実験の記事を読んでみてください。
ソロモン・アッシュという心理学者が行った実験が、いかに人が集団心理に 影響を受けているかが分かる。 model:――――――――― A :―――――――― B :――――――――― C :――――――― modelと同じ長さのものはどれか?というものなのだが、アナタに分かるだろうか? ひねくれ者以外は誰が見てもBなのだが、これがBではなくなる瞬間がある。 まず、被験者1人とサクラ役6人を集める。 サクラ役6人にはAと答えるように指示を出しておく。 そして肝心の問題は、サクラ役6人が答えた後に被験者1人に答えさせる。 サクラ役が全員答えた後に被験者の回答を聞くと、なんとAと答えてしまう。 これは、同調現象によって被験者が個人でどう思うかより集団の意見に 合わせてしまった結果である。 【引用:耶音の不思議の国】
どうでしょうか、集団心理の力はこのように、明らかに間違ったことでさえ正しいこととして認知させてしまうのです。 実験では、線の長さという取るに足らないことですが、現実にはもっとクリティカルな問題において集団心理が私たちを動かしていることが予想されますね。
つまり、集団心理の罠にはまらないというのは、単に個性だとかオリジナリティだとかいう問題ではなく、適切な答えを選ぶ際ためにとても重要なことだと言えそうです。
アドラー心理学で集団心理に打ち勝つ
では、どうすれば集団心理の罠に陥らずに済むのでしょうか? そのカギは最近非常に注目を集めている、「アドラー心理学」にありました。 著書「嫌われる勇気」はたいへんなベストセラーになっているので、手にした方も多いのではないでしょうか。 帯に書かれたキャッチコピー「自由とは他者から嫌われることである」もとても印象的です。
岸見 一郎 、古賀 史健 (著) 講談社 2013年
アドラー心理学には次の4つの特徴があります。
1.人間を分割できない全体として把握し、理性と感情・意識と無意識などの対立を認めないこと(全体論) 2.行動の原因でなく目的を理解しようとすること(目的論) 3.客観事実よりも、客観事実に対する個人の主観的認知のシステムを重視すること(認知論) 4.精神内界よりも個人とその相手役との対人関係を理解しようとすること(対人関係論)
この中で、今回特に着目したいのは3の認知論。 人間は外界を、自分の目や耳や鼻といった器官で知覚して、それをもとに自分の脳内で主観的に再構築し、認知しています。
つまり私たちそれぞれが、世界を違うものとして認知しているということ。 私が思う世界と、あなたが思う世界は同じものではありません。
そのことを前提とすると、他の人の意見は、「自分の世界」にとってはあまり意味のないことなのかもしれません。
「同じものをみて、自分だけが違う意見をもつ」ということは少しハードルが高いかもしれません。しかし、「ひとりひとりが別の世界に生きていて、その世界の中で別々の決断をくだしている」と考えると自分の決断に価値を見いだせそうですね。
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いかがでしょうか。「人と違う」ということが目的になるのは本末転倒ですが、「人と同じことをしよう」と過度に意識することは、せっかくの思いつきを曇らせて、あなたを成功から遠ざけてしまうかもしれません。時には、「嫌われる勇気」をもってオリジナルなあなたを表現してください。
(参考) Psychologyドットコム 耶音の不思議の国 日本アドラー心理学会