論理的な思考力は身についたが、いまひとつ何かが足りない気がする……、という方は、第六感を鍛えてみませんか? 決して怪しいものではありません。「回避する力」「不測の事態に対処する力」「大きな決断を迫られたときの力」になるはずですよ。さっそくご説明しましょう。

第六感は、大脳基底核からやってくる?

第六感は、五感(視覚・聴覚・触覚・味覚・嗅覚)を超える感覚ともいわれています。

第六感をもつ少年が主人公の映画『シックス・センス(1999/M・ナイト・シャマラン監督) 』は霊感が主体であっため、ホラー映画として大ヒットしましたが、実のところ、この感覚は誰でも持っているものなのです。

なぜならば、「第六感」は「直感」のことだから。では、どう科学的に説明できるのでしょう。

私たちを観察している大脳基底核

心理学・脳神経学研究者のマシュー・リーバーマン博士が、これまで行った研究を再検討したところ、脳の「大脳基底核」が潜在学習と直感、両方の基盤であることを示唆する証拠が見られたそうです。

そして、EQ(心の知性)の提唱者として知られるダニエル・ゴールドマン氏は大脳基底核について、「私たちのやることなすことの一切を観察し、そこから決定の規則を引き出している」といいます。

同氏によれば、大脳基底核には、私たちが意識的には思い出しにくい経験すべてがしまわれています。しかし、大脳基底核はあまりに原始的なので、経験からなる知恵を、言葉で私たちに伝えることができません。言語を司る大脳皮質とはつながっていないからです。

そのかわり、大脳基底核は脳の情動中枢や、内臓とはよくつながっているのだとか。したがって、「気持ち」というかたちで語りかけてくるというわけです。それが「直感」です。

そして、この直感は、リーダーには必要不可欠のものだといいます。

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すぐれたリーダーになるには「直感力」が必要

ジョン・C・マクスウェル氏が著した『「人の上に立つ」ために本当に大切なこと』には、多くの識者や著者の言葉がありますが、そのなかには以下の文があります。

マクギル大学の研究員ヘンリー・ミンツバーグはこう言っている。
「組織の効率性は、合理性という偏狭な概念の中にあるのではなく、明晰な論理と鋭敏な直感力の混合の中にある」

経営コンサルタントのロバート・ヘラーはこんなアドバイスをしている。
「直感を決して無視するな。しかし、それで十分だとは決して思うな」

(引用元:ジョン・C・マクスウェル著,‎弓場隆訳 (2013),『「人の上に立つ」ために本当に大切なこと』,ダイヤモンド社.)

世界のすぐれたリーダーたちは日々大きな決断を迫られていますが、直感力と明晰な論理という2つが大きな力となっているのですね。また、第六感=直感にかかわる興味深い研究もあります。

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人間には病気を察知する能力がある

スウェーデン・ストックホルム大学の臨床神経科学者ヨン・アクセルソン氏らは、健康な十代や大人16人に、2つの異なる物質を注射して、その後62人の被験者に顔写真を見せて「健康」か「病気」かを判定させたそうです。

注射したのは「一時的に炎症反応を起こす有害ではない菌」と「無害なプラセボ薬」。この実験では前者を注射された人が病気となります。その結果、病気という判定が正解したのは6割ほどだったそうです。また、16人の被験者のうち13人は、比較的高い精度で病気を見分けたとのこと。

騒ぎ立てるような結果ではないかもしれませんが、2種を注射して顔写真を撮影したのは、たったの2時間後。病気の初期症状を早い段階で察知する第六感が、私たちには何かしら働いていると考えていいのは明らかです。

第六感で病気の人を見分けられるならば、ビジネスに不利な「負のエネルギーを感じとる」こともできるはず。ビジネス社会で生き抜くには、「危険を察知して回避する」ことも重要です。第六感=直感を鍛えれば、その力も身についていくわけです。

慣れないことや場所が第六感を鍛える

では、どうやって第六感=直感力を鍛えたらよいでしょう。将棋界初の「永世7冠」を達成した羽生善治竜王は、「直感は経験で磨く」といいます。

理化学研究所・脳科学総合研究センターによれば、プロ棋士は対局中、大脳基底核の一部に活動が見られるそうです。この活動は、アマチュア棋士には見られないのだとか。つまり、訓練や対局などたくさんの経験で、すぐれた直観(※)能力を身につけることができたのです。

メンタル心理カウンセラーの田辺寿夫氏は、見聞きしたもの、知ったこと、感じたことを、潜在意識はすべて蓄積しているといいます。その潜在意識から大きな集合体へ届いた意識は、同じような思考のイメージと共鳴して、新しい考えや情報となり、それを無意識が受け取るのだそうです。表現は違いますが、これはダニエル・ゴールドマン氏が説明した、大脳基底核のことだと考えられます。

経験を重ねていけば、それなりにさまざまな「意識」が貯蔵されるでしょう。しかし、それを共鳴させ、新たなものとして引き出す訓練も必要です。

すると、何年も前に、脳科学者の茂木健一郎氏がいいアドバイスを伝えていました。

同氏が言うには、アウェーの状態が脳の潜在能力を引き出すのだとか。アウェーの状態とは、普段とは違う場所に行ったり、経験値の浅いプロジェクトに参加したり、初対面の人と接したりすること。つまり、普段慣れないことや場所、人に接するのです。

そうすることで経験が増え、なおかつ「不測の事態」が起こりやすいため脳の潜在能力を引き出す訓練もできます。そうすれば、その都度「第六感=直感力」を鍛えることができるでしょう!

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自分には難しいのではないか? と思えるような仕事も第六感=直感力を鍛えるために、臆することなくどんどん挑戦してみてください。そうして、ビジネス社会をパワフルに生き抜いてくださいね!

(※)理化学研究所・脳科学総合研究センターの「将棋棋士の直観の脳科学的研究―将棋プロジェクト―」では、熟練した頭脳の持ち主が“直接に対象をとらえる”という観点から「直観」のほうを研究対象として選んでいるとのこと。ただし、前項で紹介した識者たちの著書には「直感」という文字が採用されており、また、直感も直観も顕在意識ではなく、大きくは無意識下だと考えられるので、この記事では同じ扱いにしています。

(参考)
チャディー・メン・タン著,‎ ダニエル・ゴールマン序文著,‎一般社団法人マインドフルリーダーシップインスティテュート監修,‎柴田裕之訳(2016),『サーチ・インサイド・ユアセルフ――仕事と人生を飛躍させるグーグルのマインドフルネス実践法 』,英治出版.
ジョン・C・マクスウェル著,‎弓場隆訳 (2013),『「人の上に立つ」ために本当に大切なこと』,ダイヤモンド社.
将棋棋士の直観の脳科学的研究-将棋プロジェクト-|FAQ
NHK プロフェッショナル 仕事の流儀|第20回 羽生善治(2006年7月13日放送)
PRESIDENT Online|「アウェー」の状態が脳の潜在能力を引き出す
TOCANA|【衝撃】人間には「病気の人を見分ける」第六感があることが科学的に判明! 微妙な変化を察知する能力とは? (最新研究)
ハフポスト|潜在意識と無意識の違い