経営学には「コーポレートファイナンス」という分野がありますが、これは企業活動における資金の流れを考える学問です。例えば企業が新たな事業に進出する際、「どのように資金を調達して投資し、利益を得るのか」を考えるための判断基準となる考え方です。
コーポレート・ファイナンスとは、 1.企業価値の最大化を図る上で、いかに資金を調達し、投資すればよいかを金銭的側面から検討・実行する活動 2.企業の財務活動のうち、事業に必要な資金を金融市場から調達するための活動の総称。
引用:MBA用語集|コーポレートファイナンス
本コラムは、コーポレートファイナンスの考えを私たちの生活に応用して「真に価値あるもの」を見つけ出す方法をご説明します。
今のお金と未来のお金の価値を比べよう
コーポレートファイナンスでは、お金の価値を時間軸で考えます。簡単に言うと、「未来に得るお金の価値は、今の同じ額とは違う」ということです。例えば、
1. 来年1万1千円もらえる 2. 明日1万円もらえる
であればあなたはどちらを選びますか? コーポレートファイナンスでは「未来のお金」と「現在のお金」の価値を比べる際に、単なる金額だけではなく「金利も加味する」ことで基準を統一します。今はほとんど0に等しい金利ですが、例えば1年につき5%の金利がつくとしましょう。
10,000×1.05=10,500
となり、仮に5%もの高金利だとしても1年後には10,500円。論理的には「来年の11,000円」を選択するのが賢く、一年後にもらえるのが同じ10,000円なら、明日の10,000円の方が価値があるということになりますね。 「金額そのもので考えない」という仕組みが分かりましたか?
※2016年現在 定期預金平均年利率(300万円未満)=0.017% 出典元:日本銀行|預金種類別店頭表示金利の平均年利率等
日常生活における判断
それではこの、コーポレートファイナンスの考えを私たちの生活に当てはめて考えてみましょう。私たちの日常生活においても、現在の投資と未来のリターンを比較する術を自分の中で持っておくことは重要です。 企業活動のお金の話では「金利」という平等な基準を考慮すればいいのですが、日常生活にはなかなかそういった基準がないので難しいですよね。
たとえば、「就職するか」「大学院に進学するか」という進路の判断に迫られた時。 国内の大学院か、海外の大学院かでもまた判断は変わってきますがどちらの場合も、今投資するもの(多くの場合時間とお金)と未来のリターンを、なるべく数値化して考えましょう。基準を持たずにいくら未来を想像しても、それは妄想か希望的観測にすぎず正しい答えは見えません。リターンを現在に、あるいは投資を未来の価値に変換することで、「本当に効果があるのはどちらか」が見えてきます。
このように、様々な局面における自らの判断基準を、しっかりと持つことをおすすめします。
*** 「複数の選択肢の価値を時系列に数値価して比較する」と言っても、数字だけですぐには割り切れないのが人間です。しかしここで長い間迷ったりすることは、大きなリスクの一つです。たとえば同じ期間、同じ金額を投資した海外留学でも、20代と40代では定年までの年数は大きく異なるため、リターンに差が出るでしょう。
これから自分に降りかかる未来をただ待つのではなく、自らしっかりとした比較軸を持ち、主体性を持って選択していってくださいね。
《参考文献》 コーポレートファイナンス入門 | 砂川伸幸 | 日本経済新聞社 コーポレートファイナンス | リチャード・A・ブリーリー、スチュワート・C・マイヤーズ | 日経BP社 MBA用語集|コーポレートファイナンス 日本銀行|預金種類別店頭表示金利の平均年利率等