近年、電子書籍の市場は大幅に拡大してきています。実際、電子書籍で読もうか悩んでいたり、電子書籍リーダーを買ってみたという方もいるのではないでしょうか?
なんとなく「便利そう」というイメージはあるものの、幼少期から慣れ親しんだ愛着がある紙の本と比べて、電子書籍がどのように便利なのか、効果的な使い方がわからない、という人も多いでしょう。
電子書籍は、使いこなすことができればとても便利なものです。ずっと紙の本を利用してきた筆者が、電子書籍を使ってみて気付いた、電子書籍のメリットと効果的な使い方について紹介します。
電子書籍のメリット・デメリット
2016年の電子書籍の売り上げは、前年比27.1%増の1,909億円と急成長を続けており、出版全体に占める割合も11.5%と年々増加する一方です。いずれ紙の本はなくなり、電子書籍の時代になるとまことしやかに言われている今、改めて電子書籍のメリットとデメリットを考えてみましょう。
【メリット】 ・並行読書ができる 大量の本を簡単に持ち運べるので、外出先でもいくつかの本を比較しながら読み進めることが可能です。出先で本を読了してしまって読む本がないということもありません。また、並行読書は読書の質を向上させるためにもオススメです。 Study Hacker|スピードアップだけじゃない! 「並行読書」をやってみたら、読書の “質” が大きく向上した話。
・場所を取らない アプリや電子書籍リーダーで管理するので本棚を必要としません。そのため、部屋に本棚を置く必要がなくなり、部屋の中が本で散乱することもなくなります。もちろん、持ち運びにもかさばりません。
・劣化しない 紙の本だと破れたり、雨に濡れたり、経年劣化することがありますが、電子書籍はキレイなままで使えるのも特徴です。汚れるのを気にすることなく何度でも読めます。
・さまざまな機能がある わからない単語が出てきても辞書機能を使用して、意味を調べることができるのです。辞書を引っ張り出してくる必要がなく、ストレスなく難しい本でもチャレンジして読めますね。また、電子書籍は人によっては読みにくそう、目が疲れそうだと思う人もいますが、文字の大きさや画面の光量を調節することができるので、紙の本よりも読みやすくなります。
・安い 紙の本と比べて価格が安いことも特徴です。紙の本は法律で定価で販売しなくてはいけませんが、電子書籍は対象外なので値下げやセールが可能。 例えば、今年本屋大賞を受賞した、恩田陸の「蜜蜂と遠雷」は2017年7月8日現在、Amazonでは紙の本が1944円なのに対して、電子書籍では1555円となっています。さらに購入方法などによってはポイントが778ポイント(50%分)付与されるなど、大変お得に入手することができるのです。また、青空文庫など無料で読める作品や月額での対象商品読み放題サービスもあります。
【デメリット】 ・読書特有の楽しみが半減する 紙の手触りや匂いなど、質感も読書の楽しみの1つです。しかし、電子書籍では機械的な質感しか味わうことができません。きれいなままで使える分、時間を感じにくく、懐かしさなどが減ってしまいます。また、平面的に表示されるため、厚みなどでページ数を実感しやすい紙の本と比べて、残りページ数がわかりにくいのです。
・リサイクルできない 読み終わって不要になっても売ることができないため、結果的に紙の本より高値になってしまう場合があります。読んだ本は売って、新しい本を買う資金にしているという人には紙の本の方が良いでしょう。
・電子書籍化されない本がある これは最大の問題点といえるでしょう。年々、電子書籍化された本は増えてきていますが、古い本はまだ紙の本でしか読めないことも多いのです。
電子書籍で読んだ方がいい本とその理由
電子書籍のメリットとデメリットがわかったところで、筆者が電子書籍で読んでみて良かったと思うジャンルを紹介します。
1.ビジネス書 娯楽として楽しむというよりも、知識や考え方を学ぶという側面が強いビジネス書。アンダーラインや付箋をつけたり、書き込んでいるという人も多いのではないでしょうか。
実は、電子書籍には書き込み機能があり、メモとしてコメントを残したり、重要だと思ったところに色をつけることができるのです。紙の本だと書き込むのに抵抗がありましたが、電子書籍では間違えて書き込んでもすぐに消せて、汚なくなることはありません。そのため、重要なところだけを再読するといったことがしやすくなりました。また、辞書機能を利用し、難しい言葉も簡単に意味を調べることができたので、さくさくと読み進めることができました。
2.コミック 冊数が膨大になりがちなコミックはかさばらない電子書籍が便利でした。現在、コミック市場において電子コミックは3分の1以上にのぼり、日本の電子書籍の8割をコミックが占めていることからも裏付けられます。いつでもどこでも好きな時に全巻一気読みすることができるのは、紙の本にはない電子コミックならではの強みと言えます。
3.書類 書籍ではありませんが、PDF書類の閲覧にもオススメです。インポートすれば電子書籍のアプリやリーダーで簡単に閲覧することができます。紛失や持ってくるのを忘れたという事態も避けられます。パソコンを持ち運べない時もさっと見直せるので、ぜひ活用してほしい機能です。
紙の本で読んだ方がいい本とその理由
そうはいっても、やはり紙の本で読んだ方がいいなと実感したジャンルもありました。それは、小説といったストーリー性のあるもの。主に2つの理由が挙げられます。
1.記憶に残りにくい 一気に読み進めている時はいいのですが、中断した本を途中から読み始める時、内容をはっきりと思い出せない時がありました。また、読み終わったときに全体的にふわふわした記憶しかなく、紙の本で読んだ時と比べて印象に残っていないと感じることがあったのです。
これは個人的な感想のようですが、ノルウェーのスタヴァンゲル大学の研究で証明されています。電子書籍で読むと紙の本で読むよりもストーリーの筋立てを覚えていないということが明らかになったのです。紙の本を読む場合、読み進めるにつれ本の片側のページが増え、もう片側のページが減っていく厚みの触感や視覚的な情報からもストーリーの進行を把握できます。これがストーリーの筋立ての把握を助けているのだろうと考えられているのです。
2.簡単に戻れない パラパラとめくって戻ることが簡単な紙の本と違い、電子書籍では振り返りが難しいのです。近いページであったり、大体の位置を把握していればある程度戻ることは可能ですが、あの場面をもう一度見返したいと思ってもどの辺かわからなければ1ページ1ページ連打するしかありません。パラパラっと見たり、2つの場面を見比べることができるのが、電子書籍にはできない紙の本の利点と言えるでしょう。
*** 筆者は断然“紙の本”派で、電子書籍はなんとなく読書に適さないと思っていましたが、実際に読んでみることで電子書籍の魅力を実感できたジャンルもありました。
電子書籍も紙の本も、それぞれにメリットとデメリットがあり、それぞれを生かして読み分けていくことで読書を効率化することができるでしょう。紙の本派だという人も、一度電子書籍を試してみると電子書籍の良さを体感できますよ。
(参考) 電子書籍情報まとめノート|出版統計資料グラフ 公益社団法人 全国出版協会|出版月報 2017年 1月号 PRESIDENT Online|電子書籍のお得な活用法 ITmedia Mobile|書物は手からも“読んで”いる? 電子書籍と紙の違いを研究 健康生活|電子書籍は目が疲れる、は嘘!電子書籍のメリットと正しい使い方 日本経済新聞|電子書籍が変える読書 世界市場4年で急成長