脳の仕組みから考える、効率的な記憶術

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子供のころ、漢字を覚えるために何度も何度も同じ漢字をノートに書かされた経験ってありませんか? 筆者は小学校の先生に「100回書いても忘れるなら101回書けばいい」なんて言われたりもしました。その時は子供だったこともあり、そんな方法でも記憶することができました。 しかしこの方法、人間の脳の仕組みから見ると非常に効率が悪いようです。今回はクレイクという学者が提唱した、脳の仕組みから考えられる効率的な記憶方法についてお話しします。

 

処理水準モデル

 

クレイクによれば、与えられた情報を脳でどれだけ深く処理したかによって、その情報を記憶していられる期間が変わるのだそう。人間の脳の処理の仕方は3つの方法に大別できます。それは以下の三つです。

1.形態的処理 2.音響的処理 3.意味的処理

このうち、1番の形態的処理が一番浅い処理の仕方で、下にくるにつれて深くなり、3番の意味的処理が一番深い処理の仕方であると考えられています。つまり何かを長期間記憶したいときは、それに関して意味的処理を行えばいいというわけですね。 これだけではわかりづらいと思うので、具体例を挙げてみたいと思います。

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「obduracy」という英単語を覚えてみる

 

ネイティブでもほとんど知らないらしい、obduracyという単語があります。この単語の意味は、辞書にはこのように書かれています。

【名詞】【不可算名詞】 1 強情,がんこ. 2 冷酷.

(出典:Weblio(研究社 新英和中辞典))

それではこの難単語を覚えることを例にとって、先ほどの3つの処理を具体的に説明していきます。

1.形態的処理 形態的処理というのは文字通り、覚えたい単語の文字に注目する覚え方です。oの次にbが来てその次は……。このような覚え方です。 「そんなあほな覚え方はしないよ」と思った人もいるかもしれませんが、この覚え方よくよく考えてみると、何も考えず機械的に100回書き続ける覚え方と同じことですよね。この方法では、脳は浅い処理しかしないため、長い記憶には至りにくいのです。

2.音響的処理 音響的処理とは、覚えたい単語の音に注目するやり方です。今回の場合であれば、obduracyを、アクセントに気を付けながら発音してみたり、ローマ字読みっぽく読み上げることが音韻的処理に当たります。この覚え方は、1の形態的処理よりは深い処理を要するようです。 がむしゃらに書きまくるよりは、ローマ字読みでもいいから発音して覚えた方が記憶に残るというわけですね。

3.意味的処理 意味的処理とは、単語の意味に注目する方法です。例えば、obduracyを使って文を作ってみるとします。この時、必ずobduracyという単語がどういう意味でどのような文脈に入れればいいのかということを考えますよね。これこそが意味的処理です。 今例に挙げた、「文を作ってみる」や、他にも、「語源を調べてみる」、「他にどんな意味を持っているか英英辞典で調べてみる」、「類義語や反義語を調べてみる」などがそれに当たります。 このような深い処理こそが記憶を持続させるのです。

*** いかがでしたか。意味的処理を行うためには、他の処理に比べてはるかに多くの時間や労力を要します。しかし、その分記憶が定着することが心理学的にわかっています。急がば回れ、ちょっと大変かもしれないですが、少し遠回りしてでも確実に知識を身につけたいものですね。

参考文献 The New York Times|50 Fancy Words 岡市廣成・鈴木直人監修 青山謙二郎・神山貴弥・武藤祟・畑敏道編(2014),『心理学概論 第2版』, ナカニシヤ出版,p.108-111.


早稲田大学先進理工学部物理学科所属。横浜サイエンスフロンティア高校卒業。大学では理論物理学を中心に日々勉強に励んでいる。

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