社内での会議やバイト・サークルでのミーティングなど、様々な場面で「話し合い」がなされています。 複雑な問題であればあるほど、関係する人々が力を合わせることが必要です。しかし日本の教育課程では「話し合いの進め方」について教えられることはほとんどないため、成り行き任せの話し合いになっていることが多いようです。 「時間だけが過ぎて何も決まっていない」、「終わった話題に逆戻り」、「あとから会議の記録を見返しても流れが分からない」といった経験を多くの方がしたことがあるのではないでしょうか?
そこで建設的な話し合いを行うために考案された手法がファシリテーションです。近年では、国内の様々な企業が会議にファシリテーター(ファシリテーションのスキルを身に付けた人)を呼び、効率的な話し合いを実現しています。
ファシリテーションとは
ファシリテーションという言葉は1950年代にアメリカで生まれました。個の能力に頼る従来型のリーダーシップの行き詰まりを打破するために、多くの意見を生かそうという試みで用いられ始めたのです。ファシリテーションとは
集団による知的相互作用を促進する働き
(引用元:「ファシリテーション入門」) と定義されています。
具体的には、相手の話を傾聴することで意見を引きだし、それらを会議の流れに沿って適切にまとめていくことです。多くの意見の中から関連性や因果関係を見抜き、メンバー全員と共有することで問題に対する認識を統一することができます。
ファシリテーションの3つのスキル
ファシリテーションのスキルは次の3つにわけることができます。 1.場のデザイン 2.対人関係 3.構造化
それぞれ個別に見てみましょう。
ファシリテーションスキル:場のデザイン
優れた問題解決をするために話し合いの空間を居心地良いものにすることです。会場選びから椅子や机の配置、備品の用意、さらには雰囲気づくりまで広範囲に及びます。 例えば役職が異なる人々同士が面接のように向かい合って座ったのでは、気軽に意見を出せる状況ではありません。しかし円卓を用いた場合では、そこに役職の壁が感じられないのでより多様な意見を聞くことができます。
場のデザインを行うにあたって以下の5つのポイントをあらかじめ考えておくことが有効です。 ・目的-活動の意味を明らかにする ・目標-目的を遂げるための到達点を設ける ・規範-組織の価値基準や行動指針を明確にする ・プロセス-目標に到達するための道筋を想定することで、個々のメンバーの活動の位置づけを把握 ・メンバー-問題解決に不可欠なメンバーをもれなく選ぶ
ファシリテーションスキル:対人関係
対人関係のスキルとは、メンバーそれぞれの意見を尊重する能力のことです。自らと対立する意見であっても、そこから新たな気づきが得られることも多々あるので、そこを理解して議論を深めていきます。
ファシリテーターの役割は、テーマに対する多面的な考えを引き出し、創造的なアイディアを生み出すベースを作ることです。この段階では、本筋とは関係のない情報交換や情緒的な会話も歓迎されます。そうやって揺らぎや混沌を繰り返しながら祖語理解を深め、安心して自由に議論できる場を作り、自律的に議論が進むようにしていきます。
(引用元:「ファシリテーション入門」)
ファシリテーターは会議を仕切るというよりはむしろ、「潤滑油のような役割」でメンバーからの意見を促すことであり、それが結果的に良い話し合いにつながるのです。
ファシリテーションスキル:構造化
構造化のスキルとは、論理を適切に伝達する能力のことを指します。主張に一貫性を持たせるために適切な例を挙げてイメージを喚起させたり、ファシリテーショングラフィックと呼ばれる一連の手法で視覚に訴えかけることが大切です。 対立する意見を収束に向ける際に、意見を理解するのに必要な情報が話し手から十分に伝達せれていないことは頻繁にあります。
そうすると、論理の空白を埋めるために聞き手が勝手な思い込みをし、後々大きな食い違いを生むことにもなりかねません。「キーワードの定義」や「事実と意見の切り分け」を行うことで参加者が共通の認識を持てるようになり、思い込みの入る余地を最小にする事が出来ます。
*** いかがでしたでしょうか。多様化する社会の中で、ファシリテーションのスキルを身に付けた人材の需要はますます高まっています。絵の得意な人がファシリテーションを学んで、それを職業にしている事例もあるようです。また、全国各地でファシリテーション講座が活発に開かれているので、ぜひ参加してみてください。 参考文献 ファシリテーション入門, 堀公俊, 日本経済新聞出版社 ビジュアル・ミーティング, デビッド・シベット, 朝日新聞出版