「え? そんな意味だったの!? 」と驚くような日本語がたくさんあります。自信満々で使っていた熟語や慣用句も、本来の意味を誤解したまま使っていたとしたら、とても恥ずかしいですよね。そうならないために、今回は誤用率が高い熟語・慣用句をいくつかご紹介し、その本来の意味について説明したいと思います。
*以下に挙げる誤用率は、文化庁が毎年実施している「国語に関する世論調査」を出典としています。
破天荒
平成20年度の調査によれば、60歳以上を除くすべての年代で実に70%もの人が誤用している熟語です。誤用例は「豪快・大胆な様子」です。心当たりがある人も多いのでは? 本来の意味は
前人のなしえなかったことを初めてすること。また、そのさま。前代未聞。未曽有(みぞう)。
(引用元:コトバンク|デジタル大辞泉 破天荒) 語源は中国の故事からのようです。
姑息
70%以上の日本人が誤用していることが判明しました(平成22年度調査)。「卑怯」という意味で使っている人が圧倒的に多かったのです。気になる本来の意味は
一時の間に合わせにすること。また、そのさま。一時のがれ。その場しのぎ。
(引用元:コトバンク|デジタル大辞泉 姑息) 姑息の「姑」はしばらく、「息」は休むという意味があるため、姑息は一時しのぎという意味になるようです。
にやける
世代によっては80%以上もの人が誤用している言葉です(平成23年度調査)。にやけるといえば、軽く笑う感じがしますが、本来はそのような意味ではありません。
男が女のように色っぽい様子をする。(男が)変ににやにやして弱々しい態度をとる。
(引用元:コトバンク|大辞林 第三版 にやける) なんと女性には使えない、男性特有の表現でした。ちなみに、にやけるは漢字で「若気る」と書くようです。
失笑する
若い世代の80%以上が誤用しているという言葉です(平成23年度調査)。筆者のまわりでも誤用している人を度々見かけます。漢字で「笑いを失う」と書くことから、呆れるという意味だと勘違いしている人が多いようです。本来の意味は
思わず笑い出してしまうこと。おかしさのあまり噴き出すこと。
(引用元:コトバンク|デジタル大辞泉 失笑) 誤用の意味とはだいぶ違いますよね。「失笑」という言葉を間違えて使って、本当に「失笑」されないようにしましょう。
檄(げき)を飛ばす
若い世代では80%近くの人が誤用しています(平成19年度)。誤用例としては「元気のない人を励ましたり活気づけたりすること」。本来の意味は
自分の主張や考えを広く人々に知らせ同意を求める。また、それによって人々に決起を促す。
(出典:コトバンク|デジタル大辞泉 檄を飛ばす) 「檄を飛ばす」のは誰かのためにではなく、自分のためにすることなのですね。ちなみに、「檄」の意味が
自分の主張を述べて同意を求め,行動への決起を促す文書。
(出典:コトバンク|大辞林 第三版 檄) ここから檄を飛ばすという慣用句が上記のような意味となるというわけです。
敷居が高い
30代までの誤用率が70%以上と、かなり多くの人が誤用しているようです(平成20年度)。しかし面白いことに40代からは誤用率がぐっと下がり、50~60代では正しく使っている人の割合のほうが誤用率の倍近いという結果に。今まさに、浸透する意味が移ろいつつある言葉だと考えられます。 誤用例としては、「高級・上品すぎて近寄りがたいこと」。本来の意味は、
不義理や面目のないことがあって、その人の家へ行きにくい。
(出典:コトバンク|デジタル大辞泉 敷居が高い) もし、誤用して「あの店は私には敷居が高すぎる」などと言ってしまうと、本来の意味しか知らない人から、この人はあの店で何かやらかしたのかな? と勘違いされてしまう恐れがありそうです。使用の際には十分に気をつけましょう。
*** いかがでしたか。ほかにも、「爆笑」「役不足」「おもむろに」「(話の)さわり」など、誤用率が高い言葉がたくさんあります。調べてみると面白いかもしれません。
言葉は時代を追って変遷していくもの。ですから、言葉の意味が変化して定着するのも自然の成り行きかもしれませんが、本来の意味を忘れてしまうのは残念なことです。時代に合わせた言葉を使いながらも、本来の意味を大切にし、次世代へ受け継いでいきたいものです。
参考 文化庁|国語に関する世論調査の結果について コトバンク|デジタル大辞泉 破天荒 コトバンク|デジタル大辞泉 姑息 コトバンク|大辞林 第三版 にやける コトバンク|デジタル大辞泉 失笑 コトバンク|デジタル大辞泉 檄を飛ばす コトバンク|大辞林 第三版 檄 コトバンク|デジタル大辞泉 敷居が高い