日本語には、「え、そんな意味だったの!?」と驚いてしまう、意外な表現がたくさんあります。自信をもって熟語や慣用句を使っていても、本来の意味を知らないと恥ずかしい思いをしてしまうかもしれません。
この記事では、誤用されがちな熟語・慣用句を厳選してご紹介します。正しい意味を知って、あなたの日本語力をさらに磨きましょう。
誤用されがちな日本語1:破天荒
「破天荒」という言葉の意味を知っていますか?
大胆で型破りな様子……ではありません。小学館の「デジタル大辞泉」を見てみましょう。
前人のなしえなかったことを初めてすること。また、そのさま。
(引用元:コトバンク|破天荒)
誰もできなかったことをする、というのが、破天荒の意味なのですね。
型破りな人間だからこそ、誰もできなかったことを成し遂げられたのかもしれません。しかし、型破りであること自体は「破天荒」ではないのです。
破天荒の意味を知らなかったのは、あなただけではありません。
文化庁が全国の16歳以上を対象として2021年に行なった「国語に関する世論調査」において、破天荒の意味を正しく答えられたのは、回答者3,794人のうち23.3%でした。65.4%は「豪快で大胆な様子」と答えたのです。
あなたも今日から、23.3%の正解者の仲間入りです。自信をもって「破天荒」を使ってみてください。
誤用されがちな日本語2:姑息
「姑息」も、本来の意味とは異なって使われがちです。
「姑息な手段」と聞くと、「卑怯な手段」というイメージが浮かびませんか? 2011年に行なわれた「国語に関する世論調査」では、70.9%が姑息の意味を「卑怯」と答えました。
しかし、本来の意味は別にあります。小学館の『精選版 日本国語大辞典』を見てみましょう。
しばらくの間、息をつくこと。転じて、一時のまにあわせに物事をすること。
(引用元:コトバンク|姑息)
姑息とは、「間に合わせ」や「一時しのぎ」という意味なのですね。「姑息な手段」がネガティブな意味であることに変わりはありませんが、「卑怯」ではないのです。
誤用されがちな日本語3:失笑
「失笑」も、別の言葉と意味が混じりがちな言葉です。「苦笑」のように、呆れて苦笑いする……というイメージがないでしょうか?
『精選版 日本国語大辞典』で本当の意味を確認してみましょう。
思わずふき出して笑うこと。
(引用元:コトバンク|失笑)
「プッ」という吹き出し笑いこそ、失笑なのですね。呆れたりバカにしたり、といったニュアンスはありません。
2012年に行なわれた「国語に関する世論調査」だと、正しい意味を答えられたのは27.7%でした。5人に1人は知っていたのですね。
これまで失笑を「呆れ笑い」の意味で使っていたあなたも、今日からは「失笑は吹き出し笑い」と覚えておきましょう。
誤用されがちな日本語4:檄を飛ばす
「檄(げき)を飛ばす」という表現を見たことはありますか? 「激励する」や「活を入れる」と同じ意味で使っている人が多いように思います。
じつは、これも誤用なのです。2008年に行なわれた「国語に関する世論調査」で、72.9%もの人が「元気のない者に刺激を与えて活気付けること」と回答しました。
『精選版 日本国語大辞典』を引いてみると……。
人々を急いで呼び集める。また、自分の主張や考えを、広く人々に知らせて同意を求める。
(引用元:コトバンク|檄を飛ばす)
「激励」とはまったく違うことがわかりますね。そもそも「檄」とは、古代中国において招集などの目的で使われた木札だそうです。
誤用されがちな日本語5:敷居が高い
「敷居が高い」は、誤用されがちな言葉としてもはや有名かもしれませんね。老舗の料亭や高級ファッションブランド店に対して使いたくなる言葉です。
まずは「デジタル大辞泉」で本来の意味を見てみましょう。
不義理や面目のないことがあって、その人の家へ行きにくい。
(引用元:コトバンク|敷居が高い)
「入りづらい」という意味ではあるものの、「自分が不義理をしてしまった」という理由があるのです。そのため、「高級そうだから」「自分では場違いかもしれないから」という理由で使うのは、本来は誤りなのですね。
2009年に実施された「国語に関する世論調査」では、「高級過ぎたり、上品過ぎたりして、入りにくい」と答えた人が45.6%。「相手に不義理などをしてしまい、行きにくい」と正しく回答した人は42.1%でした。
これまで紹介してきた言葉に比べると、本来の意味を知っている人は多いようですね。
ただし、年代別に見ると大きな差があります。「高級過ぎたり、上品過ぎたりして、入りにくい」と答えた割合は、20代で72.8%、30代で73.5%だったのです。
「敷居が高い」の本来の意味、あなたはご存じでしたか? 次回から意識して使ってみてはいかがでしょうか。
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誤用されがちな熟語や慣用句を紹介しました。あなたの語彙力を磨く助けになったでしょうか?
とはいえ、言葉の使われ方は変化していくもの。辞書に載っている「正しい意味」で使っても、相手に伝わらなかったり誤解されたりすることもあるでしょう。
話す相手や状況に応じて工夫してみてくださいね。
(参考)
コトバンク|破天荒
文化庁|令和2年度「国語に関する世論調査」の結果について
文化庁|平成22年度「国語に関する世論調査」の結果について
コトバンク|姑息
コトバンク|失笑
文化庁|平成23年度「国語に関する世論調査」の結果について
文化庁|平成19年度「国語に関する世論調査」の結果について
コトバンク|檄を飛ばす
コトバンク|敷居が高い
文化庁|平成20年度「国語に関する世論調査」の結果について
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STUDY HACKER 編集部
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