あなたのまわりに、やたら頑固な人はいませんか? こちらが何か働きかけても、はじめから聞く耳をもたないというようなことさえあるかもしれません。
例えば、私はゲームの実況動画をよく見ています。友人に、「編集が凝ってて面白いし、戦略が大胆でワクワクする。だから見てみて!」などと力説しても、「あーはいはい、ゲームね」と言われなかなか見てもらえません。これは、彼らが「ゲーム=子供がやるもの」という一種の「固定観念」を持っているからだと考えられます。これを無くさなければ、私は彼らに動画を見てもらうことなどできません。
このように、私たちは、固定観念を前にすると無力になってしまいます。どれだけ力説してものれんに腕押しで、相手に何かを実行させるどころか、話を聞いてもらうことすらできないのです。プライベートならまだしも、仕事でそのような固定観念があると、議論が成立しません。せっかく意見を出しても、頭ごなしに否定されては、やってられませんよね。
では、相手の固定観念を取っ払って議論の土俵に持ち込むためには、どうしたらいいのでしょうか? 今回はその方法を皆さんにご紹介します。
なぜものの見方は固定化するのか
ものの見方が固定化してしまうのには、脳の働きが大きく関わっています。
まず押さえておきたいのが、脳は自動的に情報を取捨選択しているということ。
例えば、あなたが新しいスマートフォンを買おうと思ったとします。そうすると、いつもなら気にも留めていなかったスマートフォンの新製品の広告やCMが、自然と目に留まるようになりますよね? このように、優先順位の高い事柄に関連した情報は自然と脳内に取り入れられ、反対に低い事柄は、見聞きしても情報として取得しなくなるのです。
これは、スコトーマの原理と呼ばれています。
この例の場合は、脳内でスマートフォンの優先順位が上がったため、それに関する情報が脳内に入ってくるようになったということですね。
これを応用すると、一度脳が「悪い」「必要ない」などと判断した情報は、「悪い」「必要ない」ものとしてまとめられて、脳が見逃してしまうということになります。脳内で情報の選択に関する条件反射が起きているのです。これが、ものの見方が固定化してしまう原因のひとつ。
相手の固定観念を解くために、相手に喋らせよう
では、否定的な固定観念を持つ人と話したいとき、どう話を進めるべきでしょうか。まずは、「偏見」を解いてもらわないと議論が始まりませんよね。
そういった場合は、なぜ自分の意見を否定するのか、質問してみるのがおすすめ。
先ほど述べたように、固定観念を持っている人は、脳の条件反射で意見を否定しているので、そこには「論理的な矛盾」や「論理の飛躍」が存在する可能性があります。脳が「○○という情報は要らない」と判断してシャットアウトしていても、そこには合理的な理由がないかもしれないのです。
逆に、そのような矛盾や論理の飛躍が見当たらなければ、それはまっとうな「意見」であると言うことができます。
相手に質問することの良い点は、相手に喋らせることが可能になること。相手は、質問に答えながら話しているうちに、実は自分の考えは偏見なのだということを気づいてくれるのです。というのも、人間は、頭の中の考えを言葉や文字でアウトプットすることで、頭の中を整理し、自分の考えていることをよりはっきりと理解することができるようになります。質問を投げかけることによって、相手に論理の矛盾を理解させることができれば、偏見に気付き、その偏見を解くことができるというわけです。そうなれば、フラットな状態から議論をスタートすることができますよね。
私が冒頭で挙げた例であれば、友人の頭の中には、「ゲームは子供の時にやっていた→だから子供だけがやるものだ」といった論理の飛躍が存在しているかもしれません。私は、友人にその飛躍に気付かせることで、動画を見てもらうことができました。その動画が面白いと思ってもらえるかどうかは、また別の問題ですが、動画の内容に関して語り合えるようになっただけでも、一歩前進と言っていいでしょう。
相手にフラットにものを見てもらい、同じ土俵に立って議論をするためには、「相手に喋らせる」ことが有効です。もし頑固な人がいたら、試してみてくださいね。
(参考) 錯覚する脳の仕組み|脳は意識を集中していないものを遮断する ネットビジネスの稼ぎ方を具体的にわかりやすく|スコトーマとRasについて理解して夢をかなえよう 理化学研究所|「効率的選択」で脳は注意を向け集中を高める 気になることを調べてみましょう|脳は情報を取捨選択している