「疑似相関」に惑わされない! 本当の関係性を見抜く、"論理の力" を身につける。

「このセミナーに参加した4人に1人が第一志望に内定しました」「赤ワインを飲むと寿命が伸びる」「ランニングをすると年収が上がる」等々、「○○をすれば××になる」というような文言はいろいろなところで目に入ります。そしてそれらの多くは、もっともらしいことを言っているとして人々に受け入れられています。皆さんの中にも、そうした因果関係をつい信じてしまうという方はいることでしょう。

しかし、まっとうに見えるこれらの言葉が、それを発信する人たちにとって利益となるよう、故意に情報を捻じ曲げて書かれてているということが多々あります。それは、「○○すれば」にあたる部分にわざと本質ではないデータを使い、印象を変えてしまうというやり方。今回の記事では、そのようなニセの因果関係とはいったい何なのか、そしてそれを見抜くにはどうすればよいかをお伝えしていきたいと思います。

因果関係の特定三原則

やや哲学的な議論にはなりますが、因果関係を確定する際には、次の3つの原則が成り立っていることが条件となります。まずその3つとは何かを「電気が突然消えた」という例をもとに解説していきます。

1 原因は結果よりも時間的に先行していなければならない 電気が消えた原因は、誰かがスイッチを切った、もしくは電球が切れた、といったことが考えられます。これらに共通することは、当たり前ですが、「電気が突然消えた」という結果よりも先に発生しているということ。この順番が逆になることはありえません。

2 原因とみなされている現象も、結果とみなされている現象も、ともに変化が確認できる 電気が消えた理由が、電球が切れたからだったとします。その場合、「電気が消えた」という変化と、「電球が切れた」という変化が同時に起こっていることなのだということが確認できます。

3 原因とみなされている現象以外に、重要と思われるほかの要因が影響していないか 「電気が消えた」という結果の原因には、電球が切れたことのほかに、停電や、誰かがスイッチを切ったということが考えられます。原因を特定するには、それらの考え得る可能性を排除することが必要です。誰かが電源を切ったという可能性であれば、そのスイッチのあたりには誰もいなかった、ということによって否定され、停電したという可能性であれば、ほかの電子機器は動作し続けている、というようなことで否定されます。

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疑似相関を見破る方法

疑似相関、つまりニセの因果関係が作られるのは、さきほど3番目で紹介した、ほかの要因との関わりという部分においてです。では、それを見破る方法について見ていきましょう。

ある結果に対する原因の候補になっており、かつ1と2を満たすものを考えます。そうしたら、直接の原因であろうもの以外を排除して考えてみましょう。それでもなお、結果に対する原因であると最初に考えたものの影響力がなくならないことを確かめればよいのです。

わかりやすい誤った因果関係の例を挙げます。「アイスクリームを食べる人が増えると、熱中症患者の数も増える。つまり、アイスクリームが熱中症の原因となっている」という説が唱えられたとしましょう。

「熱中症の患者が増えた」という結果に対する原因として考えうるのは、アイスクリームの他には気温の上昇などが考えられます。そこで、その気温の上昇が一切ないという条件で考えてみます。そこで、アイスクリームの売り上げの変化と熱中症の患者数の関係を考えてみましょう。

この例では、気温がそれほど上がらない北欧の国フィンランドを考えてみます。フィンランドは実は、世界で一番アイスクリームの消費量が多く、年間消費量は日本人のおよそ2倍にもなるそう。しかし、日本と比べて熱中症患者が極端に多いかといわれると、おそらくそうではありません。すると、アイスクリームが熱中症の原因である可能性は低くなります。

そして、さきほど排除した気温の上昇という条件をもとに戻して、気温上昇と熱中症の患者数を比較します。そこで変化がだいたい同じだった、とすれば、熱中症の患者の増加の原因は気温の上昇が原因だった、明らかになるのです。

*** 何かの因果関係に触れるとき、統計的なデータやもっともらしい調査結果などを一緒に出されると、私たちはどうしてもそれを正しいものと信じてしまいがちです。疑いの目、とまでは言わずとも、何事も鵜呑みにせずに立ち止まって考える癖をつけることが大切です。

(参考) 苅谷剛彦(2002),『知的複眼思考法 誰でも持っている創造力のスイッチ』,講談社. Wikipedia|疑似相関 地球の歩き方|フィンランド人はアイスクリームがお好き

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