【書評】「いかにして問題をとくか」数学の問題解決技術を実社会でいかす方法を学ぶ

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「何のために数学を学ぶのか」という問いに、あなたは明快に答えられるでしょうか。「論理的思考力が実社会で役立つから」というのは知っていても、真に納得できているでしょうか。

確かに、学生が数学を学ぶそもそもの目的は、論理的思考力を養うことにあるのかもしれません。しかし、問題集の解答の丸暗記や、語呂合わせで覚えた解法を問題に当てはめるなど、場当たり的な勉強で試験を乗り切るだけの学生がいることもまた事実。そういった学生は、試験のための数学を一生懸命に勉強しても結局数学は苦手なまま、という状況に陥りがちです。

今回ご紹介する本ほど、「数学が現実世界に生きる」ことを実感させてくれるものは他にはありません。1954年初版の、半世紀以上にわたるロングセラーです。

 

いかにして問題をとくか

G. ポリア 著・柿内 賢 訳 丸善 1975年

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(以下引用は本書より)

 

 

 

 

今なお数学教育者や学生から多くの支持を集める名著です。英語版が出版されたのが1945年のことですので、その歴史の深さには驚かされます。この本が根強い人気を博している理由は、その内容が全く古びないから。数学の問題の解き方を解説する、というのがこの本の最も大きな目的の一つですが、一般の数学参考書とは違い、公式や数式の羅列はありません。

「未知のものは何か、与えられているものは何か、条件は何か、結果や方法を何か他の問題に応用することができるか」といったように、より一般化された「考えるための教訓」とも呼べるものを解説しています。受験問題に流行り廃りはあっても、物事の考え方の根幹となるものは変わらないもの。それを解説しているからこそ、長く多くの人に愛される本になったのでしょう。それでは、具体的な本の内容を紹介していきたいと思います。

 

社会に応用できる実感が湧く! 問題解決ための「教訓」

 

この本で紹介される問題を解くための「教訓」は、非常に一般的なものです。

よい考えを探すこと―どうすればよいか―問題を色々な角度から考察し、すでに知っている事柄との結びつきを探すべきである。各部分の違いを強調し、違った部分を調べ、また同じ部分を違った仕方で研究し、色々な仕方でいろいろな角度から検討したりすべきである。
計画を実行すること―どうすればよいか―(中略)もしも問題が非常に複雑な場合には、まず全体を大きな段階にわけ、その各々を更に細かい段階に分けることを考えよ。最初は大きな段階を、そして後に細かい段階を調べるようにすればよい。

こうして見てみると、とても数学の参考書の内容とは思えません。そう、数学における問題解決の方法と、現実社会での問題解決の方法は、本質的に共通しているものなのです。この本に書いてあるのは、当たり前のことかもしれません。しかし、当たり前のことを読んで確認し改めて理解する、という非常に大切なステップを踏むことができるでしょう。

 

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教える側と学ぶ側、双方にとって有益な書

 

この本が面白いのは、学ぶ人だけでなく教える立場にある人にとっても役立つ内容であるということです。

この本の前半部分では、学生が問題を解く時に考えるべきこと、実際に考えていることを順に沿って紹介しています。ですから、「こういう場合には学生はこういう風に考えているから、教師は邪魔してはいけませんよ」「こういう時にはこんな質問をすれば、学生が良い気づきをしてくれるでしょう」といったように、教える側がどうあるべきかについても解説しているのです。

学生が考えをまとめるのを助ける為には、できればもう一度一般的な問いや注意から特殊なものへと帰っていく手続をくり返せば良い。(中略)しかし注意はできるだけ簡単で、自然で、しかも一般的なものであり、その上リストは短いことがのぞましい。(中略)教師の質問は、学生自身が自分に問いかけるようなものであることがのぞましい。

この本を読めば、教える側と学ぶ側が同じ考えを共有すべきだということがよくわかります。数学の問題の解き方はもちろんのこと、数学を学ぶことは社会を生きていくうえで有益なことだということ、数学における考え方はビジネスにも応用できるということをも、より説得力をもって教えることができるでしょう。数学を学ぶ学生だけでなく、教える立場にある人にもぜひ読んでほしい一冊です。

 


東京大学理科二類所属。県立浦和高等学校および駿台予備校出身。小さいころから自然や生き物に関心を持ち、高校時代に読んだ福岡伸一の「生物と無生物のあいだ」に刺激をうけ、分子生物学を志す。テニス歴6年。AKB48の大ファン。

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