みなさんは、先輩や上司から「自分で考えて行動しなさい」と叱られた経験があるでしょうか?
言われた仕事ばかりをこなしているとなかなか自分で考える機会が少なく、どうして良いか分からないということもあるかもしれませんね。
しかし、考える力を鍛えることができれば、きっと今までよりも社内で役に立てるようになるはずです。そこで今回は、「考え抜く力」の重要性とその身に付け方についてお伝えします。
「考え抜く力」とはなにか
そもそも、「考え抜く力」とは一体どのような能力なのでしょうか。
経済産業省によれば、「考え抜く力」は2006年2月に定義づけられた「職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力」のうちの1つであるのだそう。
また「考え抜く力」はさらに、現状を分析し目的や課題を明らかにする「課題発見力」、課題に向けた解決プロセスを明らかにし準備する「計画力」、新しい価値を生み出す「創造力」の3つの能力要素を含んでいます。
どの要素も、ビジネスパーソンにとっては必要不可欠なものばかりであると言えるでしょう。
仕事における「考え抜く力」の重要性
奈良文化女子短期大学教授である石田秀朗氏は、ビジネスパーソンの上がらない給与の現実から、労働集約的な仕事よりも創造力の高い仕事へ意識を移行していくべきだと伝えています。そして、新しい価値を創造し仕事の質を上げていくためには「考え抜く力」が必要となるのだそう。
自分で考えることを放棄し、先輩や上司の意見に従ってばかりいると緊急の事態に対処できない可能性があります。働くモチベーションも下がってしまうでしょう。
また自分が部下を持った時に自分で考えてこなかったことが仇となり、適切なアドバイスをしてあげられないかもしれませんよね。
「考え抜く力」がなければ、どんどん仕事のできないビジネスパーソンになっていってしまうのです。
「考え抜く力」を身に付ける方法
では、私たちはどうすれば「考え抜く力」を身に付けることができるのでしょうか?
1.「全体」を捉える 株式会社スコラ・コンサルトのプロセスデザイナー代表の柴田昌治氏は、「考え抜く力」を身に付けるためにはまず全体を捉える必要があると伝えています。
たしかに、突き詰めて何かを考える際には、あらかじめ考える範囲を限定しておいた方が良いでしょう。
例えば、職場で生じた課題なら、自分の立場や仕事の状況に応じて解決策が変わってくるはず。会社全体なのか、部署内のことなのか、また個人の問題なのか、範囲を絞っておくことで現実的な解決法を考えやすくなります。
慣れてくるまでは、できるだけ狭い範囲について考えてみてください。
2.「自分の意見」を持つ 学生の頃とは異なり、仕事においては答えのない問いを扱うことが多くなります。そうは言っても、答えのない問いについて自分の意見を持つことを苦手だと感じている方はもしかすると多いかもしれません。
しかし、自分の意見を持つことは考え抜くための良いトレーニングになりますよ。
例えば、会議で出された案について「そのアイデアを実行するにはリスクが高いのではないか」と発言したとします。ただ、それが相手のアイデアに対するなんとなくの印象だとしたら、考え抜く力を持っていることにはなりません。どうしてリスクが高いのかを十分な根拠を持って説明することが必要なのです。
そうすれば、その意見が正しいかどうかにかかわらず、1つの視点として受け入れられるでしょう。
3.「根拠」を深掘りする 慶應義塾大学講師である狩野みき氏によれば、自分の考えに対して必ず論理的な根拠を持つことが「考え抜く力」を鍛えるのに効果的であるのだそう。
最初はどんな小さなことでも構いません。例えば、「今日の晩ご飯には魚が食べたい」と思ったとしましょう。その根拠を考えられますか?
「テレビ番組で見た魚が美味しそうだったから」かもしれません。では、なぜ魚が美味しそうだと感じたのでしょうか。「ちょうどその時お腹が空いていたから」、もしくは「最近はお肉ばかりで魚を食べていなかったから」という理由もあり得ますよね。
このように根拠を持つ練習を積むことで、仕事においても「なぜその作業が必要なのか」、「会議でなぜその意見が出てきたのか」などとより深く考える癖が身に付くのです。
*** 自分で考える機会を増やして「考え抜く力」を身に付け、それを仕事に生かすことができれば、きっと社内での評価が上がるでしょう。
(参考) 石田秀朗(2011),「『考え抜く力』を向上させるプログラムの検討 —ブルー・オーシャン戦略を活用して—」, Study reports of Narabunka Women’s Junior College 42, pp.11-26 THE21オンライン|「優等生社員のワナ」第2回 「さばく力」から「考え抜く力」へ ITmediaエグゼクティブ|グローバルで活躍するための「考え抜く力」 日本実業出版社|日本人には、あと一歩「自分で考える力」が足りない