みなさんはこの世で一番速いものというと何を思い浮かべますか? やはり光でしょうか。作家ロバート・フローマンは『このよでいちばんはやいもの』という絵本の最後で、光よりも速いものが一つ存在すると言っています。それは私たちの想像。一光年以上も遠い物質を今この瞬間、想起することができるからでしょう。
これはちょっとした屁理屈ですが、実際に現実世界で光よりも速いものが理論上は存在しうるのだそうですよ。今回は光速について考えてみます。
そもそも光速とは
光速はその名の通り光の速さを意味していて、その速さは約30万キロメートル/秒です。1秒間に地球を7周半回ることができるというのは有名ですよね。m(メートル)という単位は光速から定義されていたり、光速は変化しない(光速不変の法則)と言われたりと光速は現代物理学の基礎となっているんです。 アインシュタインが提唱した「特殊相対性理論」では、一般に物質は光速を超えることができないとされています。その理由は、相対論における方程式が破綻してしまうからだそう。
では冒頭で述べた、「光速を超えうる物質」とはどんなものなのでしょうか?
光よりも早い粒子の存在?
「タキオン」というのはジェラルド・ファインバーグによって命名された超光速粒子の一つ。相対性理論に反しないように考察された粒子であるため、一般的な粒子とは真逆の性質を持つそうです。例えば、質量が虚数であったり、エネルギーを失わうことで加速したりなど。
ターディオンはどんなに加速しても光速を越えることはないが、タキオンはどんなに減速しても常に超光速であり光速以下になることはない。また、ターディオンがエネルギーを与えれば与えるほど加速していくのに対して、タキオンはエネルギーを失えば失うほど加速していく。 タキオンのエネルギーと運動量は測定可能な物理量なので実数であることが期待されるが、上の性質を持つならば、その静止質量および固有時は虚数となる。
(引用元:Wikipedia|タキオン)
ターディオンとは一般的な粒子の別名です。もしもこの粒子が本当に存在すれば、理論上は過去に情報を送ることができるようになるそうですよ。ただ、光速に近い速度で動きながらタキオン粒子を観測し、タキオン粒子を発信元に返す機械が必要ということで実現は厳しそうです。
この宇宙は光速以上の速さで広がっている?
ビッグバンに始まり、宇宙がずっと、今この瞬間も拡大を続けているというのは有名な話ですよね。2011年にノーベル物理学賞を贈られた研究によれば、現在も宇宙は膨張し続けていて、その膨張は加速しているといいます。宇宙に存在する銀河の遠ざかってゆく速度を計算すると、何と光速を超えて地球から遠ざかってゆく銀河が存在するようなのです。
それどころか、特定の距離(ハッブル距離と呼ばれる)よりも遠くの銀河は秒速を超えるスピードで後退する。
(引用元:C. H. ラインウィーバー, T. M. デイビス(2005), ビッグバンをめぐる6つの誤解, 日経サイエンス.)
ハッブル距離はハッブル定数の測定値から計算でき、140億光年になるそうです。先ほど相対性理論では物質は光速以上に加速できないと言っていたのにと疑問に思う方もいるかもしれません。しかし、銀河が遠ざかる速度は空間が広がることによる速度であるため、相対性理論に矛盾しないそうですよ。 また、これだけの速さの膨張を説明するためにダークエネルギーという、新たなエネルギーが考察されたりしています。いつか宇宙の謎を解明できる日が来るかもしれませんね。
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残念ながら、どちらもまだ理論の段階であり、真実かどうかは定かではありません。ですが、どちらの理論も夢のある研究ではないでしょうか。宇宙にもこの世にも、まだまだ私たちが知らないことが隠されていますね。
(参考)
メルヘンハウス|スタッフが選ぶこんな本
EMANの物理学・相対性理論|タキオンがあれば過去に情報を送れる
KEK|「加速膨張する宇宙」2011年ノーベル物理学賞の意義 前編
Wikipedia|光速
Wikipedia|タキオン
C. H. ラインウィーバー, T. M. デイビス(2005), ビッグバンをめぐる6つの誤解, 日経サイエンス.