あなたは、お腹がすくと不機嫌になりますか? CMなどでも題材にされていたので、そう自覚する人は多いかもしれませんね。「自分が食いしん坊だから」と、理由づけている人も少なくないでしょう。
ところが、どうやらその状況は、造語が辞書に載るほど誰にでも起こり得るようです。しかも、ある条件が重なると、よりイライラして否定的になってしまうのだとか。空腹時の感情に関する研究と、仕事をするうえで気をつけるべき点を説明します。
新しい用語「ハングリー[hangry]」とは?
ハングリー(hungry)は「空腹」の状態を表すものですが、ハングリー[hangry]は、hungryとangryを合体させた造語で、「お腹が空いてイライラしているさま」を表しています。この言葉は、オックスフォード辞書にも受け入れられたとのこと。
米ノースカロライナ大学チャペルヒル校で心理学と神経科学部門の博士課程を学ぶジェニファー・マックコーマック氏らは、空腹によってもたらされるイライラ[hangry]の状態が、なぜ発生するのか、どう感覚に影響するのかを調べました。
空腹時に“負の刺激”で否定的傾向が増幅
空腹時、わたしたちの体には、ストレスホルモンであるコルチゾールや、神経伝達物質のアドレナリンが分泌されます。これらはいずれもストレスに関連しており、空腹感が強いほど、その緊張や鋭さが増すのだとか。
マックコーマック氏らは被験者に、ポジティブ・ネガティブ・ニュートラルといった3つの画像を見てもらったあと、絵文字や漢字を見せて楽しいものなのか、不愉快なものなのか、意味を推測してもらったそう。すると、お腹が空いた状態で最初にネガティブな画像を見た人は、お腹が満たされていた人を含む他の被験者に比べ、否定的に推測する傾向が見られたのだとか。
お腹がすいた状態でも、ポジティブあるいはニュートラルな画像を最初に見た場合は、その傾向は見られなかったとのこと。したがって研究者らは否定的になる条件を、「空腹時に“負の刺激や経験”に直面したとき」と結論づけました。
空腹時に感情を刺激するとさらに影響大
さらに研究者らは、被験者をわざと怒らせる実験を行いました。つまり、意図的にハングリー[hangry]の状態にしたわけです。
まず最初に、被験者を「数時間なにも食べていないグループ」と「しっかり食べてお腹が満たされているグループ」の2グループに分け、全員にエッセイを書いてもらいました。そのあと、退屈なコンピューターの課題を延々と行ってもらい、さらには意図的にコンピューターをクラッシュさせてしまったのです。そして、故障について被験者を責めたあと、その作業をやり直すよう求めたのだとか。それから最後に、実験が適切に行われたか、調査官の態度は公平だったかなどのアンケートに答えてもらったそう。
その結果、空腹で、なおかつ作業の前に書いたエッセイで感情的な話を扱った人々は、怒りやストレス、否定的感情を持つ傾向があったとのこと。逆に、空腹の有無関係なく、エッセイで感情的な話を扱わなかった人々は、否定的でヘイトフルな感情はあったもののストレスは少なかったそうです。
つまり、空腹時の“負の刺激”に加え、エッセイの執筆によって感情を刺激されたことで、影響がより大きくなってしまったのです。嫌な感情ほど記憶によく残るもの。ダブルで“負の刺激”を与えられたようなものです。
仕事をするうえで気をつけるべき点
この研究では、空腹が否定的な傾きの引き金になること、“負の刺激”がハングリー[hangry]の否定的かつ不快な感情を強化する、と結論づけられました。しかし、ほとんどの人は、イライラの増幅が空腹のみのせいだと思い、環境や行動で得た、“負の刺激”からの影響だとは気づいていません。
したがって、たとえば空腹時に売り上げの低迷を知らされ、そのまま昼食をとる間もなく取引先の担当者と話を始めてしまったら、怒りやストレス、否定的感情を高めてしまう可能性が高くなります。
仕事をしていれば、時間がなくて食事を後回しにすることもあるでしょう。しかし、その際には、できるだけ明るい環境に身を置くほうがいいということです。逆に、不可抗力で、“負の刺激”を与えられてしまったら、可能ならば満足がいくように食事をとること、無理ならば歩きながらでも簡単に食べられるものを、お腹に入れておくことが得策です。
「空腹時は、“負の刺激”で否定的傾向が強まる」ということを留意して、お仕事に励んでくださいね。
*** 時間がないときのために、シリアルバーやチョコバー、あるいはバナナなどを常備しておきましょう!
(参考) Health News and Information - News Medical|Scientists explain 'Hangry' Discovery Channel Japan|お腹が空くとなぜイライラするのか?心と体の密接な関係が研究で明らかに