「自分が正しい」は正しくない。好かれる人は必ず持っている『共感の技術』

ロジカルシンキングやクリティカルシンキングの重要さは皆さんもご存じの通りだと思います。日常の場面においても、理路整然と相手に人に話をすることができる人は一目置かれますよね。ビジネスや学問の場では絶大な威力を発揮する論理的思考。しかし、人間関係においてはそれは必ずしも万能ではありません。

正しいことを言っているはずなのに相手が嫌な顔をする。そんな経験が誰しも一度はあるはずです。その場合もしかしたら、あなたの話し方は、相手に対して「自分が否定されている感覚」を与えているのかもしれません。

否定しないで“共感”してほしい

基本的に人は否定を恐れるものです。たとえあなたが、相手自身についてではなく、相手の仕事のやり方について意見を述べただけなのであっても、相手は「自分自身を否定された」ような気分になることでしょう。しかし、発言の中に共感をこめるだけで、相手の受け取り方は180度変わったものになります。

たとえばあなたの部下が、仕事で単純な事務上のミスを重ねたとします。その際、上司であるあなたが「こことここが間違ってるから直せ」と言う場合と、「細かい作業をずっと続けてると集中力は落ちるよね、疲れてると思うけどこことここを直しておいて」と言う場合とでは、部下が抱く印象は大きく違うと思いませんか。後者の方がはるかに好意的に感じてもらえるはずです。

あなた自身が声をかけられる場合についても同様です。会話の相手があなたの言うことを毎回のように否定してきたら、どのように感じるでしょう。

あなた「こういう方法が今回は有効だと思うんだけど、どうかな?」 相手「お前は全然わかってないな。今回はそれは使えないよ」 あなた「あの先輩すごいよね」 相手「えー、そうかな。結果は出してるけど、ちょくちょくサボってるの見るし、あんまりすごくないよ」

このように返されて、よい気分になるはずはありませんよね。しかしながら、自分が声をかける側の立場に立つと、程度の差こそあれ似たようなことをしてしまう人が実は多いのです。

先にも書いた通り、人はできれば共感してほしがっています。自分の言っていることを否定せずに共感してほしいというのが、人間の基本的な欲求と言えるでしょう。基本的な欲求を満たされることはやはり心地いいもの。他人を否定せず、相手に共感することは、人に好かれるコミュニケーションの第一歩なのです。

無意識な否定に要注意

とは言うものの、相手に対して心から共感できない場合もありますよね。そのような時、共感することばかりに意識を向けすぎると、表面のみを取り繕った言葉だけの共感になってしまい、相手に見破られてしまうことも多いもの。ですので、まずは「否定しない」ことから始めましょう。「否定しない」とは、より正確には「相手に、自分が否定されたと思わせないようにする」ということです。

実は多くの人は、会話の中で無遠慮に自分の意見を言ってしまうもの。そうすると、会話の相手は「自分の考えを否定された」と捉え、不快感を抱きかねません。しかし、発言者本人にはもともと否定する意図はないので、そのことになかなか気づくことができないのです。以下の発言を見てください。

・「このタイプの取引では、○○に気を付けた方がいいよ」 ・「もう用意は終わってるし別に大丈夫だと思う」

直接的に相手を否定した発言ではありませんから、何も問題ないと思う人もいるかもしれません。ですが、もしもあなたがこのように言われたら、なんとなく嫌な気持ちになりませんか。これは、相手の意見に対するフォローを何も入れずに自分の意見だけを述べているからです。「否定された」と相手に感じさせないようにするには、無理に相手に共感するのではなく、相手に対しフォローをすることが重要なのです。

好かれる人は知っている! 否定回避の方程式

否定しないといったところで、どのように考えて行動すればいいのか、いまいちわかりにくいですよね。そこで、相手のことを否定しないための3つの考え方を紹介します。

1. 否定したところで、相手の意見は変わらない

他人の意見を否定して自分の意見をぶつけるということは、一見効果的ですが同時にリスキーです。往々にして、相手はより自らの意見に固執するようになってしまいます。よほどのことがない限り、そもそも相手の考えが変わることはないのです。

あなたもそうであるように、結局は自分で納得したことしか信じられません。それなら、相手の発言を否定しないことで好意を持ってもらった方が、絶対に得です。

2. 「自分の意見は正しい」というのはただの思い込みである

人は、自分の意見は正しいと思い込みがちです。これを心理学の用語で「確証バイアス」と呼びます。相手が自分と違う意見を言ってきたら、間違っているのは自分ではなく相手だ、と思ってしまうもの。しかし、相手は相手で「私が正しい」と考えているのです。

そこで、自分の意見は正しいという思い込みを疑いましょう。本当に自分の意見が正しいと言えるのでしょうか? 今まで一度も間違ったことを言わなかったのでしょうか? おそらくそんなことないでしょうし、仮にそうであったとしても、これからも間違った意見を言わない保証などないのです。

3. 違うからこそ面白い

自分と相手の意見が違っていた場合は、「なんで私と同じ意見じゃないの?」と反発するのではなく、新たな視点を得られたと喜びましょう。多様な価値観があることで自分の価値観もより洗練されていくものです。

否定回避の実践例

さて、それでは、上の3つの考え方を踏まえた上手な否定回避の会話例を挙げます。状況は、あなたが飲み会で部長と持ち家の話になった場面。あなたは「賃貸のほうがこれからの時代に合っている」と思っていると仮定してください。「」は発言、()は考えていることです。

部長:「そういえば、先日ね、家のローンを払い終わったんだ。いやー、なかなか長かったけど、夢だったマイホームが完全に自分のものになって嬉しいよ。なんてったって、これから死ぬまで家賃の心配はしなくていいからね。君もぜひマイホームを買うといいよ」 あなた:「もう払い終わったんですか、家賃の心配がなくなったなんて羨ましい限りですよ。僕はマイホームを買うよりも賃貸のほうがいいと思うけど、まずは否定せずに共感しておこう。1.の考え方だ今、賃貸のアパートに住んでて、これからどうしようか悩んでいるんですけど、やっぱりマイホームのほうがいいんですか? どういうところがいいか詳しく教えてくれませんか? 自分の意見が正しいとは限らないんだ。立場の違う人の意見も聞いておいて損はない。2.の考え方を使おう 部長:「もちろんだよ。まずは何と言っても、自分好みの家が建てられることが素晴らしいね。あれこれ悩みながら、自分の家を建てる喜びは他では得られないよ。あとは、賃貸と違って、残るものがあるところかな。賃貸の家賃はお金を捨ててるようなものだと思わないか。だって何にも払うだけで何も残らないんだからさ。まあ、大きなメリットはこの2つかな」 あなた:「なるほど、やはりマイホームはいいものですね。まずは同調しておこう。何十年も住んだ上に、その人の好みを反映したマイホームに資産価値があるかはかなり疑問だけれど、そういった考えもあるのか。おもしろいな。この価値観には時代背景も関係してるのかな、どうなんだろう。3.の考え方で楽しんでみよう。

このような感じで、3つの考え方を使ってみれば、相手を否定せず上手な会話ができるようになるはずです。ビジネスにおける話題に置き換えてもきっと使えます。大切なのは自分の考えは胸にしまっておくことですね。

*** 人に好かれやすくする方法は色々ありますが、汎用性が高く誰にでも使えるのが今回のメソッドの良い点です。人に対する評価は、その人の能力よりも、その人と評価者の関係性によって左右されるというデータがあります。良い評価を得るために、人に好かれるような努力をする価値はあると思いますよ。

(参考) ジェフリー・フェファー著,村井章子訳(2011),『「権力」を握る人の法則』,日本経済新聞出版社. 武田双雲著(2013),『ポジティブの教科書 ― 自分も周りの人も幸運体質になる3つの基本と11の法則』,主婦の友社. デール・カーネギー著,田内志文訳(2016),『新訳 人を動かす』,KADOKAWA/角川書店.

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