仕事でいくら頑張っても成果が上がらない、成長できている気がしない。そうお悩みのビジネスパーソンの方はいませんか? そんな時にオススメなのが、あの「もしドラ」こと『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』で一躍話題になった、経営学者ピーター・ドラッカー教授の著作。
ドラッカーは21世紀型の知識労働社会において、ビジネスパーソンが成果を残すには、以下の三つのことを実践する必要があると説いています。
◇ 貢献に焦点を合わせる ◇ 自らの強みを知る ◇ 自らの仕事の仕方、価値観を知る
これらが一体何を意味しているのか。どうやったらこれらを利用して自らの生産性を上げることができるのか。今回は、スターバックスジャパン元CEOの岩田松雄さんやLINE元CEOの森川亮さんなどの事例も参考に、成果をあげる現代の経営者やビジネスパーソンの条件を丁寧に確認してみたいと思います。
貢献に焦点を合わせる
森川さんは、ビジネスの本質は「求める人と与える人のエコシステム(生態系)」であり、企業で働く人はみな「ユーザーが求めているものに集中する」ことが大切だと述べています。社員がお金や地位を仕事のモチベーションにし始めると、上司が優秀な若手を潰すなど、イノベーションが起きにくい体質となってしまい、企業は衰退の一途をたどるとも。
ドラッカーも著作の中で、本質的に同じことを述べています。
ほとんどの人が、成果ではなく、自らが持つ権限に焦点を合わせる。「組織の成果に影響を与える貢献は何か」と問うことが重要である。 貢献に焦点を合わせることによって、成果が存在する唯一の場所である外の世界に注意を向けるようになる。 つまり、顧客などの観点から、物事を考えるようになり、仕事のやり方が変わっていく。
(引用元:P.F.ドラッカー著,上田惇生訳(2000),『プロフェッショナルの条件――いかに成果をあげ、成長するか (はじめて読むドラッカー (自己実現編))』,ダイヤモンド社.)
自動車や靴とは違い、知識労働者が生み出すのは、知識、アイデア、情報であり、それら単体では役に立ちません。自らの仕事が他の人間へ供給され、彼らに使用されて、初めて成果となるのです。それは、自分が生み出したものを他の人が利用しないと成果にならないということ。他の人に貢献することがすなわち成果なのです。だとすると、人々に自分のアイデアを使ってもらうために、顧客視点で物事を考えなければならないのも納得がいきます。
利益や権限ではなく、顧客視点から考えると、いま市場が本当に必要としていることをピンポイントで満たすものが何なのかを考えることになります。顧客への貢献がしやすくなり、それが結果的に企業利益ひいては社会全体の利益につながるのです。
自らの強みを知る
みなさんは自分の強みや弱みをちゃんと把握できていますか? ドラッカーによれば、大抵の人が把握している自らの強みや弱みは間違っているのだそう。自分の本当の強みや弱みを知るには、以下のことをすることが重要だと述べています。
1. 一年、もしくは半年に一度、「現在自分がやっている仕事」、もしくは「新しく始めた仕事」を書き出します。 2. その各々の仕事に、「その期待する成果、目標、結果」を書き出しておきます。 3. その書き出したデータや書類をどこかに保存しておきます。 4. 半年後、もしくは一年後にそのデータや書類を取り出し、「その期待する成果、目標、結果」と「実際の成果」を見比べ、分析します。
(ドラッカーの説明を筆者にて整理)
すると、実際のデータに裏打ちされた自身の強みや弱みがわかります。
そしてここからが重要。
ドラッカーは、この情報を利用して「弱みを伸ばすよりも、強みを伸ばすべき」という趣旨のことを述べています。おこなっても成果が上がらないことは止め、努力しても並みにしかなれない分野に無駄な時間を使わない。その上で、自らの強みにおける知的傲慢を正し、謙虚に勉強し続けることが一流になる鍵となるのだと言います。
自らの仕事の仕方、価値観を知る
ドラッカーは仕事の仕方、選び方について、以下のように述べています。
自らの得意とする仕事の仕方を向上させるべきである。 また、自らの価値観と合わないことをしても、心楽しまず、成果も上がらない。
(引用元:P.F.ドラッカー著,上田惇生訳(2000),『プロフェッショナルの条件――いかに成果をあげ、成長するか (はじめて読むドラッカー (自己実現編))』,ダイヤモンド社.)
ここで、著名なビジネスコンサルタントであるジム・コリンズ氏のベストセラー著作『ビジョナリー・カンパニー』に出てくる「ハリネズミの概念」をご紹介しましょう。
ハリネズミの概念という名前は、偉大な企業はみなシンプルな強みを持っていることを、ハリネズミが体の針のみを強みに生きていることになぞらえて名付けられたもの。
ここでは、3つの輪が互いに重なっている、と考えます。3つの輪のひとつ目は、「情熱を持って取り組めること」。ふたつ目は「世界一になれること」。そして最後は「経済的原動力になるもの」。この3つの輪が重なる仕事が、あなたが最大限に成果を上げられる領域なのです。
要は、好きなことで得意なこと、そして人のためになり人に必要とされる結果お金になること、これら全てを満たすものをやれということです。スターバックスジャパン元CEOの岩田さんはこの原則に則って自らの仕事を選んだそう。そしてここから生まれる使命感こそが、スターバックスのように人々を感動させ、彼らの期待を大きく超えるものを生み出す源泉になるのだと言います。
*** ドラッカーの著作は、今なお多くの成功した経営者やビジネスパーソンに読まれ、実践され続けています。皆さんも、仕事でつまずいたとき、やるべきことがわからないとき、ぜひ一読してみてください。きっとヒントがもらえるはずですよ。
(参考) 岩田松雄著(2012),『ミッション 元スターバックスCEOが教える働く理由』,アスコム. ジム・コリンズ著,山岡洋一訳(1995),『ビジョナリー・カンパニー ― 時代を超える生存の原則』,日経BP社. P.F.ドラッカー著,上田惇生訳(2000),『プロフェッショナルの条件――いかに成果をあげ、成長するか (はじめて読むドラッカー (自己実現編))』,ダイヤモンド社. P.F.ドラッカー著,上田惇生訳(2001),『マネジメント[エッセンシャル版] - 基本と原則』,ダイヤモンド社. 森川亮著(2015),『シンプルに考える』,ダイヤモンド社.