仕事の進め方や生活習慣などで、どうにかしたいのに「変わりたくても変われない」ことはありませんか?
たとえば「人前で堂々と振る舞えるようになりたい」、「タバコをやめたい」などと思っていたとしても、なかなか改善することは難しいのではないでしょうか。
そこで今回は、なぜ変わりたいのに変われないのか、どうしたらなりたい自分になれるのかについてステップ別にご紹介します。
1.心の中の矛盾に気づく
できないことを改善しようとするとき、人はついつい解決策を探してしまいがちです。しかし、発達心理学者であるロバート・キーガンは、まず「なぜできないのか」の理由を探り、自分をどう変えていくのかを考えることが大切だとしています。
もし「人前で堂々と振る舞えるようになりたい」のに、どうしてもそんな風になれないとしたら、その理想を阻害している行動がいったい何なのかを考えてみましょう。「周囲の反応を気にしてしまう」、「声が小さくなってしまう」などの行動が当てはまりますよね。そこで、今度は「どうして周囲の反応を気にしてしまうのか、声が小さくなってしまうのか」と掘り下げて考えてみるのです。すると「人前で堂々と振る舞いたいけれど、周囲に批判されることが怖いから大きな声が出せない」と気づくことができます。
このように自身の心の矛盾に気づくことが、自己成長へのスタートです。キーガンは著書『なぜ人と組織は変われないのか』の中で、心が矛盾した状態を「片足をアクセルに、片足をブレーキにおいた状態」と表現しています。人前で堂々と振る舞いたいというアクセルを踏みながらも、周囲に批判されることが怖くてブレーキを踏んでしまっているのです。
2.身体の免疫と同じように、精神にも免疫システムがある
この「片足をアクセルに、片足をブレーキにおいた状態」は免疫システムが関係していると言われています。免疫とは、生体が自己にとって健全な成分以外のものを識別して排除する防衛システムのことで、この免疫システムのおかげで私たちは身体を丈夫に保っているのです。
この免疫システムですが、実は精神的な部分でも働いており、心の中に入ってくるウイルス=恐怖・不安をやっつける力となっています。そしてこれこそが「変わりたいけど変われない」、自己変革を妨げる要因なのです。
先ほどの例でいうと、「周囲に批判されるかもしれない」という不安を察知した免疫システムが、その恐怖に対抗するため「声を出しにくく」させ、結果として「堂々とした振る舞いを妨げている」ということになります。
3.小さなステップをくり返して、免疫システムを高めよう
ではどうすれば堂々した振る舞いができるようになるのでしょうか。上述したとおり、免疫システムは「〇〇になるかもしれない……」という恐怖や不安を感じて働きます。ということは、その恐怖や不安を払拭さえしてしまえば、理想を達成することができるのです。身体の免疫システムとして、伝染病にかかったときを想像してみてください。
伝染病と同じように一度免疫ができてしまえば、恐怖や不安を感じることもなくなるでしょう。しかしいきなり「周囲に批判されるかもしれない」という不安を払拭するのは難しいですよね。そこで、小さなステップから不安を取り除いていきます。一般的に堂々としている人の振る舞いを、少しずつ真似をしてみましょう。
たとえば普段なら黙っている場面でも、「私も〇〇さんの提案に賛成です!」と自分の意見を声に出して言ってみる。そして「意見を声に出しても批判されることはないのだな」と思ったら、次は「○○さんの提案には賛成ですが~という考え方もあるのではないでしょうか」など、難易度を上げてみてください。それでも誰にも批判されなければ、不安はどんどん小さくなっていくはずですよ。
これらの小さなステップを積み重ね、人前で堂々と振る舞っても批判されることはないと考えられるようになったら、あなたの免疫システムは高められている証拠です。気がついたら理想の自分に近づいているでしょう。
*** 私たちの身体を守ってくれている免疫システムは、実は精神的部分でも活躍していたのです。しかしそのせいで、なりたい自分になれない一面もあります。免疫の仕組みを正しく理解することで、1年後は「なりたい自分」なっているかもしれませんよ。ぜひお試しあれ。
(参考) ロバート・キーガン著,リサ・ラスコウ・レイヒー著,池村千秋訳(2013),『なぜ人と組織は変われないのか――ハーバード流 自己変革の理論と実践』,英治出版. PRESIDENT Online|人前で堂々と喋ろう! 「あがり症克服」徹底ガイド