高い学業成績を収めていなかったせいで希望する職業への就職に制約が生じてしまった、昇進や昇給のチャンスを逃してしまった……など、「学生時代にもっと勉強をしておけばよかった」と後悔していませんか?
「いまからでも勉強したい。でも、仕事が忙しくてどうやって勉強したらいいかわからない」
そんな悩みを抱えている社会人のみなさんに、仕事と両立しながらムリなく勉強を継続するコツをご紹介したいと思います。
【ライタープロフィール】
上川万葉
法学部を卒業後、大学院でヨーロッパ近現代史を研究。ドイツ語・チェコ語の学習経験がある。司書と学芸員の資格をもち、大学図書館で10年以上勤務した。特にリサーチや書籍紹介を得意としており、勉強法や働き方にまつわる記事を多く執筆している
STUDY HACKER|「“スキマ時間” もむしろ積極的につくろう!」 資格Hacker 鈴木秀明のシカクロード for StudyHacker【第19回】
FromA|脳に詳しい篠原菊紀さんに学ぶ! 今日からできる「勉強やる気スイッチ」の入れ方
みおりん(2021),『東大女子のノート術 成績がみるみる上がる教科別勉強法』, エクシア出版.
リクナビNEXTジャーナル|ばかばかしいぐらい小さい目標が大きな成果に!「小さな習慣」のススメ
池上彰(2022),『経済のことよくわからないまま社会人になった人へ』, ダイヤモンド社.
コツ1:「スキマ時間」を積極活用する
社会人になると、学生時代のように机に向かって学習する時間を自由に確保するのは難しいものです。それなら、スキマ時間を活用しましょう。毎日忙しくて、まとまった勉強時間がとれないという方も、スキマ時間なら確保できるはずです。
『10年後に生き残る最強の勉強術』著者で資格取得家の鈴木秀明氏も、勉強のための「スキマ時間を積極的につくる」ようすすめています。しかも、スキマ時間を活用すれば、「高い瞬発力と集中力を持って勉強に取り組める」とのこと。(カギカッコ内引用元:STUDY HACKER|「“スキマ時間” もむしろ積極的につくろう!」 資格Hacker 鈴木秀明のシカクロード for StudyHacker【第19回】)
「○分しかない!」とわかれば即座に勉強に取り組めますし、ほんの短いあいだなので集中力を保てるわけです。
鈴木氏は、そんなスキマ時間を使った勉強の仕方として、以下を提案しています。
- 「毎日○時から10分間だけ」など、開始時刻を決めて勉強する
- 「食事や入浴といった日々のさまざまな行動の前後」に勉強する
- 「楽しみなことの直前」に勉強する
- 「趣味の合間に」勉強する
(上記カギカッコ内引用元:同上)
もちろん、上記すべてを実践する必要はありません。あなたの生活スタイルに合ったものを選んで実行するとよいでしょう。いくつか例を考えてみました。
- 毎日決まった時刻にしている習慣がある人→勉強開始時刻をその習慣と合わせる
例:毎朝8時の通勤電車に乗るなら、午前8時を勉強開始の時刻に定める - 生活や食事の時間が不規則な人→時間ではなく、毎日必ずする行動とセットにする
例:食事前の5分間、入浴後の10分間、就寝前の15分間などに勉強する - 娯楽の時間を大事にしている人→娯楽の直前や合間に勉強する
例:短い動画をひとつ見終わるごとに勉強する
ちなみに、スキマ時間を有効活用するには、スキマ時間ができたときにサッと取り出せる教材を用意しておくことも重要でしょう。
筆者は生活リズムが不規則なため、就寝前の10分間を教養の勉強の時間と定めました。枕元にブックスタンドを設置して本の読みたいページを開いておけば、横になってすぐ勉強態勢に入れるので楽ですよ。10分後にアラームをセットして、鳴ったら電気を消して寝るだけ。
2週間ほど続けていますが、勉強習慣が生活に自然に溶け込み、学びが日々積み重なっていく小さな達成感を得ています。
あなたは、どのスキマ時間を活用しますか?
コツ2:「やる気」がONになる “儀式” をつくる
仕事が忙しいと、“勉強モード” に入るのも難しいもの。勉強したいのになかなか行動に移せない人は、気持ちの切り替えがうまくできていないのかもしれません。
そんな人は、やる気を出すための “自分だけのルール” をつくってみましょう。「〇〇をしたら勉強をする」などの決まり事があれば、パッと勉強を始められますよ。
脳科学者の篠原菊紀氏も、「やる気スイッチを入れる」方法として「自分なりの『決まり事=儀式』を行ってから机に向かう」ことを提案しています。その根拠は次のとおり。
脳内にあるやる気の中核・線条体は、「行動」と「快感」を結びつけることで「やる気」を生み出しています。なので、何でもいいので行動を起こすとやる気スイッチが入りやすくなります。
(カギカッコ内および枠内引用元:FromA|脳に詳しい篠原菊紀さんに学ぶ! 今日からできる「勉強やる気スイッチ」の入れ方 ※太字は編集部が施した)
なるほど、自分なりの儀式がトリガーとなって、抵抗なく勉強を始められるというわけですね。
篠原氏によれば、儀式は「簡単にできるなら何でもいい」とのこと。快感と結びつけるため、「心地よい」「楽しい」「やる気になる」ものにするとより効果的なのだとか。篠原氏は具体例に次のようなものを挙げています。
- 「身体をリズミカルにたたくタッピング」
- 「やるぞ!」など「脳に心地よい暗示をかけるような言葉を発する」
- 「勉強のスケジュールを書いて読み上げる」
(ここまでの篠原氏の解説部分、カギカッコ内引用元:同上)
筆者は、儀式として勉強の5分前からお気に入りの洋楽を流し、リズムに合わせて体を動かしてみることに。体温が上昇し楽しい気分になってきたところで、「さあ、始めよう!」と声に出してみると、いつもよりもすんなり勉強を始められましたよ。
さらに、やる気スイッチを入れるために自己分析をして「勉強作戦」を練る方法も取り入れました。『東大女子のノート術 成績がみるみる上がる教科別勉強法』で紹介されているメソッドを参考に、実践してみたのがこちらです。
自己分析の結果をふまえて楽しく学べる美術分野からスタートし、苦手な経済分野に入る直前に好きな洋楽を流すと、勉強態勢に入りやすかったです。
勉強をなかなかスタートできないとお悩みならば、ぜひ試してみてください。
コツ3:ばかばかしいほど「小さな習慣」から始める
「勉強を始めても、いつも三日坊主で終ってしまう……」という人は、目標に理想を詰め込みすぎているのが原因かもしれません。「毎日机に向かって3時間勉強しよう!」など大きな目標を立てると、勉強を継続するのがつらくなってしまいます。
そこで、目標をとにかく小さくしてみましょう。勉強時間の目標を、1時間、30分、10分、5分、3分、1分……と小さくすれば、気合いを入れなくても勉強ができるかもしれませんよ。
ベストセラー『小さな習慣』著者のスティーヴン・ガイズ氏は、「『新たな習慣にしたい』と思っている行動を、もっともっと小さく」した「ばかばかしいほど小さ」な習慣から始めることをすすめます。(カギカッコ内引用元:リクナビNEXTジャーナル|ばかばかしいぐらい小さい目標が大きな成果に!「小さな習慣」のススメ)
ガイズ氏によれば、習慣化達成にはモチベーションに頼らないことが大切。「本を毎日1ページだけ読む」「1問だけ解く」のように、モチベーションが不足していてもできそうな小さな目標を考えるのです。このやり方なら、仕事が忙しくて時間がなかったり疲れていたりする社会人でも、確実に勉強に取り組めるはず。
そんな小さな習慣の実践手順として、ガイズ氏が提案するのは次のとおり。
- 身につけたい小さな習慣を決める
- なぜその習慣を身につけたいのか、自分自身に「なぜ」と問い続ける
- 行動開始の合図を時間ベース(例:午後11時から1ページ読書する)か行動ベース(例:就寝前に1ページ読書する)で決める
- 小さな習慣を達成できたときのご褒美を決める
- 達成できた習慣を手書きで記録し、進行状況と成果を意識する
(上記枠内:同上資料よりまとめた)
上記をもとに、筆者は池上彰氏の著書『経済のことよくわからないまま社会人になった人へ』(2022)を読み、経済の勉強を習慣化することにしました。本書を選んだのは、学生時代に経済の勉強をしなかったことを悔いている自分にぴったりの本だからです。
実践した内容は以下のとおり。
筆者の「小さな習慣」は、「経済に関する本を1日1節ずつ読む」というもの。1日1節ならば、モチベーションに頼らずに習慣化が可能です。始めてからまだ2週間ほどですが、経済用語の知識やお金にまつわる情報がノートに蓄積されていくのを見ると学んでいる実感が湧き、楽しくなってきました。
小さな習慣は、仕事と両立しながらムリなく勉強を継続したい方におすすめのメソッドです。
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勉強時間をつくり、勉強しやすい環境を整え、達成感が得られやすい小さな目標を設定すれば、忙しい社会人のみなさんも勉強できるはず。ぜひお試しください。