毎日仕事が忙しすぎて、心身ともに休める時間がない、とお困りの方はいませんか?
朝から晩まで仕事のことを考え、悩み、日常生活は常に課題の達成に追われている、というのは日本のビジネスパーソンに多い現象です。では、そんな現象に打ち勝つにはどのような心持ちで仕事に臨めば良いのでしょうか。
今回は、最近アメリカで話題のマインドフルネスを紹介します。
マインドフルネスとは
“Mindfulness”とは、直訳すると“何かを意識していること”ですが、ここでは瞑想に基づく“心の運動”のことを指します。
マインドフルネスは、認知療法の一種であり、本来はうつ病に対する有効な治療法として1990年頃に開発されました。治療におけるマインドフルネスは、瞑想をしながらある動作へ集中することで心の中に湧いてくる思考(雑念)から離れます。この過程を通じて、否定的な考え方から身を離すことで、うつ病からの回復を図るのです。
近年は、そんなマインドフルネスがうつ病や精神病の治療の領域から、一般人の心理的な疲労軽減の方法へとその性格が少し変わってきました。日々を円滑に、より感性豊かに毎日を行きてゆくという趣旨でのマインドフルネスは、“心の筋トレ”とも呼ばれています。
グーグルが取り組む2つの例
“心の筋トレ”と呼ばれるマインドフルネスは、グーグルやアップルなど大手の企業も取り組んでいます。特にグーグルは有名で、2007年から継続してマインドフルネス講座を開いています。この講座は、常に数百人が受講待ちだそうで、病気の専門的な治療から一般的な心理作用へとその裾野が広がった証拠でもあります。
グーグルが実践するマインドフルネスは2つ。
1:“食べる”マインドフルネス その名の通り、ただひたすら食べることを意識します。ご飯を口に入れたら、その食感や味、香りなどに集中するのです。噛めば噛むほど唾液と混ざり、味が変わるので、その変化に意識を向けていきます。
2:“歩く”マインドフルネス こちらもひたすら歩くことを意識します。自分の足の裏がどのように地面と接しているのか集中し、足をあげる瞬間、かかとが着く瞬間の感覚に全神経を傾けるのです。
多くの企業が取り入れる理由
なぜ、グーグルを始め多くの企業がこのようなマインドフルネスを取り入れているのでしょうか?
マインドフルネスの真髄とは、目の前で起こっている現象に対して集中できること、そして、それからその現象を冷静に受け止められるということにあります。
例えば、社会を生きていく上で煩わしい人間関係。 上司や部下、果ては取引先など、ビジネスに取り組む人間にとって人間関係は切っても切れません。自分とは合わない人がいることもよくあることで、そんな状況でも彼らとうまくやっていかなければなりませんよね。
このような状況下でもマインドフルネスによって心のトレーニングがなされていると、些細なことでイライラしたり、嫌な気持ちになることがないのです。ビジネス全体を俯瞰するため、相手をありのまま受け入れることができ、逆にどのように人間関係を構築すれば最大の結果を出せるのか、とポジティブに思考することさえ可能になります。
効果はもちろん人間関係だけにとどまりません。仕事中のストレスが軽減したり、課題を前にして余計な雑念に集中を阻害されることもなくなるため、非常に効率的に物事に集中することができます。また、物事を冷静に観察することができるようになり、不測の事態に陥ったり、予想外のアイデアを相手が出してきたりしても落ち着いて対処することができるのです。
ビジネスシーンにおいて、マインドフルネスによって得られる心の平穏ほど有効な心理状態はないでしょう。
大切なのは集中すること
上述したグーグルが取り組んでいる2つの方法でも構いません。とにかく何かに全神経を集中させることが大切なのです。
簡単ですぐにできるのは、瞑想でしょう。
1.まず、目をつむって楽な姿勢をとり、呼吸に意識を傾けましょう。 2.息をゆっくりと吸ったり吐いたりして、自分の呼吸を観察しましょう。
さまざまな雑念が浮かんできてしまっても、そのたびに呼吸に意識を戻すことが大切です。慣れないうちは1分もすると辛くなってくるかもしれませんが、毎日これを15分程度繰り返すようにしましょう。
マインドフルネスとして事物を冷静かつ客観的に観察できるようになるとともに、瞑想慣れしてくるとさまざまな脳内ホルモンが分泌され、リラックスする効果も実感できるようになります。
*** 現代科学が取り入れている最新の心の治療術マインドフルネスですが、日々の生活にも大きく役立ちます。煩わしい人間関係に悩まされている方、さまざまな課題に身が入らない方など、ぜひ実践してみてください。
(参考) Kirk Warren Brown et al. (2007) “Mindfulness-based psychotherapies: a review of conceptual foundations, empirical evidence and practical considerations,” Australian and New Zealand Journal of Psychiatry, pp. 285-294 SENSORS|Googleも実践 目の前の状態を正しく認識する「マインドフルネス」とは 東洋経済ONLINE|「瞑想」と「深い呼吸」が折れない心をつくる