自ら苦労しようとすべからず。目標を達成するためのプロセスを楽しんでいるか? 

人生の価値を高めるには、目標をたてて前へ進まなければならないと考える人は多いでしょう。なおかつ目標は“達成しなければ意味がない”と思うかもしれません。

ところが、それは少し違うようです。

識者や偉人によるいくつかの言葉、そして一つの映画を取り上げ、その理由と「目標を達成するためのプロセスを楽しむコツ」をご紹介します。

幸せと成功は、目標を達成しなくても手に入る?

カリフォルニア大学教授のソニア・リュボミアスキー氏によれば、人々がもっと幸せになり、もっと成功するための最善策は、「目標を持ち、その達成に向けて努力すること」なのだとか。そして、たとえ「目標を達成することができなくても、ただ努力しているだけで幸せになれる」そうです。

また、「幸せになるかどうかは、目標達成のプロセスを楽しめるかどうかにある」とも伝えています。さまざまなデータが、これらを示しているとのこと。

ハーバード大学でもっとも人気のある講師タル・ベン・シャハー氏も「目標は達成することよりも持つことが重要」だと述べています。同氏は目標を、ゴールではなく「手段」と捉えているそう。

そして……、キリスト、孔子、ソクラテスに並び、世界四大聖人の一人として知られるブッダ(釈迦)の本には、「幸福への道はない。道が幸福なのだ」という言葉があるのだとか。

映画『5パーセントの奇跡 嘘から始まる素敵な人生』に学ぶこと

目標と努力だけで実りある人生に

前項で紹介した言葉は、文献などから拾い上げたものではありません。この言葉を披露しているのは、『5パーセントの奇跡 嘘から始まる素敵な人生』というドイツの映画。日本では2018年1月に公開されました。

10代のころに先天性の病気で視力を95%も失ってしまった青年サリーが、「一流ホテルで働きたい」という目標を胸に、目が見えないことを隠して5つ星ホテルの研修生になってしまうというハートフルなヒューマン・コメディです。嘘みたいな話ですが、実話がもとになっているのだとか。

この映画の主人公は、原作者でもある実在のモデル同様、目標を達成するための努力によって幸せと成功を得ることができます。ただし、成功として描かれたのは、当初の目標達成とは少し違うかたちでした。まさに彼は、ブッダの本の言葉や、先に紹介したソニア・リュボミアスキー教授らの言葉を体感したといえるでしょう。

そして、注目すべきは、主人公が目標に向かって努力や工夫を重ねる際、「楽しんでいるとき」と、「無理しているとき」の状況が180度違うことです。前者は多くを得て、後者は多くのものを失いそうになります。

自ら苦労しようとすべからず

『5パーセントの奇跡 嘘から始まる素敵な人生』の中で、主人公のサリーが「幸福への道はない。道が幸福なのだ」という言葉をナレーションするのは映画の冒頭。そのあと「でも、これほどまでに困難な道とは思わなかった」と続けています。その苦難を乗り越えたからこそ、得られたものは大きかったはず。

しかし、もしもあなたが「苦労するほど大きな成功を得られる」からと、わざわざ自ら苦難の道を選んで歩むのは間違いかもしれません。苦労したからといって報われるとは限らないし、放っておいても苦難は目の前に現れるからです。目標達成のための道(方法)が2つあり、「AとBなら、Bがぜったいに容易で楽しい」と感じたら、率先してBを選びましょう。

もちろん、その道や方法が他者を傷つけたり、他者に負担をかけたりするのであれば、選ぶべきではありません。しかし、目標を達成するためのプロセスを楽しめなければ、より大きな幸せも、より大きな成功も、手に入らない可能性があります。楽しむことは、とても重要なのです。

目標達成への努力を楽しむコツ

ではここで、目標を達成するためのプロセスを楽しむコツをご紹介しましょう。キーワードは「フィーリング(感じ)」と「天秤」です。

1.フィーリングを確かめる

たとえばビジネスパーソンのあなたが、何かの資格取得に挑戦する場合。「忙しいし、大変そうだし、考えただけでも吐きそうだけど、資格は取るべきだと思う」という不快なフィーリングが入り混じっているならば、アレンジが必要です。

違う資格を選択してみる、期限付きにして短期間だけ猛烈に頑張る、ダメだったらアッサリ諦めるなどなど、気を楽にしてフィーリングをよくする方法はいろいろとあります。

それに、資格を取る目的が転職に有利だからというだけではなく、特定の仕事に就きたいという強い思いのためならば、不快なフィーリングは生まれないはず。目標への思いの強さを確かめることもできるわけです。

気負わず柔軟に、フィーリングを確かめてはアレンジしていろいろと試し、情熱そのものを育んでいきましょう。

2.重さを天秤にかけてみる

時間がない、でも資格を取りたい、もしかして自分には難しいかも? 資格は取りたいが勉強はキライだ、お金がない……、などなど、さまざまな思いが頭の中でせめぎ合ったら、それらを天秤にかけてみてください。それによって方法を選ぶわけです。

「資格を取りたい」と「時間がない」を天秤にかけ、前者が重かったら時間はつくればいいのです。5分でも、10分でも、スマートフォンを手に取るのをやめ、参考書を手に取って眺めていれば、想像以上に得るものは大きいでしょう。

「資格を取りたい」と「勉強がキライ」で後者が勝ったら、難しい参考書を手に入れず、マンガの参考書を揃えてみましょう。評判がいいからといって自分に合わない参考書を無理に選んでも、楽しくないし頭にだって入りません。

ぜひ、「フィーリング(感じ)」と「天秤」で、“努力”を苦しみではなく、楽しみに変えてください。

***
「努力」という言葉がそぐわなくなるほど楽しめば、目標の達成もぐんと近づくでしょう!

(参考)
悠木 そのま著(2015),『ハーバード流 幸せになる技術』,PHP研究所.
映画「5パーセントの奇跡~嘘から始まる素敵な人生~」公式サイト|イントロダクション

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