毎日、忙しいけど……すごく充実している! やることがいっぱいあって、体がいくつも欲しいくらい! こんなビジネスマン、学生の方は多いでしょう。
しかしそれは本当に「充実」ですか? 単に「忙しい」だけではありませんか? 忙しいのは結構ですが、本当に大切なものを忘れてはいませんか?
ニュートンが万有引力の法則を発見したのは、りんごの木の下でくつろいでいる時でした。アルキメデスが浮力の原理を思いついたのは、お風呂につかっている時でした。大昔から、ひらめきや発見は「何もしない時間」に生まれたのです。現代も同じ。忙しい毎日を駆け抜けるだけでは、貴重な気づきを見逃してしまうのかもしれません。
今回は、忙しいあなたに送る「何もしない時間」のススメです。
「何もしない時間」の作り方
一日の中で、一週間の中で、「何もしない時間」を取り入れてください。この時気をつけてほしいことが一つあります。それは、「何もしない時間」を意識して作ること。通勤・通学時間の電車の中や昼休みといった自動的に生まれる空き時間ではなく、スケジュールの中に意識的に組み込むのです。
それは、「空き時間」という意識のもとでは、自然と何か作業をしてしまうから。「何もしない時間」は重要なのに、人間はそういう時間を過ごすのが得意ではないそうです。
「何もしない時間」というのは、人間にとって、なかなか難しいという調査結果もあります。(中略)暇な時に、ついつい携帯電話をいじるということも、人間のそういった性質のせいなのかもしれません。
(引用元:Raorsh|「何もしない時間」はあなたにプラスをもたらすかもしれない。)
意識して作った時間でないと、知らず知らずのうちに、会議の資料を手に取ったり、仕事のメールをいじったりするかもしれません。ですから、「何もしない時間」は意識して作ることが重要です。
人間の悪事はすべて、部屋の中でじっとしていられないことに由来する。 - All human evil comes from a single cause, man’s inability to sit still in a room.
(引用元:名言+ Quotes|パスカル名言・格言)
これは偉大な思想家パスカルが残した言葉です。その真意を測ることはできませんが、彼はあたふたと忙しく動き回る人間を見て思ったのでしょう。じっとしていることにも、価値はあるのです。
「何もしない時間」がアイデアを醸成する
「何もしない」からといって、生産性はゼロではありません。米広告界の神様として今もなお歴史に名を刻むジェームス・W・ヤング氏は、著書の中で「何もしない時間」はアイデア作成で重要な段階だと語ります。
彼曰く、アイデア創出のステップは5つの段階に分かれるんだとか。それは、
1段階目:情報収集 2段階目:情報の組み合わせ 3段階目:何もせずぼーっとする 4段階目:アイデアが浮かぶ 5段階目:実行可能性等を調整する
の5段階。そのうちの3段階目が「何もしない時間」です。
アイデア作成のこの第三段階に達したら、問題を完全に放棄してなんでもいいから自分の想像力や感情を刺激するものに諸君の心を移すこと。音楽を聴いたり、劇場や映画に出かけたり、詩や探偵小説を読んだりすることである。
(引用元:ジェームス W.ヤング著・竹内均解説・今井茂雄翻訳(1988),『アイデアのつくり方』,阪急コミュニケーションズ.)
よく「会議室でアイデアは生まれない」という言葉を聞きます。何もしない時間は、アイデアをも生むのですね。
「何もしない」とすーっと心が軽くなる
筆者が複数の学生団体に所属していた頃、各方面に送るメール、施設の予約、ミーティングの資料作り……いくつものタスクに追われ、てんてこ舞いになりました。いろんな方向からたくさんの追っ手に追われるイメージです。
その時一度、スマートフォンとPCを家に置いたまま、自転車で地元にある山まで出かけたことがありました。今考えればとんでもない現実逃避ですが、その時は必死でした。木々の匂いを嗅ぎながら自転車を漕ぎ、畑と古い民家を眺めました。自転車から降りてぼーっとすると、それまで胸の中に溜まっていたモヤモヤが、すーっと軽くなったのです。
それ以来、意識して「何もしない時間」を作るようにしました。テスト勉強で死にそうな時。サークル活動に追われている時。実験レポートの締め切りが迫っている時。忙しいときに「何もしない」のは現実逃避に思えるかもしれません。罪悪感に苛まれるかもしれません。でも、それでいいのです。タスクに追われ、胸の中のモヤモヤを溜め込んでいると、いつものパフォーマンスが発揮されません。
悩みは尽きないでしょうが、一度お試しあれ。 きっと、心がすーっと軽くなるはずですよ。
(参考) 名言+ Quotes|パスカル名言・格言 Raorsh|「何もしない時間」はあなたにプラスをもたらすかもしれない。 ジェームス W.ヤング著・竹内均解説・今井茂雄翻訳(1988),『アイデアのつくり方』,阪急コミュニケーションズ.