「課題が残っているけど、明日やればたぶん間に合うはず」そうは思ったけれど、結局次の日も着手できなかったり、着手できても終わらせることができなかったりして、後悔した。
このような経験をお持ちの方は多いのではないでしょうか。
締め切り直前になるまで課題に取り組めない、誰かに急かされるまでやるべきことを後回しにしてしまう、といったように、人間が物事を先延ばししてしまうのには、実は「単に面倒くさいから」以外にも理由があったのです。
今回は、私たちがやるべきことをつい先延ばししてしまう理由と、先延ばしを防ぐための方法をご紹介します。
明日の自分を過大評価してしまう
私たち人間が、やらなければならないことを先延ばしにしてしまう理由とは、「未来の自分を過大評価しているから」です。
小学生の頃の夏休みの宿題を思い浮かべてみてください。「最終日で何とかする」と言って結局は間に合わなかった、なんて経験がありませんか? このように、未来の自分を信じて先延ばしにしたせいで失敗してしまう、ということはよく起きることなのです。
このことを証明した実験があります。プリンストン大学の心理学者エミリー・プローニン氏は、2008年に行った実験の中で、被験者である学生たちにとてもマズいドリンクを飲むように依頼しました。数分後に飲んでくださいと言われた学生たちは、スプーン2杯ならなんとか飲めると答え、一方で、次の学期に飲んでくださいと言われた学生たちは、数分後に飲むよう言われた学生たちの倍以上であるカップ半分飲めると答えたのです。
他にも、友達に勉強を教えてあげるという人助けの為にどれだけの時間を使えるか、という質問に対する被験者たちの回答は、今学期中に教えるのであれば費やせる時間は27分、次の学期中に教えるのなら85分、という結果になりました。
これらの実験結果から、人がいかに未来の自分のことを過大評価しているかがわかると思います。
先延ばしとは無縁になるための2つの方法
私たちに将来の自分を過大評価してしまうという性質があるのはわかりましたが、これを何とか乗り越え、先延ばししないで済む方法を知りたいものですよね。そこで今回は、2つの方法を提案します。
解決法1 瞬間集中法
解決策の1つとして挙げられるのが、脳科学者の茂木健一郎さんが提唱する、瞬間集中法です。瞬間集中法とは、その名の通り、課題に対して瞬間的に集中モードに入るというものです。
何か物事を先延ばしにするとき、「今やらないといけない。でも面白いテレビがあるからそっちにしよう」といった感じで、少し考えますよね。瞬間集中法は、この迷いをする間もなく作業に入ってしまうという方法です。
「レポートを書かなくてはいけないな」と感じたその瞬間にパソコンを立ち上げる。「課題の本を読まなくてはいけないな」と思ったら即座に本を開く。このような具合で、やるべきことにを思い付いたその瞬間に、取り組みを開始してみてください。
これが習慣になってくると、自然と物事を先延ばしにしないようになっていきますよ。
解決法2 課題を細分化する
もうひとつの解決法は、課題の細分化。課題を細かく分けることで、ゴールまでの道筋を明確にすることを狙います。
課題を細分化するには、自分がやらないといけない課題のゴールはどこにあって、そこに行きつくまでに具体的にどのようなステップを踏むのかを分けてください。そうしたら、各ステップにどのくらいの時間を要するのかを考えましょう。
こうすると、ひとつひとつのステップを順当にこなしていけば課題を終わらせることができる、ということを理解することができます。大きな課題に今すぐ取り組むのは面倒に思えても、小さなタスクを順番にやればいいのであれば、すぐ取り掛かれそうな気がしてきますよね。
例えば、次の会議までにとても長い論文を読んでおかなければならないのだとしたら、「今日は1時間で1章読む、明日は2時間とれそうだから2章と3章を読む……そうすれば会議までに余裕をもって読み終えられる」といったように、課題を細かく区切ってみてください。
ここで注意点をひとつお伝えしておきます。せっかく課題を細分化し、具体的なタスクと所要時間を計算したのですから、課題に取り組む間はなるべく障害が入らないほうがよいですよね。ですから課題に着手する際は、テレビやSNSなど課題を邪魔する可能性のあるものはあらかじめ排除しておくようにしましょう。
*** 先延ばしはほとんどの場合後悔につながります。「明日やろうは馬鹿やろう」だと思って、やるべきことを今すぐこなす習慣を身に着けてください。
(参考) ケリー・マクゴニガル著,神崎朗子訳(2015),『スタンフォードの自分を変える教室』,大和書房. logmi|「明日やればいいや」はもう卒業-物事を先延ばしにするデメリットとその対処法 茂木健一郎著(2007),『脳を活かす勉強法 奇跡の「強化学習」』,PHP研究所.