マルチタスクはよくない。 よく言われますが、本当なのでしょうか。
そもそも私たちは、常にタスクを平行させながら生きています。 隣を歩く友人と話しながら信号機を確認し、周りに目をやりながら横断歩道を渡る。
本当の意味で「何か一つに集中する」なんてこと、日常では不可能なんでは?慣れていれば、熟練していれば大丈夫な気がするのですが……。
今回は、人間の能力の面から、マルチタスクをこなすことを考えてみたいと思います。
運転中にケータイ通話が危ない理由
自動車を運転中に携帯電話を操作していたらどうなるでしょう。もちろん、ルール違反ですよね。では一体なぜ?運転に慣れていれば、危険は小さくなりそうなものですが。
産業技術総合研究所のかわはら氏によれば、運転中に携帯電話を使用する際に最も危険なのは「注意を運転と電話の内容に交互に切り替えるせいだ」と語ります。クルマの運転も携帯での会話も、「道路状況や会話内容に注意し,記憶を使ったりして,次にどう反応するかを能動的に決めなければならない」んだとか。
こうした能動的作業は、脳内の情報処理の中枢部分を使って起こり、「一度に1つしかできないという特性をもつと考えられています」だそう。
そう、そもそも脳の能力として、複雑な作業は一度にひとつしかできない、という風に限界があったのです!!
勉強中はどうか
Study Hackerは、学びはもっとかっこよく、合理的なものであるべきだというコンセプトの下、日々みなさんに記事をお届けしています。
このコンセプトから見たとき、マルチタスクはどのようなものになるのでしょうか。
例えば英語の勉強を考えてみましょう。
英語のテキストを読んでいる途中、わからない単語があった。それを単語帳で確認したら、まだまだ覚えきれていない単語が多いことに気がついた。じゃあこの際、テキストに出てくる単語を覚えるためにも、テキストブックと単語帳を交互に見比べながら、長文読解と単語暗記を同時に終わらせてしまおう……。
この勉強に対してマイナスイメージを持つ人、少ないんじゃないでしょうか。 一度にいろいろなことができて、効率が良いと考える人もいるのではないでしょうか。
でも、ダメなんです。英語の勉強は勉強でも、「テキスト読解」と「単語暗記」という二つのタスクを平行させたマルチタスクになっています。
この人の脳内では「運転しながらケータイ」とほぼ同じことが起きています。
同時に2つの作業をしようとしても,一方の作業が終わるまで,もう一方の作業の開始ができず,待たされてしまいます。(中略)このせいでいったん会話の内容に引き離された注意はすぐには運転場面に戻らず,見落としが増えたり,ブレーキが遅れるのでしょう。
(引用元:日本心理学会HP|携帯電話で話しながら車を運転すると危険なのはなぜ? )
テキストを読むスピードも、単語を覚える速度も遅くなってしまいます。合理的ではありません。
机の上はシンプルに!
では、一体どうすればいいのか。筆者が提案するのは、机の上をできるだけシンプルにすること。
具体的には、机の上に置いていい教材を、ルーズリーフ(もしくはノート)と何か「一つだけ」に絞るのです。テキスト読解をしたいなら、テキストブックだけを置いておきます。単語帳や文法書はもちろん、辞書だって置いてはいけません。
気になる単語があったら?わからない文法事項があったら? その時は、ノートの1ページを犠牲にして、メモページを作っておきます。そこにわからないこと、質問事項を書いておき、勉強がひと段落したら、テキストをしまい、辞書や文法書を取り出しましょう。この時も、一つしか教材は取り出せません。
一見面倒に見えますが、机の上も片付いて、タスクに集中できて、いいことづくめ。 ぜひお試しあれ。
参考 日本心理学会HP|携帯電話で話しながら車を運転すると危険なのはなぜ?