カラダに老廃物が溜まると、さまざまな悪影響を及ぼすといいますが、実は脳も同じです。知らず知らずのうちに、せっせと脳のゴミを溜めているかもしれませんよ。「脳にゴミが溜まる悪習慣」を3つご紹介します。

脳には「ゴミ」が溜まっていく

新しいことを覚えられない認知症の症状は、脳に「βアミロイド」という物質が溜まることが原因で起こるといいます。認知症といえば高齢者という印象ですが、20代でも無関心ではいられない研究が発表されていることをご存知ですか?

国際科学雑誌 BRAIN に掲載(2015年6月1日)されたノースウェスタン大学フェインバーグ医科大学の研究では、認知症の6~7割を占めるアルツハイマー病の原因プロセスが、20代から始まっていることが示されました。20歳の若者の脳にも「βアミロイド」が蓄積している部位が存在しているとわかったのです。

そして、このβアミロイドこそが「脳のゴミ」と呼ばれているものです。

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認知症発症のメカニズム

「βアミロイド=脳のゴミ」は、脳の神経細胞から分泌される物質です。慶應義塾大学医学部神経内科の伊東大介医師によると、認知症の症状は次のようなメカニズムで起こるそう。

1.βアミロイドが増えて一定量に達する
2.タウというタンパク質が溜まる
3.脳の神経細胞を破壊

こうして神経細胞が破壊されると、記憶をつかさどる脳の海馬の働きが低下し、学習に深い関係があるアセチルコリンという神経伝達物質の減少を招くのだとか。

どんなに若くても、脳のゴミと呼ばれる「βアミロイド」がすでに存在しており、それが一定量に達すると、記憶や学習に悪影響を及ぼすということ。ならば早々に、脳にゴミを溜めるような悪習慣は止めてしまいましょう!

脳にゴミが溜まる悪習慣1:質の悪い睡眠

科学誌 Science に掲載された、米ロチェスター大学メディカル・センターの研究では、カラダの老廃物をリンパ系システムが処理するように、脳でも「グリンパティックシステム」というものが働いていると明らかにされたそう。

脳には主に「神経細胞(ニューロン)」と「グリア細胞」が存在していますが、睡眠中はそのグリア細胞が縮み、神経細胞の周囲に「大きな隙間」をつくり出すとのこと。

それによって脳内のリンパ液代わりになっている脳脊髄液が老廃物を回収し、静脈に沿って脳外へと運び出しているのだとか。つまり、睡眠不足は、脳がデトックスする機会を失うことになるというわけです。

この研究はマウスによるものですが、睡眠の質が低いほど「βアミロイド」の蓄積が多いと明らかになっている臨床データは、いくつも存在するとのこと。

【質のよい睡眠を得るコツ】

とはいえ、むやみやたらに寝ればいいというものでもありません。寝すぎが認知症のリスクを高めるという調査データもあるといいます。『脳が若返る快眠の技術』の著者で快眠セラピストの三橋美穂さんによれば、年齢によって適切な睡眠時間があるのだそう。目安は以下のとおり。布団に入ってから起きるまでの時間を考慮すると、それぞれ30分加えるといいそうです。

・25歳:7時間(+30分)
・45歳:6時間30分(+30分)
・65歳:6時間(+30分)

また、眠くないのに無理やり寝ようとするとストレスになり、余計に眠れなくなるので、睡眠を圧縮するといいとのこと。質の高い眠りを得るためには、少し遅寝・早起きにするくらいが丁度いいそうです。

脳にゴミが溜まる悪習慣2:糖質過多

九州大学が15年間にわたって追跡調査した結果、糖尿病患者のアルツハイマー病発症率は、そうではない人の2倍にのぼるそうです。

通常、血糖値が高くなると、すい臓からインスリンというホルモンが放出され、血糖値を下げてくれます。しかし、過度に血糖値を上げる飲食を繰り返していると、インスリンが効かなくなってしまうのだとか。これを「インスリン抵抗性」といいます。

この状態が進むと、血糖を下げるためにより多くのインスリンを必要とします。分泌されたインスリンはインスリン分解酵素によって分解されますが、その酵素は「βアミロイド」分解の役割も担っているのだそう。

しかし、インスリン抵抗性の増大でインスリンが多くなると、その分解のためだけに酵素が消費されてしまうので、放置されたβアミロイドが蓄積してしまう――というわけです。

【血糖値を急上昇させないコツ】

AGE牧田クリニック院長で糖尿病専門医の牧田善二氏は、著書『医者が教える食事術 最強の教科書』のなかでこう説明しています。

血糖値がぐんと上がると、セロトニンやドーパミンといった脳内物質が分泌されるので、気分がよくなります。しかし、血糖値が一気に上昇すれば、インスリンが大量に放出され血糖値を急降下させるので、今度は低血糖で不快になります。すると再び、糖質を欲するようになるのだとか。

これが「糖質中毒」です。こうなったらインスリン抵抗性が増大し、脳のゴミをどんどん溜めてしまうのは目に見えています。

そうしたことから牧田氏は、特に甘い飲み物の摂取に注意を呼びかけています。甘い飲み物は消化に時間がかからないので、すぐにガツンと血糖値を上昇させるからです。また、糖質が多い白いゴハンや白いパンなど、精製された炭水化物ばかりを“たらふく”食べることにも同じことがいえます。したがって、血糖値を急上昇させないコツは以下のとおり。

・甘い清涼飲料水や、果物ジュースを常飲しない
・空きっ腹に甘い清涼飲料水、果物ジュースは特にNG
・食物繊維や栄養成分が豊富な玄米ゴハンや全粒粉のパンを選ぶ
・「野菜→タンパク質→炭水化物」の順番で食べる
・いろいろな野菜、海藻、キノコを積極的に食べる
・炭水化物(米・パン・麺)を食べすぎない
・スイーツや果物は朝食後に。就寝前はNG

脳にゴミが溜まる悪習慣3:間違った歯磨き

国立長寿医療研究センター、名古屋市立大学大学院医学研究科教授の道川誠氏らの研究グループは2018年1月に、マウスの実験で歯周病菌の毒素がアルツハイマー病の原因とされる「βアミロイド=脳のゴミ」を増やすと示しました。

また、スウェーデンのカロリンスカ研究所が2018年10月に発表した研究では、認知機能が低下している人、あるいはアルツハイマー病の人は、そうでない人より、歯周病の兆候率が5倍以上高かったと見出されています。

日本歯科大学生命歯学部歯周病学講座の沼部幸博教授は、歯周病の毒素が血管を通じて脳内に到達し、「βアミロイド=脳のゴミ」を増加させているのではないかと述べています。

「大丈夫! 毎日歯磨きをしているから!」という人は多いと思いますが、沼部教授によれば、正しい歯磨きを行なわないと、意味がないどころか逆効果になるのだそう。

しかも、間違った歯みがきは、歯の病気だけではなく「糖尿病」のリスクまでも上昇させるのだとか。歯周病菌が歯茎に侵入すると、「炎症物質」がつくられインスリンの働きを妨げるからです。そもそもこうした「炎症」は、βアミロイドが脳に蓄積する原因のひとつともいわれています。

【正しい歯磨きのコツ】

間違った歯磨きから、脳のゴミを溜めない正しい歯磨きに変えましょう。正しい歯磨きのコツは、磨き残しがないように、しっかり磨けるように、歯と歯茎を傷つけないようにするためのコツともいえます。

1.歯ブラシはグーで握らず×→ペンのように握る〇
2.歯磨き粉をたくさんつけず×→少しだけつける〇
3.前歯から磨かず×→奥歯から磨く〇
4.毛先は真横からあてず×→歯と歯ぐきの境目に45度の角度であてる〇
5.シャカシャカ磨かず×→静かに磨く〇
6.ハブラシは大きく動かさず×→小刻みに動かす〇
7.強い力で行わず×→軽い力で行う〇

***
「βアミロイド=脳のゴミ」には、脳細胞を守る兵隊という見方もあるそう。なぜならば、脳にとっての脅威があると、防御反応として発生するから。しかし、その脅威が取り除かれなければ、増え続けて脳細胞を壊してしまいます。「質の悪い睡眠」「糖質過多」「間違った歯磨き」といった脅威を取り除き、脳のゴミは毎日きれいに捨てましょうね!

(参考)
Time|Alzheimer’s in Young Brains: Evidence of Disease Begins in Young Brain
Oxford Academic|Brain|Neuronal amyloid-β accumulation within cholinergic basal forebrain in ageing and Alzheimer’s disease
NIKKEI STYLE|WOMAN SMART|認知症の原因は脳のゴミ 40代なら知るべき基礎知識
NIKKEI STYLE|ナショジオ|睡眠不足に注意! 脳の老廃物掃除は夜勤体制
神経科学学会|【神経科学トピックス】アセチルコリンを引き金として海馬シナプスに多様性が生じ、学習が成立する
新刊JP|睡眠不足で脳にゴミがたまる!? 脳が若返る睡眠のひけつ
ブルーバックス|講談社(1/5)|40代に告ぐ!医師がすすめる「アルツハイマー治療」の秘策
東邦大学医療センター大森病院 臨床検査部|「糖尿病と認知症(アルツハイマー病)」
東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準|健康|最先端の医学では「白米は体に悪い」が常識だ
東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準|健康|アルツハイマー病は治療によって回復可能だ
NEWSポストセブン|まさか… 糖尿病、認知症など重大疾患の鍵は「歯みがき」に
朝日新聞デジタル|歯周病で認知症悪化、仕組みを解明 脳の「ゴミ」増やす
Study Hacker|「睡眠」と「歯磨き」が効果的! “脳のゴミ” を増やさない生活を。
牧田善二著(2017),『医者が教える食事術 最強の教科書』,ダイヤモンド社.