忙しくても夢は叶った。仕事と夢を両立させた人の生き方は何が違うのか。

生活するため、家族を養うために働かなければいけないけれど、自分の自由になる時間はほとんどなく、人生を楽しいと思えない。そんな悩みを抱えている人は少なくないのではないでしょうか。

退職期の前後にある人に仕事人生を振り返り回答してもらった「リタイアメント・ライフに関するアンケート」においても、「仕事の代わりに不足していたもの」として男女共に最も挙げた人が多かったのが、「自分の時間」でした(株式会社マクロミル2009年5月調べ。全国の50~64歳の男女350人対象の調査)。

なぜ「自分の時間」が欲しいと思うのでしょう。それはきっと、自分の好きなことをしたいからですよね。仕事という義務に追われるのではなく、好きなことを好きなだけできる時間が欲しいという気持ちは、誰しも強いと思います。

それでは、仕事と好きなことを両立するためには、どうしたらよいのでしょうか。今回は、仕事と好きなことの両立に成功している人の生き方から、そのコツを学びます。

変化に適応する『プロテウス型人間』とは

現代は、技術や価値観、流行など、どれをとっても変化のスピードが速い時代です。

そうした現代において高い適応能力が発揮できる人間類型、性格特性として、アメリカの精神科医であるR.J.リフトン氏が提唱したのが、『プロテウス型人間(Proteus man)』です。ギリシア神話に登場する、予言と変身の力を持つ海神プロテウスにちなんでこの名がつけられました。

プロテウス型人間の具体的な特徴は、絶えず変化し続ける外界的世界や人間関係に次々と適応することができるだけでなく、新たな自己の役割や可能性を柔軟に見出していくことができるという点。そのため、決定的にアイデンティティが崩壊してしまったり、自分が無力であるとか無価値であると感じたりするのを防ぐことができるのです。

もちろん、こうした態度はともすると無責任な態度につながりかねませんが、その時の情勢を見極めて、自分のすべきことを選択していくことは、充実した人生につながります。

会社員と歌手の顔を持つ木山裕策さんに見る、仕事と好きなことの両立

この「プロテウス」的な生き方で成功しているのが木山裕策さんです。

木山さんは、2008年にシングルCD「ホーム」で歌手デビューし、同年に紅白にも出場を果たしています。2016年3月にもアルバムを発売されるなど歌手活動を続ける一方で、平日には会社員として働く、サラリーマンとしての顔も持っています。

小さい頃から歌が大好きだったという木山さん。ですが、声が高く、人前で歌うと馬鹿にされることも多かったため、自分は歌手にはなれないと感じ、歌は趣味にとどめていたのだそう。

大学卒業後は、会社人間にはなりたくないと、脚本家の道を目指します。お金がなくても夢に向かっていこうと奥さんと励まし合って生活していましたが、子どもが生まれたことで、収入の面を考え、会社員の道を選びます。管理職にまでなり、深夜残業も当たり前の毎日。次第に鬱々としてくる中で、甲状腺ガンに罹患していることが発覚します。

木山さんは将来のことについて真剣に考えるようになり、自分自身の生きてきた証をのこしたい、子供たちに自分の歌を残したいとの思いから、歌のオーディション番組に参加し始めます。そして歌手になる夢を掴んだのです。

木山さんは、自分の好きな歌の道一本にしない理由を、家族を守れなければ意味がないからだと言います。歌の道一本に絞ることは安定した職とは言えません。だから、平日は会社員として働く道を選んだのです。また、木山さんは、奥さんに復職活動に専念してもらうために、1年間主夫生活をした経験もあるのだといいます。

こうした生き方を通してみてわかるのは、木山さんには「家族」という一本の軸があること。「家族」に対して自分ができることを考えて、その時々の状況に応じて柔軟に対応する。そんな生き方が、結果的に、仕事と好きなことの両立につながっているのではないでしょうか。

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両立の秘訣は、目標を固定するのではなく、目の前のことに全力を注ぐこと

パナソニックで2014年に復活した高級音響機器ブランド「テクニクス」の事業推進室長を務め、2015年にパナソニック史上2人目の女性役員に就任した小川理子さん。実は、自主製作も含め14枚のCDを発売し、日本室内楽振興財団理事、大阪フィルハーモニー協会理事などを歴任してきた、ジャズピアニストでもあります。

小川さんも「プロテウス」的な生き方で仕事と好きなことを両立させてきました。

仕事をやりながらライブハウスで時折ピアノを弾く程度だった20代の頃に、上司から「仕事も音楽も中途半端」だと声をかけられたことがあった小川さん。その言葉で奮起し、30代になると意識的に時間を使い分けるようにして、仕事もピアノも、短時間でもとにかく「集中」して取り組むようにしたそうです。その結果、米国フロリダのジャズフェスティバルに出演し、現地の音楽プロデューサーから声をかけられて、CDを出すことになったのです。

そして仕事においても、20代の頃に関わっていたものの研究チームが解散してしまっていた「テクニクス」復活のリーダーに抜擢されるなど、目覚ましい活躍をされています。

その小川さんの信念は、

「そこに行くんだ」とずっと明確な目標を持ち続けていたかというと、そうではない。心掛けたのは、その時々の与えられた環境で、最大のパフォーマンスを出そうということ。それが私の原理原則でした。その心構えがなかったら、今はなかったと思います。

[引用元:東洋経済ONLINE|パナソニック女性役員には"もうひとつの顔" 転機は30代、「音楽の専念を考えたことも」]

目の前の変化する状況や環境で、常に自分の全力を発揮しようと努めることが、限られた時間を自分の思うように活かすために重要な鍵と言えます。仕事と好きなことを両立しようとすると、ひとつずつに注ぐ力は少なくなってしまうようにも思えますが、どちらにも全力投球することが両立のコツのようです。

*** 現実の力はいつだって強いものですが、それ以上に、自分の軸を持つことや、すべてにおいて全力を注ぐということが、現状打破するのに有効な手段なのかもしれません。

仕事ばかりで好きなことが何もできない。そんな暗い気持ちになりそうになった時には、ぜひ「プロテウス」的生き方を思い出してみてくださいね。

参考サイト RETIREMENT RED ZONE|リタイアメント・ライフに関するアンケート結果 Keyword Project+Psychology:心理学事典のブログ|プロテウス的人間(Proteus man) Wikipedia|木山裕策 日経DUAL|木山裕策 甲状腺がんになり、自分の夢と向き合った 会社員&歌手パパ・木山裕策【中編】/死や声を失う可能性に直面して気付いた「やっぱり歌が好きだ」という思い 日経DUAL|会社員&歌手・木山裕策 僕が1年、主夫をした理由 会社員&歌手パパ・木山裕策【前編】/家事・育児を担って、初めて知った壮絶な世界 Asahi Shimbun Digital[and]|私の一枚 甲状腺ガンから歌手、会社員との二足のわらじ 木山裕策さん BARKS|異色のシンガーソングライター木山裕策、固い決意と覚悟、歌に込めた熱い思い 経済フロントライン|2016年4月16日(土)未来人のコトバ パナソニック 役員 小川理子さん 東洋経済ONLINE|パナソニック女性役員には"もうひとつの顔" 転機は30代、「音楽の専念を考えたことも」 PRESIDENTOnline|小川理子さんの「人に教えたくない店」 今は仕事と音楽が自然に融合している状態です

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