熱心に本は読むものの、いつも読みっぱなしで終わってしまう……。こんな方、意外と多いのではないでしょうか? せっかく時間を使って本を読んだのに、これではちょっともったいないですよね。

そこで今回は、読書の効果を最大限高めるための「読書ノート」というライフハック術をご紹介します。本からの学びは “記録” からこそ生まれます。実際の作り方や書き方はもちろん、科学的な観点から考える読書ノートの良さなど、詳しく探っていきましょう。

“本からの学び” を生かせてる?

そもそも、私たちは何のために本を読むのでしょうか。この問いを突き詰めていくと、結局は「仕事や実生活に生かすため」という答えに行きつくはずです。

もちろん、小説や詩やエッセイなどであれば、シンプルに、内容を楽しむことを目的にしても問題はないでしょう。しかし、ビジネス書や実用書など、知識・情報が体系的に整理されている本の場合は、そういうわけには行きませんよね。“本から得た学びを実際にどう役立てるか” が重要な鍵となってくるからです。誤解を恐れずに言うと、本を読む前後で自分の行動や思考に何も変化がなければ、その読書は単に時間を空費しただけの自己満足に過ぎません

仕事で使えそうな思考法に出会った。企画のヒントになりそうなネタを見つけた。本を読んでいると、こういうことがよく起こります。そして「実際にやってみようかな」「使ってみようかな」と、その瞬間には思うはずです。でも、ちょっと時間が経ったら、もう忘れてしまってはいないでしょうか。

心理学者のヘルマン・エビングハウスによる実験によれば、人間は、20分後には42%、1時間後には56%、9時間後には65%、1日後には64%、2日後には66%、6日後には75%、そして1ヶ月後には79%もの記憶を忘れてしまうのだそう(「エビングハウスの忘却曲線」として有名ですね)。それぐらい、人間の記憶は失われやすいものなのです。

せっかく本を読んでも、すぐに内容を忘れてしまい、知識として身につかず、実践にも結びつかないのは、非常にもったいないですよね。本からの学びを充分に生かし、知的生産性を高めていくにはどうすればいいのでしょうか。その方法としておすすめしたいのが、読書の記録をつけていく「読書ノート」なのです。

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「読書ノート」の効果とは?

読書ノートには、読んだ本のタイトルや著者名といった基本的な情報はもちろん、本から得た学びや、印象に残った言葉などを記録していきます(※詳しい書き方は後述)。何も複雑なことはなく非常にシンプルですが、読書効果を高めるさまざまなメリットがあります。

■備忘録のみならず。記憶の定着にも効果あり!

まずは脳科学的な観点から。パデュー大学(アメリカ)のカーピック博士は、ある実験で「入力を繰り返すよりも、出力を繰り返すほうが、脳回路への情報の定着がよい」ことを明らかにしています。

カーピック博士は、大学生たちを複数のグループに分け、それぞれ異なる学習工程でスワヒリ語の単語を暗記してもらいました。そして1週間後に試験を行なったところ、確認テスト(=“思い出す” 練習)をしながら暗記したグループのほうが、そうでないグループに比べて、単語定着率が圧倒的に高かったそうです。要は、思い出すという “アウトプット” をしたほうが、長期記憶としての定着度合いが良いということですね。

どうしても “文字を追うだけ” になりがちな普段の読書に、「何かを書き出す」というアウトプット的要素を加えることで、せっかく読んだ本の内容を忘れにくくなります。当然、書き出すことでメモ・備忘録の役割も兼ねますから、まさに一石二鳥ですね。

■常にアンテナを張りながら本を読める

また、「読書ノートに記録する」が前提になることで、インプットのアンテナが張られるという効果も。文章術に関する数々の著作を持つ山口拓朗さんは、StudyHackerのインタビューで次のように語っています。これは文章を書くうえでの情報収集のお話ですが、読書ノートの効果を語るうえでも充分なヒントになるでしょう。

たとえば、映画のレビューを書かなければいけなくなったとしましょう。きっと多くの人は、映画を観終わったあとに、「さあ、レビューを書こうかな」と、観終わったばかりの映画を思い出し始めます。これがまさに、「文章を書こう」という意識を持たないまま情報に当たっている悪い例。もう出遅れてしまっています。

では、どうすればいいのか。映画を観る前に、「この映画で何を得たいか?」を書き出しておけばいいんです。私はよく3×3の9つのマスを使っていますが、「好きな登場人物は?」「どのシーンが印象に残った?」「心に響いたセリフは?」など、あらかじめ自分で問いを立てて書き出しておくんですね。

そうすると、その問いがアンテナとして張られるので、映画を観ているときの風景ががらりと変わってくるんです。「この登場人物、魅力的だな」「このシーンは感動的だな」「このセリフ、かっこいいな」など、映画を観ながら気づきを得ることができるんですね。

(引用元:StudyHacker|あなたはどちらのタイプ? 「文章が苦手」2つのタイプの原因と克服法――“文章術のプロ” 山口拓朗さんインタビュー【第2回】

「仕事で使えそうな知識はないだろうか?」「実践してみたいことはないだろうか?」「心に残るフレーズはないだろうか?」といった “情報を探す” 意識が、読書ノートの存在によって醸成されます。目的を持たないまま「とりあえず……」と本を読んでしまいがちな人には特に、読書ノートはおすすめですよ。

■一流たちも、さまざまな形で「読書の記録」をつけている

マイクロソフトの創業者 ビル・ゲイツ氏は、自身のホームページ「gates notes」において、おすすめの本を定期的にレビューしています(詳しくは、StudyHacker『人生 “最良の1冊” を。ビル・ゲイツがすすめる7冊の本』や『“最高の本” に出会えるかも。ビル・ゲイツ氏がすすめる「2018年の夏に楽しめる5冊の本」』を参照してください)。

また、FacebookのCEO マーク・ザッカーバーグ氏も、2015年にFacebook上で「ブッククラブ」を立ち上げ、経済やテクノロジーなどに関する本を紹介しています(詳しくは、StudyHacker『経済・科学・思想を学ぶ。マーク・ザッカーバーグがすすめる10冊の “課題図書”』を参照してください)。

「ノート」とは少々異なりますが、読んだ本に関するアウトプットを彼らが習慣にしているのはなぜなのでしょうか。もちろん、良書を広く世の中の人々に紹介したいという思いもあるはずです。しかし、もっと根底には、読書体験を確実に現実世界で生かしたいという強い意思があるように思われます。

どうでしょう。読書ノート、やってみたくなってきませんか?

読書ノートの書き方

それでは、ここからは実際に、読書ノートの書き方をご紹介していきましょう。具体的に何を書いていけばいいのでしょうか?

1. 本の基本情報

当然ですが、本のタイトル、著者名、出版社名といった基本情報は必ず記しておきましょう。読了日も書いておくと、自分がどれくらいのペースで読書をしているのか、ログも追いやすくなりますね。

2. 本から得た学び

特にビジネス書や実用書の場合、先に述べたとおり「仕事や実生活に生かすため」に読書をするはずです。繰り返しになりますが、実際の行動につながらなかったら意味がありません。「これは仕事で使えそうな情報だ!」「これは仕事でぜひ実践してみたい!」「アイデアのヒントになりそうだ!」といった “学び” に出会ったら、のちのち忘れてしまわぬよう、ぜひ記録しておきましょう

このとき、目印として付箋を貼ったり線を引くなどして読了後にまとめて書き出す方式でもよいですし、本を読みながら都度書き足していく方式でもよいでしょう。後日、本を読み返すときに迷わないように、該当のページ番号も必ず付記するようにしてください。

3. 印象に残った言葉や表現

すぐには仕事や実生活に関係しそうでなくとも、印象に残った言葉や表現、きっとあるはずです。人生指針のヒントになりそうな言葉、なぜか心に刺さったフレーズ、誰かに教えてあげたい格言、などなど。「なぜ印象に残ったのか?」の理由も含めて、書き記しておきましょう

いまの自分が抱える感情や置かれた環境などによって、どんな言葉が印象に残るかは異なってきます。仕事でミスをして落ち込んでいれば、優しく慰められるような言葉に心惹かれるでしょうし、やる気に満ちあふれていれば、自分をもっと鼓舞してくれるような力強い言葉に心惹かれるはず。あとから読書ノートを読み返したときに、当時の自分自身を振り返りやすくなるはずです。

4. 意見や感想

ここまでは「引用」がベースですが、もしも余力があるのならば、ぜひご自身の言葉で、本に対する意見や感想まで書き出すことをおすすめします。まさに “思い出しながらのアウトプット”。本の内容が頭の中で改めて整理されるのはもちろん、長期記憶にも残ることが期待されます。

このとき、無理にカッコいい文章で書こうとする必要はありません。読書ノートは、あくまで自分用です。飾らず率直に、思ったとおりのまま書いていきましょう。

読書ノートの作り方【アナログ編】

次に、読書ノートを何につけていくかについて解説していきましょう。まずは、文字通り「紙のノート」を使うパターンです。

■一般的なノート

普段の勉強や仕事で使っているような市販のノートを、そのまま読書ノートとして使うことも可能です。サイズも多岐にわたりますし、罫線入り、無地、方眼紙など、種類もさまざま。使い慣れているものを選ぶのがよいでしょう。

市販のノートを使うメリットは、なんといってもレイアウトの自由度が非常に高いこと。自分で好きに紙面をカスタマイズしてみたい人にはおすすめです。普段から手帳を使っている方は、手帳の空いているページでも代用できそうですね。

■専用の読書ノート

読書記録のための、専用の読書ノートが販売されていることをご存じでしたか? 文具店や書店はもちろん、インターネットでも購入可能です。専用の読書ノートのメリットは、フォーマットが決まっているため、書く内容に迷わないことが挙げられます。例として、ここではおすすめの3冊をご紹介しましょう。

『モレスキン パッションジャーナル – ブック』

イタリアのモレスキン社が販売する、高級手帳ブランド モレスキン。過去には、ゴッホやピカソ、ヘミングウェイなど、名高い芸術家や思想家たちも愛用していました。そんなモレスキンブランドには、「パッションジャーナル」シリーズとして、読書記録専用の手帳を販売しています。少々値が張りますが、表紙が革製のため頑丈であり、長期保存にも向いています。本を星5つで評価する欄も。情報整理のしやすさはピカイチです。

※海外製品のため、インデックスがアルファベット順であり、和書の管理にあまり向きません。また、在庫も希少なようです。

『ムーミン100冊読書ノート』

ムーミンシリーズのイラストが表紙に描かれた、なんともかわいい読書ノートです。「なぜムーミン?」と思われたかもしれませんね。じつは、ムーミンの生みの親トーベ・ヤンソンの出生地フィンランドでは、子どもたちが自由に読書記録をつける “フィンランドメソッド” により国語力が伸びていると言われているのです。

タイトルや著者名といった基本情報を書く箇所のほかは、ほぼ自由記入欄です。文庫サイズで小さいため、たくさん記録したい人には不向きですが、まずは気軽に読書ノートをつけ始めたいという人にはぴったりでしょう。

『ワナドゥ手帳 読書』

生活雑貨チェーン店の大手「ロフト」オリジナルの読書ノートです。商品説明によれば、「感動、驚き、学んだなど5つの項目をチャートでまとめ、点数をつけることで、自分にとって評価の高かった本がわかります」とのこと。1冊につき見開き2ページが与えられており、本の表紙を貼るスペースも設けられています

読書ノートの作り方【デジタル編】

最近は、読書記録をつけるWebサービスやスマートフォンアプリも人気です。アナログな紙に比べて、レイアウトを自由にアレンジできないという側面はあります。しかし、「わざわざ手書きをするのは少し面倒だ」「読書ログも兼ねて気軽に記録していきたい」という方は、デジタルを選んでもよいでしょう。おすすめのサービスを3つご紹介します。

『読書管理ブクログ』

ユーザー数100万人超を誇る、日本最大級の読書記録サービスです。読んだ本を登録していき、Web上で自分だけのオリジナル本棚を作っていくことができます。もちろん、それぞれの本について読書メモや評価をつけることも可能。機能がシンプルで煩わしさがなく、筆者も非常に重宝しています。

■アプリのダウンロードはこちらから
iOS
※Android版はありません。

『読書メーター』

これまでに読んだ本のページ数や冊数といった読書量が、まるでメーターのようにグラフ化されていく、読書好きには垂涎のサービスです。感想も書き込めますし、ほかの人の感想をのぞくこともできるので、その本についての新たな発見があるかもしれません。SNSと連携しながらの「本についてつぶやく」機能もあるため、読書記録も兼ねて公開の場で感想をアウトプットしてみたい人にも向いています。

■アプリのダウンロードはこちらから
iOS
Android

『Evernote』

読書記録専用のサービスではありませんが、デジタルでのメモ帳として広く使われているクラウドサービス「Evernote(エバーノート)」もおすすめです。なんと、Evernote公式ブログでは、「Evernoteで簡単にできる読書管理術」と題して、Evernoteを使った読書管理の方法が詳細に紹介されています。普段からEvernoteを活用されている方は、読書ノートとして使うのもありかもしれませんね。

■アプリのダウンロードはこちらから
iOS
Android

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以上、読書ノートの効果や書き方、おすすめの作り方などについて、詳しく解説してきました。

本からの学びを行動に変える。その第一歩として、これから、ぜひ読書ノートをつけてみませんか?

(参考)
wikipedia|忘却曲線
日経BP社|潜在“脳力”:【1】脳は「入力」より「出力」で覚える
StudyHacker|あなたはどちらのタイプ? 「文章が苦手」2つのタイプの原因と克服法――“文章術のプロ” 山口拓朗さんインタビュー【第2回】
gates notes|BOOK REVIEWS
StudyHacker|人生 “最良の1冊” を。ビル・ゲイツがすすめる7冊の本
StudyHacker|“最高の本” に出会えるかも。ビル・ゲイツ氏がすすめる「2018年の夏に楽しめる5冊の本」
A Year of Books
StudyHacker|経済・科学・思想を学ぶ。マーク・ザッカーバーグがすすめる10冊の “課題図書”
MOLESKIN
MOLESKIN|パッションジャーナル – ブック
講談社BOOK倶楽部|ムーミン100冊読書ノート
ロフト|ワナドゥ手帳 読書
ブクログ
読書メーター
Evernote|Evernoteで簡単にできる読書管理術