みなさんは頼み事をするのは得意ですか? ビジネスでも、学校でも、プライベートでも、人の助けを借りたくなる場面は多々ありますよね。それでも、人にお願いをするのはなかなか気が引けてしまうもの。頼み事をするのが苦手、人を説得するのが下手……。そんな悩みを抱えている方も少なくないのではないでしょうか。
そこで、自分がスムーズに頼み事ができるようになるのはもちろん、相手も気分良く頼み事を受け入れてくれるようなコツをご紹介します。
頼み事が上手な人と下手な人の違いとは
みなさんの周りに頼み事が上手な人や説得上手な人はいるでしょうか。お願い上手な人と下手な人との違いはなんでしょうか。まずは頼み事が下手な人の特徴を考えてみましょう。
・直接的な指示や、否定的な言い方をしている 人は「〇〇をやって」「××もやって」といった直接的な指示に抵抗を感じやすいものです。また、「どうして〇〇してくれないんだ」「〇〇をしないとミスにつながるだろう」といった否定的な言い方も抵抗感を覚えます。お願い上手な人は、相手の心に抵抗を生まず、かつ自主的に動いてくれるような話し方をする能力に長けているのです。
・頼みごとをする相手を理解していない 人の好みや考え方がそれぞれのように、どのような言葉に魅力を感じるかも人それぞれです。例えば、仲間意識が強い人に仕事を頼む場合、論理的な言葉を並べて頼み込むよりは情に訴えたほうが受け入れられることが多いですよね。筆者も「この仕事を手伝うと〇〇というメリットがある」と頼まれて渋っていた仕事を、別の人から「あなたしか頼れなくて困っている」と言われてすんなり受け入れてしまったことがあります。その人に合った頼み方で説得することが必要ですね。
まずは相手のタイプを見極める
・「直感タイプ」と「納得タイプ」に分けてみる 女性脳・男性脳という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。人は大きく分けてこの2種類に分類できると言われています。一般的に、憧れやときめきで動く「直感タイプ」はいわるゆ女性脳、データや数字など社会的な基準によって動く「納得タイプ」は男性脳として認識されています。
例えば、女性向けの商品のCMでは「使い続けることで肌がしっとりなめらかに」、「毎日サラサラ、艶々の髪に」といった「この商品を使うことでどんな成功ストーリーが待っているか」をアピールしたものが多いですよね。社会基準よりも自分がどれだけの幸福を得られるかに重きを置いているのが「直感タイプ」の特徴です。
反対に、男性向けの商品のCMでは「独自成分〇〇を××ml配合。〇〇成分によるオイルフリー効果と△△によって汗や湿気から髪を守り……」というような数字や根拠を用いた説明的なものが多いですよね。これは、「納得タイプ」が文字通り説明を聞いて納得したいタイプであり、自分の感覚よりも社会基準を重要視する傾向が強いからです。
ちなみに、便宜上男性脳と女性脳という言葉を使いましたが、男女の脳に性差はないと言われています。性別に関係なく、相手が「直感タイプ」か「納得タイプ」かどちらのタイプか見極めてから説得しましょう。
例えば「直感タイプ」に仕事を頼む場合、「なぜやらなければならないのか」という論理的な説得よりも、「〇〇さんの作る資料はオシャレで見やすくて素敵だね。次回も頼んでいいかな? きっとみんな喜んでくれると思うんだ」などの魅力的な未来を想像させるような説得をするほうが有効です。
対照的に、「納得タイプ」に仕事を頼む場合には「次回のプレゼンはわが社にとって非常に重要なものになる。そこで数字で見ても分かるように最も業績の優れている〇〇さんに任せたい」というように、なぜ自分なのかという必要性を理論的に説明する方法が効果的なのです。
では次に、どちらのタイプにも有効な頼み方のコツをご紹介しましょう。
相手のやる気を引き出す言葉選びが大事
・催眠言語を使う 催眠言語とは、相手に悟られないように潜在意識にはたらきかける言葉を意味します。催眠言語を使うことによって、相手は自主的に動いている気持ちになり、頼み事に対する抵抗が薄れます。
とくに有効なのは「引用」です。引用とは、自分や第三者の経験を使って、伝えたいことをアピールする方法のこと。直接的に頼まれているわけではないので、耳を傾けてもらいやすくなります。
例えば、「重要な連絡はメールではなく直接伝えてほしい」という頼みがある場合は、ストレートに伝えるよりも、「私は昔、上司にメールだけで業務報告をしていたせいで、重要な報告がメールボックスに埋もれてしまってひどく叱られたことがあるんだ。それがきっかけで、これから重要な連絡は口頭で伝えようと誓ったんだ」といった言い方をすることで、相手は無意識のうちに「自分はそうならないように注意しよう」と行動に移しやすくなります。
また、「推量表現」を用いた手法も効果的です。断定して言い切るよりも「〇〇かもしれない」という言い方をすることで、抵抗が生まれにくくなります。先ほどの例であれば、「重要な連絡はメールではなく直接伝えないと埋もれてしまうだろう」という言い方をすれば角が立ちますが、「重要な連絡はメールではなく直接伝えてくれないと、埋もれて見逃してしまうかもしれないよ」と言えば余計な抵抗を生むこともないですよね。
この2つの組み合わせは営業でもよく用いられています。例えば「このプランはとくに〇〇向けで優れているので取り入れてほしい」と伝えたいところを、「先日『このプランはとくに〇〇な方には最適で優れている』とお客様からお褒めいただきました。そういうことでしたら取り入れてもいいかもしれませんね」と述べるという手法です。
筆者も就職活動中の企業説明会で、たびたび「『お宅の社員教育はすごい』とよく他社さんから褒められるので、うちはかなり面倒見が良いほうなのかもしれませんね」といった言い方を耳にしました。
・右側から話しかける 人は音声を右耳から聞くことを好む傾向にあり、両耳に刺激が与えられた場合、右耳から入った音声情報を優先すると言われています。脳科学者は、言語の大部分を処理する領域である脳の左半球において、右耳の聴覚の流れのほうが優先されるという仮説を立てています。
イタリアのナイトクラブで、ある実験が行われました。それは、大音量で音楽が流れていることを理由に片方の耳に接近して話しかけても怪しまれない、という条件を利用して調査員がクラブに訪れている客に片側から「タバコを1本貰えませんか」と頼むというもの。その結果、右側から話しかけられた人が88人中34人タバコを差し出したのに対して、左側から話しかけられた人は88人中17人しかタバコを渡さなかったのだそう。
かなり型破りな実験のようにも思えますが、前述した2つの手法と組み合わせることで頼みごとをより聞いてもらいやすくなるかもしれませんね。何かを頼む際には、意識的に右側から話しかけてみてはいかがでしょう。
*** 頼み事や説得が苦手だと感じている方は多いかもしれませんが、これらの手法を意識的に取り入れることで、スムーズに頼み事を聞いてもらえるかもしれませんよ。
(参考) All About|お願い事が苦手……人に頼み事をするコツって? リクナビNEXTジャーナル|頼みごとが「下手すぎる人」に、“決定的”に欠けていること WIRED|頼み事は右耳から:「左耳と比べて2倍の効果」の理由