日々、様々な仕事が同時進行で進むことが多いと思います。
例えば、何本かプロジェクトを抱えつつ、ルーティーン業務にも手が抜けない、というような時。締め切りも関係者も、テーマも違う仕事をいくつか回しながら、週次の報告書づくりや月次の決算業務はいつも通りこなさなければならない……。このように忙しく、気にかけなければならない仕事が多いと、どうしてもミスは増えてきてしまうのではないでしょうか。
そんな時、いくら忙しいからと言ってもミスを許すわけにはいかないと思います。ではどうすれば、1つ1つのことに集中して、ミスを減らすことができるのでしょうか?
その問題を解決するカギは、「整理すること」にあります。自分の頭の中や机の上を整理すれば、複数ある業務それぞれのクオリティを高く維持することができるようになるのです。
今回は、多くのタスクを持ちながらも集中力を維持するための「整理」について、考えてみたいと思います。
私たちは1つのことにしか集中できない
まず、物事に集中するためにはどうして整理することが大切なのか、ということについて説明しましょう。
その答えは、私たちの脳にあります。私たちの脳は、1つのことにしか注意を向けることができないのです。
このことについて、ある実験を紹介します。こちらの映像を見て、白いシャツを着たチームがバスケットボールのパスをした回数を数えてください。
(引用元:YouTube|selective attention test)
おそらく、簡単に数えることができたでしょう。正解は15回です。しかし、この実験で本当に問いたかったことは別の点にあります。それは、この映像を見た人が、パスをしている人の間を歩き動画中央で目立つようにふるまっているゴリラに気付くかどうか、ということ。ゴリラはかなりゆっくりと歩き、長い間視界にいるのにかかわらず、だいたい半数くらい人が、ゴリラの存在に気付かないのだそう。実験を行ったChristpher Chabris氏とDaniel Simons氏は、この研究が評価されイグノーベル賞を受賞しました。
このように、私たちは集中力を1つのものにしか向けることができないのです。
したがって、あなたが物事に集中するためには、他に注意を引き付けてしまうものの存在をなくしてしまう必要があるということがわかります。
机の上からスマホは排除しよう
そうは言っても、複数のタスクを抱えなければならないという状況は変わらないでしょう。そこで変えてみていただきたいのが、仕事環境に対する意識の持ち方です。
忙しいあなたのデスクは、忙しさにかまけて、「紙やPCを置いて、何とか作業できるスペースさえあればいい」なんてことになっていませんか?
机が散らかってしまうと、ある一つの作業をしている時でも、様々な別のものが視界に入ってきます。そういった状態では、注意が様々なものに向いてしまい、目の前のことに集中できなくなってしまうのです。
特に注意したいのが、スマートフォン。アメリカ・ポートランド州のサザン・メイン大学が行った実験によると、スマートフォンが実験者の視界に入った途端、作業成績が急激に下がったのだそうですよ。
スマホが視界に入ると、私たちは、自然に友人や知り合いが何をしているかを考え始める。これは、あくまで頭の中だけで起きることだが、集中力は目の前の作業からそれて、どこかに行ってしまうのだ。
(引用元:Smart Home|あなたは大丈夫?スマホが視界にあるだけで集中力が途切れる研究結果)
仕事のクオリティを上げるなら、机の上には、今やるべきこと1つだけを用意して、他のタスクに必要なものは視界の外にしまっておくとよいでしょう。
紙とペンで気持ちや予定を整理しよう
忙しい時、「次の仕事は14時から会議室Aで」や、「今日中にメール返信しなくちゃまずい」など、後の予定や不安が頭をよぎることはよくありますよね。
しかしながら、不安な気持ちやこれから先の予定に関する考えも、私たちの集中力を低下させる原因になります。そのため、目の前のひとつのことに集中を維持するには、頭の中も整理しておかなくてはなりません。
その時におすすめなのが、考えていることや心配事を一度全て紙に書いてしまうという方法です。
新規事業コンサルティングなどを手掛けるブルームコンセプト代表の小山龍介氏は、手帳にTo Doリストを書き出すことによって、今やるべきことと今やらなくてもいいことを、すっきりと整理することができると述べています。
手帳に書くのは、やることを覚えておくためではなく、今やらなくてもいいことを忘れるため。書いた瞬間に、もう忘れていいので安心し、頭がスッキリする
(引用元:NIKKEI STYLE|手帳を使って夢に向かおう)
このようにして頭の中を整理すると、1つのことに集中することができ、フロー状態(高い集中状態にあって、なおかつリラックスしている状態のこと)になりやすくなるのだそう。
また、考えを紙に書き出すことを勧める『ゼロ秒思考』シリーズの著者赤羽雄二氏も、頭に浮かぶことを即座に書き出していくことには、気持ちを整理できる効果があるといいます。
頭に浮かぶ疑問、アイデアを即座に書き留めることで、頭がどんどん動くようになり、気持ちも整理されるようになる。自意識にとらわれ悩むことがなくなっていく。
(引用元:ダイヤモンド社書籍オンライン|「ゼロ秒思考」のつくり方)
イメージが湧かない人は、何か嫌なことがあった日に、嫌な気持ちを紙に書き出してみてください。それだけで気分がすっきりする感覚を味わえると思います。
たくさんの業務を抱え、忙しくて頭がごちゃごちゃしているようなときは、紙とペンを用意して、すべき仕事や今の気持ちなど、考え付くことすべてを手早く書き出しましょう。きっとすぐに頭がすっきりして、目の前のことに集中できるようになるはずです。
*** 忙しい時ほど集中力を維持できるように、周囲の環境や思考の整理に少しだけ時間を割いてみてはいかがでしょう。注意が散漫なままでいるよりも、少しだけ整理に時間を使ったほうが、仕事の効率がきっと上がり、ミスも減るはずです。ぜひ試してみてください。
(参考) 東洋経済Online|ミスの多い人がわかっていない集中力の本質 GLITTY|意識しなければ見えないけれど、意識すれば見える? 実験でわかる脳の不思議 MEN-ZINE|仕事・勉強に集中するための環境づくりのコツ Smart Home|あなたは大丈夫?スマホが視界にあるだけで集中力が途切れる研究結果 NIKKEI STYLE|手帳を使って夢に向かおう ダイヤモンド社書籍オンライン|「ゼロ秒思考」のつくり方