朝の時点では、「定時までに今日の仕事を終えよう!」と張り切っていたのに、このぶんじゃ、とても終わりそうにない。焦って夕方にラストスパートをかけようとすると、今度はイライラしたり、集中力が続かなかったりする。時間が経過するほど、その状況は悪化していき……。

それもそのはず、最新の研究で「夕方以降のカラダは、ストレスに対してどんどん無防備になっている」とわかりました。ラストスパートよりも、「地固めの仕事術」が役立ちますよ。さっそく説明します。

ストレス反応は朝と夜で異なる

北海道大学大学院教育学研究院・山仲勇二郎准教授らの研究グループは、健康な成人男女 27 名の参加者を対象にした研究で、人間のストレス反応が朝と夜で異なることを発見しました(日本時間2018年11月27日・Neuropsychopharmacology Reports 誌にて掲載)。

参加者の生活リズムを確認したあと、唾液中コルチゾル(ストレスホルモン)濃度リズムを測定し、ストレス反応を見るためのテスト(インタビュー、スピーチ課題、暗算課題など)を行ってもらったそう。

テストは、朝行うグループと、夜行うグループに分けられ、実験中は心拍数によって交感神経系の変化も観察されました。

夕方のカラダはストレスに弱い

その結果、朝方にストレス(テスト)を受けたグループは、コルチゾル濃度が有意に上昇しました。これは、正常なストレス応答です。しかし、夜間に ストレスを受けたグループは、コルチゾル濃度の有意な上昇は認められませんでした

両者ともに、唾液中コルチゾル濃度は朝方に高く、夜間に低いリズムを示しています。そうしたことから、ストレスを受けた際の「ストレス反応」は、体内時計の制御を受ける「コルチゾルリズム」と関連する、と結論づけられました。

また、心拍数の変化(交感神経系)は朝と夜で変わらず、ストレスを受けている場合はいずれも高くなっていたことから――

・朝のストレスには:正常なストレス反応(HPA 系)と交感神経系が応答
・夜のストレスには:交感神経系のみが応答

――ということが示唆されました。したがって、夕方以降のカラダは、ストレスに無防備だということです。

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コルチゾルのはたらき

わたしたちのカラダは何かしらのストレスを受けると、「Hypothalamic(視床下部)→Pituitary(下垂体)→Adrenocortical(副腎皮質)」からなる HPA 系というシステムが働き、副腎皮質からコルチゾル(コルチゾール)が放出されます。

コルチゾルは、人間のカラダをストレスから守り、糖利用の調節を行い、血圧を正常に保ってくれるホルモン。つまり、生きていくには必要不可欠な存在です。このコルチゾルは、体内時計の制御を受ける代表的なホルモンなので、朝方には高く、夜間に低いという日内リズム(概日リズム・サーカディアンリズム)を明瞭に示すのだとか。

コルチゾルは多くても少なくてもダメ

コルチゾルは本来カラダを守るホルモンですが、ストレスの多い状態が続き、長期にわたって過剰に分泌されると、記憶などに関わる脳の海馬を委縮させたり、炎症のコントロールを悪くしたりするそうです。

うつ病患者のコルチゾール値が高いことも報告されており、MRIでうつ病患者の脳を調べると、海馬のほかにも情動を抑える帯状回が健康な人に比べて小さくなっていると、国立精神・神経医療研究センター神経研究所の功刀浩部長は話しています。

しかし、当然コルチゾルは少なくなりすぎても困ります。コルチゾル不足になると、低血糖や、集中力の低下といった症状を起こすそうです。

したがって、仕事がうまく進まないからといって、夕方から猛烈にラストスパートをかけて自分にストレスを与えていると、日内リズムでコルチゾルが減少し、ストレス反応までも弱くなっているカラダはどんどん疲弊し、なおかつ低血糖でイライラしたり、集中できなくなったりする可能性があるわけです。

時間が過ぎるほど、その状況が悪化するのですから、やればやるほど仕事の効率を下げてしまうのは当然だといえます。それならば、もう「夕方のラストスパート」が必要なくなるように、前もって仕事の地固めをしてみませんか?

夕方に焦らない「地固めの仕事術」

夕方になって「仕事が終わらない!」と焦らないためには、仕事そのものをがむしゃらになって頑張るよりも、準備を万全にして仕事をスムーズにするほうが効果的です。その具体的な内容は以下の3つ。

1.睡眠を優先的に考える

あまりにもありふれたことですが、仕事の効率を上げたいなら、やはり睡眠はぜったいに外せません。睡眠時間が短い人は、精神面における健康状態が悪くなるともいわれています。

「わたしはショートスリーパー(短い睡眠時間で健康を保っていられる人)だから、そんなに寝なくても平気」と考える方もいるでしょう。しかし、それは、思い込みである可能性が高いのです。筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構(WPI-IIIS)の佐藤誠教授によれば、ショートスリーパーは、100人中1人いるかいないかなのだそう。

また、科学誌 Science に掲載された、米ロチェスター大学メディカル・センターの研究では、睡眠の時間が脳のデトックスタイムであることが示されました。しっかりと睡眠をとり、脳の老廃物を処理していかないと、いずれは記憶や学習に悪影響が及ぶ可能性があります。

その他、ペンシルバニア大学の睡眠研究者、デービッド・ディンジス氏の研究では、睡眠不足が続くと、脳の機能は酩酊状態と同じくらい働きが鈍くなるとわかったそうです。

仕事で最高のパフォーマンスを発揮したいなら、とにかく「睡眠」が大事なのです。

2.やらなくていいことを排除

“経営の神様”ピーター・ドラッカー教授が説いた「体系的廃棄で、今日やらなくていいことを排除しましょう。これを行わないと、「やらなければいけないこと」ではなく、“やったほうがいいこと”が入り込み、どんどん時間を消耗してしまいます

ドラッカー教授より、経営コンサルティングを直伝された国永秀男氏は、「次の問いかけ」がその基準を教えてくれるといいます。

(1)「もしも、これをやっていなかったとして、今からこれと同じことを、もう一度始めますか?」
(2)「もしも、これを、やめたとしたら、何が起こりますか?」―――

(引用元:日本経営合理化協会|社長の命題 ドラッカー流経営の実践 | 第2号「概念その1 体系的廃棄」

ToDoリストをつくったり、仕事の内容について考えたりする際に、この2点を自分に投げかけ、やらなくていいことをアッサリ排除してしまいましょう。

3.業務の目標を明確にする

その日のうちにやらなくてはならない仕事は頭のなかに置かず、「内容」を書きだして脳の負荷を減らしましょう。その作業に時間をかける必要はなく、簡単なToDoリストでOKですが、「内容」以外に、おおよその「時間(開始時間と所要時間、締め切りなど)」と、「仕上がりのレベル」も可視化することをおすすめします。

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【例:8時間勤務の場合】
・イベント企画の情報取集:朝1時間 集めるだけ 明日精査
・会議資料の作成:定時まで 5時間 社内向けのシンプルなもの
・A社〇〇さんにメール:昼前10分 要点
・〇〇部長に報告:15時~15時30分 ラフ
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

所要時間を書くことにより、仕事全体のボリューム感を把握でき、予備的な時間の確保にもつながり、突発的に入ってくる仕事にも対応できるようになると、マーケティングに特化した企業向けコンサルティングなどを行う理央周氏はアドバイスしています。上の例の場合、予備的な時間が1時間20分確保されていることになります。

また、仕上げのレベルを明確にしておけば、「もっとこうしたほうがいいのでは……」という完璧主義的な思考が顔をのぞかせにくくなり、仕事の処理速度を速めてくれるでしょう。

***
終業時間が近づくにつれ、どんどんストレスに対して脆弱になっていくのに、わたしたちは自らストレスを強めてしまいがちです。

1.睡眠
2.排除
3.明確な目標

という地固めで、無理なく仕事を終えてくださいね。

(参考)
北海道大学|新着情報: プレスリリース(研究発表)アーカイブ |ストレス反応が朝と夜で異なる仕組みを解明
名古屋大学医学部総合ポータル|名古屋大学医学部付属病院 乳腺・内分泌外科|副腎とは
労働安全衛生総合研究所|ストレスホルモンを測る
NIKKEI STYLE|ヘルスUP|うつを作る「じわじわストレス」 脳内物質に異変
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